【〝惑星〟転生】異世界そのもの(星)に転生した少年が無能ポーターと罵られ勇者パーティーから追放された後に真の力に目覚め無自覚ざまぁする

お餅ミトコンドリア

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13.「決着」

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「さっきのはきっと、まぐれだったガ! 今度こそ! 『サモン』!」
「「「「「ピイイイイ!」」」」」
「「「「「ガアアアア!」」」」」

 高空に静止する四天王最強エビルガーゴイルが両手を翳すと、再びハーピーとワイバーンが計千匹出現した。

「はぁ、はぁ、はぁ……今度こそ終わり――」
「固有スキル〝パンチ〟!」
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「………………ひゃい!?」

 僕が彼らに向けて放った正拳突きにより、千の衝撃波が発生、モンスターたちは全て遥か彼方へと吹っ飛び、見えなくなった。

「くっ! 負けてたまるかガ! 『サモン』! はぁ、はぁ、はぁ……」
「「「「「ピイイイイ!」」」」」
「「「「「ガアアアア!」」」」」
「固有スキル〝パンチ〟!」
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「………………またガ!」

 何度召喚されようが。

「くっ! まだまだ! 『サモン』! ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
「「「「「ピイイイイ!」」」」」
「「「「「ガアアアア!」」」」」
「固有スキル〝パンチ〟!」
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「………………嘘だと言ってくれガ!」

 僕の〝パンチ〟により。

「も、もう勘弁してくれガ! 『サモン』! ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ……」
「「「「「ピイイイイ!」」」」」
「「「「「ガアアアア!」」」」」
「固有スキル〝パンチ〟!」
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「………………あぁあああああぁぁぁあああ!」

 モンスターの軍勢は瞬時に討伐される。
 髪を掻きむしる四天王最強。

「『サモン』! ひぃ、ひぃ、ひぃ……もう、魔力が……」
「固有スキル〝パ――」
「ルド君! キリがないわ! こっちは私が倒すから、ルド君は四天王本体を叩いて!」

 虚空に静止する僕が再度腰を落とし拳を引いて放とうとした直後、お姉ちゃんから声が掛かり、「うん、分かった!」と、僕は動作を止める。

 見ると、「やあああああああああ!」と、自在に翼を使いこなすお姉ちゃんが、一瞬でモンスターを十匹倒していた。

「た、助かったガ……じゃなくて、助かったのはお前たちの方だガ! 命拾いしたガ! でも、やっぱり殺すガ! エビルガーゴイルの固有スキルで!」

 エビルガーゴイルが僕に向けて両手を翳すと、全身からどす黒い魔力が迸る。

「『石化ペトリフィケーション』!」

 漆黒の魔力が一気に広がり、僕と僕の背後のお姉ちゃん、更にはモンスター軍団の半分を包み込んで。

「うわああああああ!」
「きゃああああああ!」
「「「「「ギャアアアアアア!」」」」」

 僕らの身体は石化した。

「はぁ、はぁ、はぁ……勝ったガ! 勝ったガアアアアア! ガギャギャギャ! 手こずったが、エビルガーゴイルが本気を出せばこの通りガ! ざまぁ見ろ――」
「へっちゃらだもーん!」
「なんでえええええええええええええええ!?」

 僕は両拳を突き上げ、エビルガーゴイルのいる場所まで再び舞い上がった。

 身体の表面を覆っていた石の膜が、バラバラと地上へと落ちる。

 見ると、「ああ、ビックリした!」と、お姉ちゃんも同様だった。

「一体何したガ!? 何で復活したガ!?」
「〝お祈り〟したから!」
「〝お祈り〟!? そんなんで四天王最強の固有スキルを防がれてたまるかガ!」

 「ふざけやがってガ!」と、蟀谷に青筋を立てたエビルガーゴイルが、声を荒らげる。

「こうなったら、奥の手だガ! エビルガーゴイルは、自分自身を硬化出来るガ! しかも、石化なんていうチャチなもんじゃないガ! 世界で一番硬いオリハルコンと同等の硬度を持つ身体になるガ! そして、その状態でぶつかって、大爆発までするガ! 自分もただじゃ済まないけど、仕方が無いガ!」

 僕の遥か上空へと飛翔したエビルガーゴイルが「うおおおおおおおお!」と両拳を握り締め雄叫びを上げると、漆黒の魔力が膨張し、それが今度は凝縮されて、身体全体が黒い光に覆われた。

「避けたらエルフの森が代わりに犠牲になるガ! 無論お前の防御魔法なんて簡単に突破出来るガ! 喰らうガ! 『アルティメット・エクスプロージョン・アタック』!」

 バチバチと放電現象を起こしながら、猛スピードでエビルガーゴイルが突っ込んでくる。

「ガギャギャギャ! 今度こそ死ねガ!」

 捨て身の彼に対して、僕は、腰を落として右拳を引く。

「〝お祈り〟の力! たあああああああああ! 」
「ギャアアアアア! だからそれは、〝お祈り〟じゃなくてただの〝パンチ〟だガ! しかも、固有スキルですらないガアアアアア!」

 〝お祈り〟で強化された僕の拳で、エビルガーゴイルは空の彼方へと吹っ飛び、消える。

 ドーン

 遥か遠くで爆発音が聞こえた気がした。

「こっちも終わったわ!」

 見ると、お姉ちゃんが、石化していなかったモンスター軍団を全て片付けていた。

 あ。
 でも、エビルガーゴイルを倒したから、森を覆う防御魔法の上に乗っかってる、さっき巻き添えで石化したモンスターたちが元に戻っちゃってる。

「固有スキル〝パンチ〟!」
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「これで良し!」

 こうして、僕たちは四天王最強エビルガーゴイル討伐を成し遂げた。

※―※―※

 僕らが地上に舞い降りると同時に翼が消滅。
 見ると、自身の左腕を見て何かに気付いたフィオレラさんが、族長の家へと駆けこむところだった。

 後をついていくと。

「姉ちゃん!」

 リーフィーさんの石化が解けていた。

「姉ちゃん! 姉ちゃん! 姉ちゃん!」

 ベッドの上にて上体を起こした彼女に、フィオレラさんが抱き着く。 

「私のことは族長と呼べと言っているだろうが」
「だって! だって! うわあああん!」
「ああもう。子どもみたいに泣いて……本当……に……お前……は……」

 窘めるリーフィーさんだったが、最後は言葉にならず、涙を浮かべながら最愛の妹を抱き締め返した。

 他のエルフの人たちも、「族長!」と、嗚咽を漏らす。

「良かったああああ! うわあああん!」

 その光景に、僕も感極まって泣いてしまった。

※―※―※

「本当に、ありがとうだぞ!」

 フィオレラさんが満面の笑みを浮かべる。

「本当に世話になった。森と皆を守り、四天王最強を撃退し、呪いまで解いてくれた。どれだけ感謝しても足りない」
「どういたしまして! 力になれて良かった!」

 頭を下げるリーフィーさんに、僕は笑みを返した。

「豪勢なご飯をご馳走になったもの。それで十分よ」
「うん、ご飯美味しかった!」

 僕とお姉ちゃんは、先程食べた料理の数々を思い出す。

 肉を食べない彼女たちらしく、野菜や茸を使った料理ばかりだったけど、とても美味しかった! デザートの果物も美味だった!

「いやしかし、族長として、何も礼をしないという訳には……」
「でも、立て続けに敵襲を受けて、立て直すためにお金だって必要でしょ?」
「それはそうだが……いや、しかし……」

 なおも眉間に皺を寄せ、腕を組んで真剣に思考するリーフィーさんに、お姉ちゃんが提案する。

「じゃあ、情報を貰えないかしら? 四天王を全員倒したから、これで魔王の居場所が分かると思ったんだけど、魔王城みたいなのって、もうどこかに出現してるのよね?」
「いや、感知魔法が得意な部下によると、この世界のどこにもそれらしきものは現れてはいない」
「え、そうなの?」

 石化が解けて封じられていた魔力が元に戻ったことで、みんな魔法が使えるようになったみたいだ。

「リーフィーさん、魔王城って、どこにあるのかな?」
 
 僕が小首を傾げると、彼女は「恐らくだが」と前置きした上で答えた。

「〝空〟だと思う」
「空!?」
「ああ。〝魔王城〟だが、〝認識阻害魔法〟や〝不可触魔法〟を掛けているようだが、〝そこに存在している〟ことには違いない。そうすると、既に地上にあるものならば、人々が近くを訪れたり、そこを通る可能性があり、そこに〝魔王城〟として存在するハードルは高くなる。そう考えると、〝誰も立ち入らない場所〟が良く、更に言えば、〝何もない場所〟がベストだ。地下や海かとも考えたが、名実ともに四天王最強であるあのエビルガーゴイルが〝空〟を縄張りにしているのを見て、考えを改めた。奴は、空にある〝魔王城〟を守るための守護者も兼ねていたのではないか、とね」

 すごい!
 そんな風に考えたことなかった!

「ただ、仮に空にあったとしても、知覚出来ないのでは、どちらにしろ辿り着くことは不可能だが……力不足ですまない」
「ううん、ありがとう!」
「十分有益な情報を貰えたわ! ありがとうね!」

 別れ際、フィオレラさんが突如声を上げた。

「そうだ! 姉ちゃん、お礼する良い方法を思い付いたぞ!」
「族長だ。で、その方法とは?」
「えっと、ごにょごにょ」
「なっ!? そんなことを私にしろと!?」
「姉ちゃんだって、お礼したいと思ってるんだぞ?」
「それはそうだが……くっ! やむを得まい……」

 耳元で何事かを囁かれたリーフィーさんが、頬を赤らめる。

「助けてくれてありがとうだぞ!」
「その……深く感謝する」

 二人が屈んで顔を近付けてきて。

 チュッ
 チュッ

 僕のほっぺに左右からチューしてくれた。

「うん! どういたしまして!」

 白い歯を見せるフィオレラさんと顔を真っ赤にして目を逸らすリーフィーさんに、僕はにっこりと笑った。

※―※―※

「エルフの銀髪美人姉妹が同時にキスて! お礼の仕方がいやらし過ぎるのよ! そんなの、男だったら年齢問わず落ちるに決まってるじゃない! 反則よ! そんなの普通の人間の女が勝てる訳ないじゃない! いや、別に勝負しようだなんて思ってないけどね!」
「お姉ちゃん、〝いやらし過ぎる〟って、なぁに?」
「え? えっと、その……ルド君は知らなくて良いのよ? 大したことじゃないから」
「うん、分かった!」

 僕らは今、馬車でエルフの森の西方にある、ドワーフの人たちが住む鉱山に向かっている。

 エルフの人たちの石化が解けた時に、お姉ちゃんが「〝エルフ・ドワーフ連合国〟なのに、ドワーフの人たちは、エルフを助けにこないのね。ちょっと薄情じゃない?」と非難した際に、リーフィーさんが言ったのだ。

「仕方ない。二つの種族は、長年憎み合い、争ってきた。もうそんなことは終わりにしようと言って出来たのが、この連合国だ。だから、力を合わせて、というよりもむしろ、互いに戦争を仕掛けたりしないように、という牽制の意味合いの方が大きい。私たちは割り切った関係なのだ」

 その上で、感知魔法が得意なエルフの男性が、「大変だ!」と、ドワーフの窮状を教えてくれた。

 どうやら、ドワーフの人たちは鉱山事故に遭って、全員が生き埋めになっているらしい。恐らくは、丁度三日前から。しかも、どうやら〝普通の鉱山事故ではない〟とのこと。

 すかさずリーフィーさんが「助けなければ!」と立ち上がり、「〝割り切った関係〟じゃなかったの?」と指摘するお姉ちゃんに「相手から施しを受けていないからといって、それが、こちらから相手に食事を提供してはいけないという理由にはならない」と断言するリーフィーさんは、族長として滅茶苦茶カッコ良かった!

 でも、まだエルフの人たちは自分たちの集落を立て直すのに集中した方が良いというお姉ちゃんの意見を聞いて、リーフィーさんは思い留まって、代わりに僕らが助けにいくことにしたんだ。

 ちなみに、森の中には馬車で通れるような大きな道は無かったんだけど、リーフィーさんが「はああああ!」と、森に向けて魔法を発動すると、木々が動いて、道が出来ちゃった! すごい!

「あ! 見えた!」
「アレね……って、ちょっと、アレ……本当に鉱山……なの!?」

 僕らが目にしたのは。

「グオオオオオオオオオオオオ」

 悍ましい一つ目と口を持つ、山の形をした途方もなく巨大なモンスターだった。

「モンスター化させられたってことね……」

 僕は、「中にいるみんなを助けるんだ!」と、固有スキル〝呼吸〟で再び翼を背に生やすと、上空に舞い上がった。

「神さま、お願いします! あの山を元に戻してください!」
 
 僕の〝お祈り〟に呼応して、眩い光が僕から真っ直ぐに放たれる。

 光線を食らった山形モンスターは、悲鳴を上げた。

「ギャアアアアアアアアアアッ!」

 光が消えると、モンスターの気配も消滅していた。

「やった!」

 何とか元に戻せたらしい。

 そしたら、次だ!

「神さま、お願いします! ドワーフの人たちを助けて下さい!」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 〝お祈り〟により、山が花のように四つに開いて、ドワーフの人たちを発見。
 スーッと浮かせて全員を救出、怪我を完治させつつ地面に下ろした後に、山を元に戻す。

「こ、これは一体!?」
「何が起こったんだ!? 瀕死の怪我だったはずなのに!?」

 助かった彼らを見て、「良かった!」と、僕は胸を撫で下ろした。

 こうして、僕らはドワーフの人たちを救うことに成功した。

※―※―※

「ルド君。流石のルド君でも、魔王城がどこにあるのかまでは分からないわよね?」
「うんとね、あっち!」
「分かるんかーい! ……ルド君にとっては、〝認識阻害魔法〟も意味を成さないのね……」

 ということで、僕らは、魔王城がある空の真下、つまりオースバーグ王国王都のロマノシリングへと向かって馬車を走らせていた。

「決戦の前に、ロマノシリングのポトフを食べて英気を養いましょ!」

 お姉ちゃんの元気のもと! 大事!

 食べた後に、また翼で羽搏いて上空へ向かう予定だ。

※―※―※

 〝エルフ・ドワーフ連合国〟を出立して数日後の朝。

「お姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう、ルド君」

 いつも通り、野営中馬車の外で見張りをしながら寝ていたお姉ちゃんが、笑顔を返してくれた。

「それ、なぁに?」

 見ると、馬車の周囲の地面が焼け焦げたり、巨大な穴が開いたり、穴が開くと同時に焼け焦げたりしている。

「夕べ、魔法が飛んできたの」

 お姉ちゃんが言うには、以前と同じように、野営している最中にどこかから炎・雷撃が一個ずつ、更に爆発魔法も二個飛んできたらしくて、とっさにお姉ちゃんが全て剣で叩き斬ったとのことだった。

「お姉ちゃん、炎も雷も斬っちゃうなんて、すごい! カッコ良い!」
「くすっ。ありがとう」

 僕も頑張って泣き虫を卒業して、お姉ちゃんみたいに強くなるんだ!

「じゃあ、今回も、ちゃんと、〝地面を破壊した人〟に責任を取ってもらうね!」
「え?」

 僕は、「神さま! お願いします! この炎魔法・雷撃魔法・爆発魔法を元に戻して、持ち主に返して下さい!」と〝お祈り〟した。

 地面が瞬時に修復されると共に、炎・雷撃・そして二個の〝光り輝く魔力の塊〟がフワリと舞い上がったかと思うと、猛スピードでどこかに飛んでいく。

「良かった、これで今日も綺麗になった!」
「……そ、そうね……」

※―※―※

 〝エルフ・ドワーフ連合国〟を出発してから、九日後。

「ククク。さて。どうやって殺してやろうかのう?」

 オースバーグ王国の上空にある〝魔王島〟にある魔王城にて、僕らは魔王と対峙していた。
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