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第一章 ヒロイン編

35.

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「カル、離れてください。私今、全身がベトベトしているのでカルに付いてしまいますわ。」
 
「関係ない。何故このようなことになっているんだ?」

抱き締められている力を弱めながら私に聞いてくるカルに、事の詳細を話しました。
クラスのご令嬢達も私が潔白であることを言ってくださり、身体は冷たくて気持ち悪いですが心は温かくなりましたわ。
チラッとイークス侯爵令嬢とモーリス男爵令嬢を見ると顔色が悪いですわ。
自分達がわざとしたことの自覚があるのでしょうね。

「よくわかった。リティの友達のご令嬢達教えてくれてありがとう。これからもリティと仲良くしてほしい。」

「「「「はい。もちろんですわ。私達いつも優しいリティアナ様に助けられておりますの。」」」」

ニコニコしながら皆様言ってくださるので私の方が皆様の優しさに助けられておりますわ。

「イークス嬢にモーリス嬢、何かいうことはあるか?」

「カルティド殿下、私とモーリス男爵令嬢の話も聞いてくださいませ。」

「そうですわカルティド殿下、私も制服が濡れたのです。ファシリック公爵令嬢だけではございません。」

すっ凄いですわ、カルもクラリスお兄様の塩対応をスルーし自分の主張を言うこのお二人は心が強いんですね。

「ふーん。リティはこんなにジュースまみれになっているのに袖濡れてるだけでそんな大騒ぎすることかな。モーリス嬢もが濡れているなら着替えた方がいいよ。」

ごもっともな言葉ですわね。
カルの塩対応にモーリス嬢は表情を歪めながら私を睨んでいますわ。

「リティ着替えた方がいい。俺が連れていこう。リティの友達もありがとう。」

私と一緒にいたご令嬢達に笑顔で言うと、私の肩を支えながら歩くからベトベトがカルにつくからと離れようとしてもビクともしないのです。
私が離れようとしたのがわかって、お姫様抱っこへ変更したカルに

「歩けますわ。カルにつくから離れてください。」

と伝えてると逆効果だったようで耳元にカルの顔が近づいてきて

「いい子に大人しくしていて。リティのは全然構わないから。俺もベトベトだろうが衣服が濡れてもいいよ。」

何ででしょう。
顔が真っ赤になっていくのがわかりますわ。
確かにこの状況を解説してくれているのですが、カルが耳元で言うからなのか、カルが言うからなのかとても色気があって変な意味に聞こえてきますの。

それにこの言葉には覚えがありますわ。
確かラブイベントの時にヒロインに呟く台詞ですわ。
と言うことは、先程のジュース事件とでも命名しましょう…あのジュース事件はイベントの発生でしたのね。
でも、何故でしょう。
モーリス男爵令嬢よりもモブな私の方が被害が出ておりましたわ。
私がカルの婚約者になったから変わってしまったのでしょうか?
考えてもわかりませんが………このイベントはカルティド殿下ルートの時だけこんなに辱しめいた言葉になっていて、真面目なカルティド殿下が生々しい発言をしていると話題になりましたわ。
容姿端麗なカルティド殿下に色気も加わってあの言葉を呟かれたい女の子が急増したちょっとしたラブエロイベントだったはずですわ。

まさか自分がカル本人に言われることになるとは思ってもみなかったです。
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