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第4話「受験戦争、開戦! 陽介、はじめての農業高校見学でカルチャーショックを受ける」
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「……ここが、国立農業技能開発高等学校――“国農”か」
オープンスクールの朝。
陽介は堂々とした校舎と、広大な農場を見上げながら、小さくつぶやいた。
“国農(こくのう)”――正式には国立農業技能開発高等学校。
全国の農業後継者や、農業志願の若者たちを育成するために、国が近年新たに設立した高レベルな農業高校だ。
「全国募集だから、倍率もエグい」
「しかも農家の子が優先枠で入ってくるから、一般枠はかなり狭き門だぞ」
「お前の成績だと、正直ギリギリだ。全力出しても受かるかどうか……」
担任の佐伯先生の言葉が頭をよぎる。
でも、それでも――
(ここに行きたい)
剣道の強豪校であること、農業を広く深く学べること、そして何より、実習主義の教育方針。
ここで学べれば、異世界でも“生きる力”が手に入る。
陽介は改めて拳を握った。
*
学校内に足を踏み入れると、いきなり目に入るのは、道の駅レベルの直売所。
「……トマトの試食……うっま!!」
「こっちは手作りのベーコン!? 生徒が燻製してるの!? はあ!?」
テンションは早くも最高潮。
母と一緒に来ていた陽介は、完全に“観光モード”に突入していた。
「ねぇ見て陽介!あのヤギ、名前“しずかちゃん”だって!」
「ちょっ、母さん勝手に触らないで!!」
「ふわふわ~~♪」
(この人、完全に癒やされに来てる)
一方、陽介は真剣そのものだった。
「こちらが露地野菜の圃場です~。今日はナスとピーマンの収穫体験ができます」
「家畜棟では、三年生が育てた乳牛に触れられますよ~」
「あ、堆肥エリアでは匂い注意で~す!」
「うおっ!? なんか……あったかい……」
山になった堆肥に手をかざすと、じんわりと熱が伝わってくる。
「これが微生物の発酵熱です! 最高温度、70度近く行くこともあるんですよ!」
「マジか……生ゴミって、火になるのか……」
陽介の目が輝く。
今まで“生ゴミ臭い”と思っていたものが、すごい“生命のサイクル”に思えてきた。
(俺のベランダ堆肥、ここまで進化させられるかな……)
農業って、なんか地味で泥くさいと思ってた。
でも、違った。命を育てるって、カッコいい。
自分の手で“誰かを食べさせられる”って、ものすごい力だ。
(異世界に行っても、俺、これで生きていける)
*
剣道部の見学も済ませた。
道場では、試合の真っ最中。面を打ち合う音が、ピリリと空気を張り詰めさせていた。
「この学校、剣道部は全国大会出場常連です。農業科の授業の後、みんな毎日汗だくで稽古してます」
「すげえ……みんな、異世界に行けそうな顔してる……」
(いや、行くの俺だけなんだけど)
内心でつっこみつつも、熱気に胸が高鳴る。
「農業と剣道、どっちも本気……ここしかない」
陽介の中で、進むべき道がはっきりと定まった瞬間だった。
*
帰り道、車の中。
「ねぇ陽介、ほんとにここに行くつもり?」
「うん。農家の家じゃないし、推薦もないし……厳しいのは分かってる。でも、行きたい」
「……受かったら、家のベランダにビニールハウス建ててもいいわよ」
「それはさすがにダメだと思う!」
(でも気持ちは嬉しい)
母は微笑んで、続けた。
「“農業をやりたい”って、立派な夢だと思うよ。農家の子じゃなくても、目指す人がいるってこと、ちゃんと先生たちも見てくれるはず」
「……うん、やれるだけやってみる」
陽介は、座席の手すりをぎゅっと握った。
この日、彼は初めて“本気の受験生”になった。
オープンスクールの朝。
陽介は堂々とした校舎と、広大な農場を見上げながら、小さくつぶやいた。
“国農(こくのう)”――正式には国立農業技能開発高等学校。
全国の農業後継者や、農業志願の若者たちを育成するために、国が近年新たに設立した高レベルな農業高校だ。
「全国募集だから、倍率もエグい」
「しかも農家の子が優先枠で入ってくるから、一般枠はかなり狭き門だぞ」
「お前の成績だと、正直ギリギリだ。全力出しても受かるかどうか……」
担任の佐伯先生の言葉が頭をよぎる。
でも、それでも――
(ここに行きたい)
剣道の強豪校であること、農業を広く深く学べること、そして何より、実習主義の教育方針。
ここで学べれば、異世界でも“生きる力”が手に入る。
陽介は改めて拳を握った。
*
学校内に足を踏み入れると、いきなり目に入るのは、道の駅レベルの直売所。
「……トマトの試食……うっま!!」
「こっちは手作りのベーコン!? 生徒が燻製してるの!? はあ!?」
テンションは早くも最高潮。
母と一緒に来ていた陽介は、完全に“観光モード”に突入していた。
「ねぇ見て陽介!あのヤギ、名前“しずかちゃん”だって!」
「ちょっ、母さん勝手に触らないで!!」
「ふわふわ~~♪」
(この人、完全に癒やされに来てる)
一方、陽介は真剣そのものだった。
「こちらが露地野菜の圃場です~。今日はナスとピーマンの収穫体験ができます」
「家畜棟では、三年生が育てた乳牛に触れられますよ~」
「あ、堆肥エリアでは匂い注意で~す!」
「うおっ!? なんか……あったかい……」
山になった堆肥に手をかざすと、じんわりと熱が伝わってくる。
「これが微生物の発酵熱です! 最高温度、70度近く行くこともあるんですよ!」
「マジか……生ゴミって、火になるのか……」
陽介の目が輝く。
今まで“生ゴミ臭い”と思っていたものが、すごい“生命のサイクル”に思えてきた。
(俺のベランダ堆肥、ここまで進化させられるかな……)
農業って、なんか地味で泥くさいと思ってた。
でも、違った。命を育てるって、カッコいい。
自分の手で“誰かを食べさせられる”って、ものすごい力だ。
(異世界に行っても、俺、これで生きていける)
*
剣道部の見学も済ませた。
道場では、試合の真っ最中。面を打ち合う音が、ピリリと空気を張り詰めさせていた。
「この学校、剣道部は全国大会出場常連です。農業科の授業の後、みんな毎日汗だくで稽古してます」
「すげえ……みんな、異世界に行けそうな顔してる……」
(いや、行くの俺だけなんだけど)
内心でつっこみつつも、熱気に胸が高鳴る。
「農業と剣道、どっちも本気……ここしかない」
陽介の中で、進むべき道がはっきりと定まった瞬間だった。
*
帰り道、車の中。
「ねぇ陽介、ほんとにここに行くつもり?」
「うん。農家の家じゃないし、推薦もないし……厳しいのは分かってる。でも、行きたい」
「……受かったら、家のベランダにビニールハウス建ててもいいわよ」
「それはさすがにダメだと思う!」
(でも気持ちは嬉しい)
母は微笑んで、続けた。
「“農業をやりたい”って、立派な夢だと思うよ。農家の子じゃなくても、目指す人がいるってこと、ちゃんと先生たちも見てくれるはず」
「……うん、やれるだけやってみる」
陽介は、座席の手すりをぎゅっと握った。
この日、彼は初めて“本気の受験生”になった。
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