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第4話
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「相変わらず、汚ねぇ花だな」
よく見ると、花が食ってる“義肢の腕”が昨日より太ぇ。
回収課の焼き印だけが、まだぬめってやがる。
ほんと、なんでこの店だけ摘発されねぇんだろうな。
スラムに限りなく近いこの魔道具屋。
見た目は石を積み上げてできた灰色の店だ。
軒先に植わっている花は以前にもまして凶悪だ。
俺はいつもの通り、店に入る。
今日はスマポの修理受け取り――それだけのはずだった。
狭いながらも所狭しと置かれた商品の山に挟まれながら、奥にあるカウンターで声をかける。
「ポコポコ、いるか?」
さらに奥から引き戸の音がする。
どう見てもオーバーサイズの魔道パーカーを着たヤツが現れた。
「あれぇ? 是明じゃん。遅っそ~」
カウンターの影からちょこんと現れる小さい少女。
片手で巨大な魔力ドライバーを振り回している。
こいつ、店の境目から先に出る気が最初からねぇ。
ドライバーの銀色の刃が回るたび、店内の薄暗い照明が金髪に反射し、
ツインテールの毛先が青白く光った。
棚の奥では、正体のわからねぇ魔道液が“ポコ、ポコ”と泡を立てている。
そのドライバーをひと振りするたび、
店の奥で魔道具が三つ同時に“キュイン”と起動した。
相変わらず、なにがどう繋がってんのかサッパリわからねぇ天才だ。
在香は、起動した魔道具を順に観察していた。
目が真剣になる。
在香は、起動音の“揺れ”を聞き分けて、息を吐いた。
「……速すぎる。独学じゃ無理ね」
在香の視線が、ドライバーの軌道を追う。
「それに――是零掌と同じ匂いがする。“歪み”よ」
一瞬だけ、嫉妬でも警戒でもない“興味”が在香の瞳に宿った。
こいつ、こういうところだけは本当に鋭い。
「はーいはい。どうせまた壊したんでしょヘッタクソ」
金髪ツインテールを前後に揺らしながら、舌をちょいと出す。
在香は、大きな黒目をさらに大きく見せた。
「え、こ、この子が……」
口に手をあてるなんざ、よほどなんだろな在香のやつは。
たぶん心の中じゃ、
“なんで是明、こんな危険人物と普通に会話してるの?”
とか、
“ていうかこの子、目つき悪っ”
くらいには思ってそうだ。
ポコポコは割と言葉に敏感なんだよな。
顔を少し乗り出して在香に向けて言い放った。
「この子って思ったでしょ? じゃなくて“店主(マスター)様”ね? わかる?」
在香につっかかる。
どうでもいい話だな。
放っていて、早めに切り返す。
「あーはいはい、様ね様」
「ほらぁそうやって雑に返す~。だから魔道具も雑に壊すんだよバーカ♪」
なんだ? 知らないでついてきたのか?
まったく物好きなやつだ。
「(小声)口の悪いガキ……!?」
小さくても聞こえるぜ? 在香よぉ。
……火種撒くの、やめてもらえねぇかな。
在香の頬がわずかにピクリと動いた。
警戒か、苛立ちか、それとも別の感情か。
ポコポコのヤツ、珍しく反応して返さねぇな。
少しは大人になったのか?
ほいっと手渡しで投げてきた。
「はい、これ。なんかね。エネルギー切れだったわ」
「そんなわけあるんか?」
手元の魔道認証に触れば、ボォーンと道具的な音がなる。
ああ、いつもどおりだな。
長方形の形をしたガラス板上に存子の顔がうつしだされる。
今はシンプルに点と棒だけの表情だ。
『……誰、この騒音源?』
スマポ――人造神の端末。画面の中身(存子)は、口の悪い魔導知能だ。
カウンターの上に座り、足をブラブラ。
こうしてみるとポコポコはただのガキなんだよな。
スマポを覗き込むと、してやったりと上から目線でニヤリとしやがる。
「おっ、生き返った。ほらほらもっと喜べよ是明、愛しのガラクタちゃんが起動したよ?」
「うるせぇよ」
頬杖つきながらポコポコはニヤついていやがる。
いつものことだ。
「ま、起動したし? 大丈夫っしょ?」
おい、“大丈夫っしょ”って言う時点で大丈夫じゃねぇやつだろ。
案の定、検証もしてなさそうだな。
これだからな。
とはいえ、ポコポコならそれが正常運転だな。
俺がスマポの設定を確認していると……。
指でこっちをツンツンするのやめてくれ。
「ねーねー。お金あるの? 払える? ねぇ? 」
一瞬の間。
変わらずだな、こいつは。
用意していた金をすんなりと渡す。
「約束の金だ」
ポコポコは口を大きくあけ俺を見上げなが放心。
まるでひな鳥のように口をパクパクさせてた。
「そっか、餌がほしいか」
俺は、栄養だけは無駄に完璧なドロッコリーを放り投げた。
「げー! げー! 何よ! 禿是明! あたし野菜嫌いなの知ってるでしょ?」
ペッペッっと吐き出す。
「残念だったな物事は事実が一番だ」
……笑ってやりたいのに、胸の奥が笑ってねぇ。
さっきの現場の“痕跡”が、まだ鼻の奥に残ってる。
「はあ?」
「俺はまだ剥げていない。じゃあな」
「ちょっとー。もう少し寄ってきなよー」
腕にしがみつくのやめてくれ。
在香の肩が、ほんのわずかに震えた。
だが本人は表情を変えない。
変えないが——目だけが笑っていなかった。
「まだ子供ね」
在香は勝ち誇ったように告げる。
「ムキー!」
ああ、あ。始まりやがった。
こうなったら先に退散だな。
俺は過熱している二人を置いて、さっさと退散した。
在香は店に残り、俺だけが外へ出た。
「なあ、存子。久しぶりだな」
スマポは途端に笑顔をつくりだす。
「お久しぶりでございます。是明様。あの方たち、おいてかれてよかったのですか?」
「ああ、かまわねー。その程度だ」
「承知しました」
「お? おう。久しぶりだろ? 認識合わせだ」
「はい。お願いします」
「回収課は?」
「……裏流し常習のクズ野郎です。
最近は“帳簿を白くする仕事”が増えております」
「……あ?」
「いえ。噂です」
「それもOK。じゃあ、俺たち徴税局は?」
「未納者を狩るエリートです」
「お? おう。まあエリートかどうかは置いておくが、あっているな」
「ありがとうございます。是明さまは、ひとりの時のほうが危険です。今度は私がサポートします」
「お? おう」
「暴走率、体感三割減です」
……勝手に数値化すんなよ。
歩きながら、こうして会話も久しい。
まずはコイツには要件伝えないとな。
「なあ、以前の神族の事件覚えているか?」
「もちろんです。あの凶悪犯罪組織はまだ健在ですね」
「どうやらあの時の関係者が暗躍しているぽいんだよな」
「何かあったのですか?」
「実はな……」
俺は、かいつまんで話した。
◇
あたしポコポコ。
是明のこと……ちょっとだけ特別だと思ってる。
……夢の中限定だけどね。
でもさ、ちょっと聞いてよ。
なんであの女、ついてきてるわけ?
せっかく修理してあげたのに、
お金置いてすぐいなくなるし。
あたしって、都合のいい店主なだけ?
……でも。
この街で、あたしを“普通に”扱った大人は、
是明だけなんだよね。
だから、たぶん。
嫌いじゃないんだと思う。
そう思いたいだけかもしれないけど。
それに、是明って放っておくと勝手に突っ走るから、
あたしが見てあげないとダメなわけ。……でしょ?
……ん?
さっきからドライバーが、“ピリピリッ”て鳴ってる。
これ、前にも一回だけあった。
是明の、あの“変な在り方”に触れたとき。
あたし、そんな機能つけた覚えないんだけど。
……なに、これ。店じゅうの魔道具が、同じ音で鳴ってる。
◇
俺はサクッと存子に伝えた。
簡潔すぎたか?
「な? 存子どう見立てる?」
あっ、ポコポコにも聞いておけばよかったな。
多分あのままほったらかしにしたから、かなり拗ねてそうだな。
ああ、腕はいいのにめんどくせぇ。
「是明さま。ちなみに今空きはありますか?」
「そっちな。ちとやべぇ。五枠中、四枠も空きっぱなしだ。」
「存在証明スロット空になると、是零掌使えませんよ? 燃やせません」
たしかにヤベーな。
たまにうまく奪えねぇんだよな。
まあ、1回もやして何度かチャンスがあるっちゃあるが、あぶねー
「あー……わかっちゃいるんだがな。危機感がちょい足りなかった。狩るわ」
「ええ、そのほうが賢明かと存じます。今ですと是零掌一回でおわりです」
「だよな。いくら剣術と体術すこしできても、人外にはどうにもならねぇからな」
「おっしゃる通りです。いっそ、近辺の犯罪者の存在証明はどうでしょう?」
「だますのか?」
「ええ、そのほうが効率的かと」
俺は思わず笑む。
画面でもニヤリとしていやがる。
自分でもわかる。
口元は笑っているのに、胸の奥だけはやけに冷えていた。
この感覚は……昔から変わらねぇ。
元の世界で、一度俺の「存在」を好き勝手書き換えられたあの日から、ずっとだ。
「ははは。やっぱ存子はおもしれぇー」
「おほめにあずかり至極光栄です」
「で回収課かやっぱ?」
「はい。今をトキメク時代のアイドルです。全員疑われている状態なら、数人消えたところで問題ないかと。
毎年いなくなる行方不明者の数より少ないですから、微々たるものです」
「おおーお前、気が合うな」
「是明さま作戦ですが。素早く・賢く・五寸釘です」
――冗談みたいな口調なのに、内容だけがやけに冷たい。
逃げる前に、存在証明だけを剥がす。
肉体ごと“帳簿の外”に落とす。
「是明さま。そうです。今思ったとおりではがせば肉体は、消えます」
「まあそうだよな。肉体が消えりゃ、魂は霧みたいに散って終わりだ。
神界にも戻れねぇ。輪廻の網からも外れる。
ただの“未登録の残骸”になるだけだ」
ん? なんだこれ?
スマポに気になるものがある。
存子の画面の隅で、一瞬だけ知らねぇ紋章が点滅した。
その瞬間だけ、胸の奥が“見覚えのある冷たさ”で締まった。
あれは――見間違いか?
細い光の輪の真ん中に、角の欠けた三角形。
女神の符号に、どこか似ている……気のせいか?
よく見ると、花が食ってる“義肢の腕”が昨日より太ぇ。
回収課の焼き印だけが、まだぬめってやがる。
ほんと、なんでこの店だけ摘発されねぇんだろうな。
スラムに限りなく近いこの魔道具屋。
見た目は石を積み上げてできた灰色の店だ。
軒先に植わっている花は以前にもまして凶悪だ。
俺はいつもの通り、店に入る。
今日はスマポの修理受け取り――それだけのはずだった。
狭いながらも所狭しと置かれた商品の山に挟まれながら、奥にあるカウンターで声をかける。
「ポコポコ、いるか?」
さらに奥から引き戸の音がする。
どう見てもオーバーサイズの魔道パーカーを着たヤツが現れた。
「あれぇ? 是明じゃん。遅っそ~」
カウンターの影からちょこんと現れる小さい少女。
片手で巨大な魔力ドライバーを振り回している。
こいつ、店の境目から先に出る気が最初からねぇ。
ドライバーの銀色の刃が回るたび、店内の薄暗い照明が金髪に反射し、
ツインテールの毛先が青白く光った。
棚の奥では、正体のわからねぇ魔道液が“ポコ、ポコ”と泡を立てている。
そのドライバーをひと振りするたび、
店の奥で魔道具が三つ同時に“キュイン”と起動した。
相変わらず、なにがどう繋がってんのかサッパリわからねぇ天才だ。
在香は、起動した魔道具を順に観察していた。
目が真剣になる。
在香は、起動音の“揺れ”を聞き分けて、息を吐いた。
「……速すぎる。独学じゃ無理ね」
在香の視線が、ドライバーの軌道を追う。
「それに――是零掌と同じ匂いがする。“歪み”よ」
一瞬だけ、嫉妬でも警戒でもない“興味”が在香の瞳に宿った。
こいつ、こういうところだけは本当に鋭い。
「はーいはい。どうせまた壊したんでしょヘッタクソ」
金髪ツインテールを前後に揺らしながら、舌をちょいと出す。
在香は、大きな黒目をさらに大きく見せた。
「え、こ、この子が……」
口に手をあてるなんざ、よほどなんだろな在香のやつは。
たぶん心の中じゃ、
“なんで是明、こんな危険人物と普通に会話してるの?”
とか、
“ていうかこの子、目つき悪っ”
くらいには思ってそうだ。
ポコポコは割と言葉に敏感なんだよな。
顔を少し乗り出して在香に向けて言い放った。
「この子って思ったでしょ? じゃなくて“店主(マスター)様”ね? わかる?」
在香につっかかる。
どうでもいい話だな。
放っていて、早めに切り返す。
「あーはいはい、様ね様」
「ほらぁそうやって雑に返す~。だから魔道具も雑に壊すんだよバーカ♪」
なんだ? 知らないでついてきたのか?
まったく物好きなやつだ。
「(小声)口の悪いガキ……!?」
小さくても聞こえるぜ? 在香よぉ。
……火種撒くの、やめてもらえねぇかな。
在香の頬がわずかにピクリと動いた。
警戒か、苛立ちか、それとも別の感情か。
ポコポコのヤツ、珍しく反応して返さねぇな。
少しは大人になったのか?
ほいっと手渡しで投げてきた。
「はい、これ。なんかね。エネルギー切れだったわ」
「そんなわけあるんか?」
手元の魔道認証に触れば、ボォーンと道具的な音がなる。
ああ、いつもどおりだな。
長方形の形をしたガラス板上に存子の顔がうつしだされる。
今はシンプルに点と棒だけの表情だ。
『……誰、この騒音源?』
スマポ――人造神の端末。画面の中身(存子)は、口の悪い魔導知能だ。
カウンターの上に座り、足をブラブラ。
こうしてみるとポコポコはただのガキなんだよな。
スマポを覗き込むと、してやったりと上から目線でニヤリとしやがる。
「おっ、生き返った。ほらほらもっと喜べよ是明、愛しのガラクタちゃんが起動したよ?」
「うるせぇよ」
頬杖つきながらポコポコはニヤついていやがる。
いつものことだ。
「ま、起動したし? 大丈夫っしょ?」
おい、“大丈夫っしょ”って言う時点で大丈夫じゃねぇやつだろ。
案の定、検証もしてなさそうだな。
これだからな。
とはいえ、ポコポコならそれが正常運転だな。
俺がスマポの設定を確認していると……。
指でこっちをツンツンするのやめてくれ。
「ねーねー。お金あるの? 払える? ねぇ? 」
一瞬の間。
変わらずだな、こいつは。
用意していた金をすんなりと渡す。
「約束の金だ」
ポコポコは口を大きくあけ俺を見上げなが放心。
まるでひな鳥のように口をパクパクさせてた。
「そっか、餌がほしいか」
俺は、栄養だけは無駄に完璧なドロッコリーを放り投げた。
「げー! げー! 何よ! 禿是明! あたし野菜嫌いなの知ってるでしょ?」
ペッペッっと吐き出す。
「残念だったな物事は事実が一番だ」
……笑ってやりたいのに、胸の奥が笑ってねぇ。
さっきの現場の“痕跡”が、まだ鼻の奥に残ってる。
「はあ?」
「俺はまだ剥げていない。じゃあな」
「ちょっとー。もう少し寄ってきなよー」
腕にしがみつくのやめてくれ。
在香の肩が、ほんのわずかに震えた。
だが本人は表情を変えない。
変えないが——目だけが笑っていなかった。
「まだ子供ね」
在香は勝ち誇ったように告げる。
「ムキー!」
ああ、あ。始まりやがった。
こうなったら先に退散だな。
俺は過熱している二人を置いて、さっさと退散した。
在香は店に残り、俺だけが外へ出た。
「なあ、存子。久しぶりだな」
スマポは途端に笑顔をつくりだす。
「お久しぶりでございます。是明様。あの方たち、おいてかれてよかったのですか?」
「ああ、かまわねー。その程度だ」
「承知しました」
「お? おう。久しぶりだろ? 認識合わせだ」
「はい。お願いします」
「回収課は?」
「……裏流し常習のクズ野郎です。
最近は“帳簿を白くする仕事”が増えております」
「……あ?」
「いえ。噂です」
「それもOK。じゃあ、俺たち徴税局は?」
「未納者を狩るエリートです」
「お? おう。まあエリートかどうかは置いておくが、あっているな」
「ありがとうございます。是明さまは、ひとりの時のほうが危険です。今度は私がサポートします」
「お? おう」
「暴走率、体感三割減です」
……勝手に数値化すんなよ。
歩きながら、こうして会話も久しい。
まずはコイツには要件伝えないとな。
「なあ、以前の神族の事件覚えているか?」
「もちろんです。あの凶悪犯罪組織はまだ健在ですね」
「どうやらあの時の関係者が暗躍しているぽいんだよな」
「何かあったのですか?」
「実はな……」
俺は、かいつまんで話した。
◇
あたしポコポコ。
是明のこと……ちょっとだけ特別だと思ってる。
……夢の中限定だけどね。
でもさ、ちょっと聞いてよ。
なんであの女、ついてきてるわけ?
せっかく修理してあげたのに、
お金置いてすぐいなくなるし。
あたしって、都合のいい店主なだけ?
……でも。
この街で、あたしを“普通に”扱った大人は、
是明だけなんだよね。
だから、たぶん。
嫌いじゃないんだと思う。
そう思いたいだけかもしれないけど。
それに、是明って放っておくと勝手に突っ走るから、
あたしが見てあげないとダメなわけ。……でしょ?
……ん?
さっきからドライバーが、“ピリピリッ”て鳴ってる。
これ、前にも一回だけあった。
是明の、あの“変な在り方”に触れたとき。
あたし、そんな機能つけた覚えないんだけど。
……なに、これ。店じゅうの魔道具が、同じ音で鳴ってる。
◇
俺はサクッと存子に伝えた。
簡潔すぎたか?
「な? 存子どう見立てる?」
あっ、ポコポコにも聞いておけばよかったな。
多分あのままほったらかしにしたから、かなり拗ねてそうだな。
ああ、腕はいいのにめんどくせぇ。
「是明さま。ちなみに今空きはありますか?」
「そっちな。ちとやべぇ。五枠中、四枠も空きっぱなしだ。」
「存在証明スロット空になると、是零掌使えませんよ? 燃やせません」
たしかにヤベーな。
たまにうまく奪えねぇんだよな。
まあ、1回もやして何度かチャンスがあるっちゃあるが、あぶねー
「あー……わかっちゃいるんだがな。危機感がちょい足りなかった。狩るわ」
「ええ、そのほうが賢明かと存じます。今ですと是零掌一回でおわりです」
「だよな。いくら剣術と体術すこしできても、人外にはどうにもならねぇからな」
「おっしゃる通りです。いっそ、近辺の犯罪者の存在証明はどうでしょう?」
「だますのか?」
「ええ、そのほうが効率的かと」
俺は思わず笑む。
画面でもニヤリとしていやがる。
自分でもわかる。
口元は笑っているのに、胸の奥だけはやけに冷えていた。
この感覚は……昔から変わらねぇ。
元の世界で、一度俺の「存在」を好き勝手書き換えられたあの日から、ずっとだ。
「ははは。やっぱ存子はおもしれぇー」
「おほめにあずかり至極光栄です」
「で回収課かやっぱ?」
「はい。今をトキメク時代のアイドルです。全員疑われている状態なら、数人消えたところで問題ないかと。
毎年いなくなる行方不明者の数より少ないですから、微々たるものです」
「おおーお前、気が合うな」
「是明さま作戦ですが。素早く・賢く・五寸釘です」
――冗談みたいな口調なのに、内容だけがやけに冷たい。
逃げる前に、存在証明だけを剥がす。
肉体ごと“帳簿の外”に落とす。
「是明さま。そうです。今思ったとおりではがせば肉体は、消えます」
「まあそうだよな。肉体が消えりゃ、魂は霧みたいに散って終わりだ。
神界にも戻れねぇ。輪廻の網からも外れる。
ただの“未登録の残骸”になるだけだ」
ん? なんだこれ?
スマポに気になるものがある。
存子の画面の隅で、一瞬だけ知らねぇ紋章が点滅した。
その瞬間だけ、胸の奥が“見覚えのある冷たさ”で締まった。
あれは――見間違いか?
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