追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~

雪ノ瞬キ

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11話

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「なんも……来ない」

 昨日あれだけやって、何も。
 おかしいな、処置に入ると言ったのは別の意味か?

 追放されていない。
 神官も来ない。
 システム音も鳴らない。

 わけわからん。
 俺の感情も明らかに変わった。

「恐怖が戻らない」

 夜になっても眠れない。
 別に“怖いから”というわけでもない。
 音・影・気配に対して身体が反応しない。

 自分で自分を試したが、余計わからなくなった。
 刃を握っても心拍が上がらない。
 高所から覗き込んでも足がすくまない。

 “追放されるかもしれない”という言葉が頭を素通りする。
 頭では理解している。
 でも、これは危機感がほとんどねぇ。

 ただ、目の前に危機が訪れれば体は動く。
 命の危険も確かに感じたし、だから死に物狂いで戦った。

 でも、何か違う。
 もっと違う感覚が薄れているのかもしれねぇ。
 それというのも、追放ガチャがきっかけな気がする。
 カードを引き始めてからだと思うが自信はない。

 少なくとも、今後も追放ガチャでカードを引けば
 何かを失う。
 だが、引くしか生き延びるすべがない。

 クソ神とクソシステムどもめ……
 どうにかして突破口を見つけなければ。

 焦りでも覚悟でもない。
 ただ、近い感情が見つからない。

 その思いが胸を渦巻く。


◇ミレーヌ

 おかしいわ。
 何がおきたのかしら。

 ログが“未確定”。
 昨日の追放処理が完了していない。
 原因が追えない。
 修正できない。

 無いない尽くしよ。
 これはエラーなんかじゃない。
 “処理待ち”が、積まれている。


「こんなログ、前例がない」

 過去の救済者ログを思い返す。
 彼らは皆、迷っていた。
 恐怖もあった。
 それでも助けると決めていた。
 でも、クロ―にはそれがない。

 意図が読めないのよね。
 民が生き残った。
 でもクロ―は助けようとしていない。
 逃げただけ、押しのけただけ。

「救った、とは言えない。でも、見殺しでもない」

 それに、結果だけが善になっている。
 過去の救済者は、“助けようとして助けた”。
 それに対してクロ―は、“助けようとせず、助かっている”。


「結果だけを見れば、救済ね。でも、過程が違う」
「この人は、決断していない。
だから、善にも悪にもならない」

 困ったわ。
 この行動を、救済と書いていいの?
 それとも事故なの?

 嘘を書きたくない。
 でも真実も書けない。

「このまま正確に書いたら、神はどう判断する?」

 曖昧に書くしかないわね。
 それは嘘じゃないし……

「彼は、善人ではない。
でも、悪人でもない。
それをどう書けばいいのか、私は知らない」

 こんな事は今までおきなかったこと。
 何か介入が?

 これだけ不確かだと、クロ―に言わないし、言えない。
 だけど、対処方法はある。
 だから私は、クロ―が隠れている掘っ立て小屋まで来ていた。

「何か用か?」

 変わらずぶっきらぼうにクロ―は答える。
 くたびれたソファーに寝転がり、私を見上げていた。
 私は可能な範囲で彼に伝えるべきことを伝えるつもりだ。

「今のあなたは、
神にとって“分類しやすい側”に見えている」
「だから、次に何をしたかで、枠が決まる」
「ねぇ、少しだけ
助けようとしないで
でも、見殺しにも見えない行動を取って」

 彼は何故? と疑問を浮かべた表情を一瞬見せた。

「処理が遅れるなら、それでいい」
「今は《追放保留》を切りたくない」
「戦闘もしたくない」

 そう言うと、
 クロ―は、理由もなくその場を離れようとしていた。


◇クロ―

 ミレーヌから唐突に言われたが
 出来ることとできないことがある。

 何かが来る。
 そう確信できるほどの根拠はない。
 ただ、ここに居続けるのは危険だと感じたからかもしれない。

 城内の通路に出た瞬間、数人の民が立ち尽くしているのが見えた。
 悲鳴も、逃げる気配もない。
 邪魔だ。

「どけ!」

 肩を掴んで脇に押しやる。
 乱暴だったかもしれないが、知ったことじゃない。
 助けるつもりはなかった。
 進路を塞いでいただけだ。

 直後、背後の建物が崩れ落ちる。
 さっきまで民が立っていた場所だ。

 ――俺が、どかした位置だ。

 そう思っただけだ。
 俺は振り返らない。

「……ついてねぇな」

 それだけ確認して、歩き続けた。


◇神界

 その一方で神界側は、結果を淡々と見る者がいた。
 神の判断が一瞬だけ割れる。
 神の視聴者がざわつく。
 でも次の瞬間、もっと悪い展開が来る。

 クロ―自身は何も得ていない。
 神は「分類を試みた」。
 だが、ログが安定しない。

「生存者は三名」
「直接的救助行動はなし」
「回避行動による結果的生存か」

 まずは恐怖だな。

「恐怖反応は?」
「低いな。逃げてはいるが、取り乱していない」

 次に善意だ。

「救済意図は?」
「見当たらん。助けようとはしていない」

 最後に悪意だが。

「巻き込んだ可能性は?」
「ない。民を盾にも使っていない」

【観測追加】
 恐怖反応:低
 回避行動:最適
 倫理意図:不明
 善悪評価:結果依存

「珍しいな」
「救済にも、破壊にも寄らない」
「どちらにも賭けられないじゃないか」

「救済者枠、失敗したな」

 神の一柱が、淡々とそう結論づけた。
 
【観測ログ】
 対象:クロ―
 事象:民間人3名生存
 判定:救済行動(非意図的)

「壊れてるんじゃない」
「最初から、枠に入らないだけだ」

 神はログを見て口角を上げた。

「面白い」
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