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第一章 ヒロイン編

23.

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「リティ。」

呼ばれた声に反応して身体が固まる。
この晴れやかな場に似つかわしくない低い声が後ろなら聞こえますわ。
………私、今ロレインと話してますね。
何故カルと手を繋いでたはずが離れていますの?
思い返してみるとカルの手を思いっきり振り払ってロレインと話してるような…………血の気が引くとはこのことですわ。

真後ろから冷たい空気が漂ってきます。
目の前で話していたロレインが震えだしましたわ……私の考えは間違ってないのでしょうね。
後ろを向くのが怖いですわ。

「レインと仲がいいよなぁ…………妬けるなぁ。」

私の肩に手を置きながら耳元で囁かれ、カルの声優並の声が頭に響き渡る。

「カル!!違うんです!!ロレインとは別……に………っ。」

誤解をされてしまうと慌てて弁解をしてカルの方へ振り向くと、後一センチくらいで唇が当たるだろう距離で瞳に唇に………顔が真っ赤に火照っていくのがわかる。
口をパクパクと動かすが言葉が出てこない。
本当に驚いたときは言葉が出ませんわね。

「カッカル兄様、リティアナとはなんでもありません。俺はサフィア一筋です。」

そう、ロレインは婚約者のサフィア様のことを一途に想っている純粋なところがあるのです。
そこは昔からロレインの良いところの一つとして私も微笑ましく思っておりましたわ。
私とのことを疑われないように………と言うか一番はカルに嫌われないように予防線を張ったといったところかしら。

「そうだろうね。レインは昔からサフィア嬢に夢中だから。でもね、リティは俺の婚約者になったからほしいな。」

「わかりました。」

実の弟でも嫌なのでしょうか!?
ロレインもカルに嫌われたくなくてとてもよい返事をしてますわ。
実は、このロレインはゲームの途中まで出てこずだが隠れ攻略対象として後々登場する人物だ。
幼い頃から知っている私にはロレインがサフィア様のことを一途に溺愛してるのがわかっているので、ヒロインとはまずくっつくことはあり得ないと思ってますわ。
万が一でもあり得ないが、ヒロインがロレインに近づいてきてそれに答えるようなことがあればロレインに制裁を加えないと………そんなことにならないことはわかっておりますが、ゲームの強制力が働いてしまうとわからないですからしっかりと見張らせていただきます。

「カッカル。少し離れてくれませんか?近すぎますわ。」

肩を抱かれカルに身を委ねてるようになっている現状がはずかしいです。

「これくらいいないとすぐに離れるからな。」

さっきの手を離したことを根にもってます?
悪かったと思ってますわ……とても離してなんて言えなくなりました。


「カルティド殿下。ご婚約おめでとうございます。」

えっ!?知らない人ですわね……それにしてもすごい人が現れましたわ!!
赤色のドレスに大丈夫かしらと思うほど胸元が開いていて、寄せて上げているお胸がポロリと溢れそうですわ。
社交界にいらっしゃる方はこんな派手なドレスを着たりするのですね……凄いですわ。
綺麗な方と言うより化粧が濃いくてよくわかりません。
私は社交界デビューしてないから知らないだけかもしれませんわね。
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