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16 テッドの杞憂
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こうして図書室に行ったパレシャはすったもんだはあったが一応ケネシスと顔合わせはできた。
『何を言っても私は可愛いヒロインちゃんなんだからテッドとケネシスは照れているだけで私のことが好きなはずよ。テッドはしばらく放置するとして、明日からケネシスとのラブラブモードを楽しもうっと!』
今日もマナー教師からの課題はそっちのけで妄想に明け暮れるパレシャだった。
翌朝の二年Aクラスではテッドが心配そうにケネシスに声をかけていた。二人は互いに高位貴族子息なので学園入学前からの付き合いである。
「ケネシスもあのご令嬢に目をつけられたらしいな」
テッドは昨日の図書室での事件を耳にしていた。
「ああ。テッドが困っていたのはあのご令嬢だったのですね。確かにものすごく気分を悪くさせてくれるご令嬢で驚きました。
テッドとのことは噂には聞いてはいましたが半信半疑だったのですよ。しかしあれを見て納得でした。僕にも初対面で呼び捨てでしたからね。
昨日のうちに家族には報告の手紙を書きましたよ。万が一あれが誤解して噂にされたら困りますから」
ケネシスはパレシャに対する皮肉を冷たさを感じる微笑で言い放った。
「それは正解だと思うよ。俺も友人たちが味方だからいいと思っていたが、家族にどういう形で噂が届くかわからないな。心配も誤解もされたくないから今日にでも手紙を書くよ」
「それがいいですよ。それにしてもあれにズバニールさんはとても懇意にしているのですよね?」
ズバニールも高位貴族子息として二人と面識があるが友人と呼べるほどではない。
「ああ。アリサ嬢が苦言を呈するためにEクラスに赴くほどらしい」
「なるほど。ズバニールさんは未だにアリサ嬢の言葉には耳を貸さないということなのでしょうね」
二人はAクラスの友人たちと談笑しているアリサに視線を一度向け再び合わせた。
アリサほど弁えた行動をする者が身内であるズバニールに注意もせずに他人への苦言に行くとは思われていない。
「そのせいでアリサ嬢があのご令嬢に付き纏われることになって、俺はアリサ嬢には食堂を利用しないように忠告したのさ」
「それはいいアドバイスです。あれに絡まれたら精神が病んでしまいますからね」
ケネシスはパレシャを思い出し嫌悪感を目に宿す。
「おい。顔を作れ。極寒の顔になっているぞ。言葉もな。さすがに『あれ』はまずかろう」
「だからテッドに壁際に立ってもらっているのではないですか。テッドだけにしか見られていませんよ」
「隠しきれるわけないだろう。だから『氷の小公爵』なんて二つ名をつけられるんだぞ」
ケネシスは呆れ顔のテッドを鼻であしらう。
「ふん。望むところです。わざとなのは知っているでしょう?」
「全く…。美男子の優男のくせに。
まあいいや。とにかくあのご令嬢に絡まれるなら俺の友人たちを側に置くか? ノアルに相談すれば上手くやってくれるぞ」
テッドの友人たちとは鍛錬をともにしている者たちである。
「いや。わざと姿を見せてやろうと思っているのです。そうすれば少しはアリサ嬢への執拗さが薄れるかもしれないでしょう」
ケネシスはアリサの名前を出しただけで顔が綻ぶ。アリサに気が付かれないところであってもアリサの役に立てることが嬉しいのだ。
「なるほどな。アリサ嬢もそろそろ食堂へも足を運びたいだろうからな。でも大丈夫なのか?」
「適当に食堂から離してから身を隠しますから大丈夫ですよ。あれが食堂へ戻って来る前にアリサ嬢のテーブルの警備をしていただけますか?」
「わかった。俺たちでアリサ嬢のテーブルを囲みあのご令嬢が来たら立ちはだかるようにしよう」
「ええ。お願いします。それと僕に関する説明は避けて、警備をするから食堂を使っていただけるようにアリサ嬢への説明もお願いします」
「またか…。ケネシスがアリサ嬢のためにやっていることなのにアリサ嬢本人には言ってはダメなのか?」
テッドはケネシスのその姿勢にため息を零す。
「アリサ嬢が僕の行動を知ったら心配して遠慮なさいますから。君たちが食事テーブルを配慮することぐらいならアリサ嬢も受け入れてくださるでしょう」
「まわりを気遣うアリサ嬢もアリサ嬢を気遣うケネシスも…。しょうがないな。引き受けてやるよ」
「テッド。いつも助かります。友人の多い君にしかできないことですから」
「ケネシスだって素を出せば周りが放っておかないだろうに」
ケネシスは困ったと苦微笑する。
「家庭の事情なことは知っているでしょう? テッドが味方なだけで充分ですよ」
テッドはケネシスの肩をポンと叩いて席へ戻った。その後ろ姿を見送りながらその背中の向こうにいるアリサの楽しそうにしている姿に優しい顔をした。
『何を言っても私は可愛いヒロインちゃんなんだからテッドとケネシスは照れているだけで私のことが好きなはずよ。テッドはしばらく放置するとして、明日からケネシスとのラブラブモードを楽しもうっと!』
今日もマナー教師からの課題はそっちのけで妄想に明け暮れるパレシャだった。
翌朝の二年Aクラスではテッドが心配そうにケネシスに声をかけていた。二人は互いに高位貴族子息なので学園入学前からの付き合いである。
「ケネシスもあのご令嬢に目をつけられたらしいな」
テッドは昨日の図書室での事件を耳にしていた。
「ああ。テッドが困っていたのはあのご令嬢だったのですね。確かにものすごく気分を悪くさせてくれるご令嬢で驚きました。
テッドとのことは噂には聞いてはいましたが半信半疑だったのですよ。しかしあれを見て納得でした。僕にも初対面で呼び捨てでしたからね。
昨日のうちに家族には報告の手紙を書きましたよ。万が一あれが誤解して噂にされたら困りますから」
ケネシスはパレシャに対する皮肉を冷たさを感じる微笑で言い放った。
「それは正解だと思うよ。俺も友人たちが味方だからいいと思っていたが、家族にどういう形で噂が届くかわからないな。心配も誤解もされたくないから今日にでも手紙を書くよ」
「それがいいですよ。それにしてもあれにズバニールさんはとても懇意にしているのですよね?」
ズバニールも高位貴族子息として二人と面識があるが友人と呼べるほどではない。
「ああ。アリサ嬢が苦言を呈するためにEクラスに赴くほどらしい」
「なるほど。ズバニールさんは未だにアリサ嬢の言葉には耳を貸さないということなのでしょうね」
二人はAクラスの友人たちと談笑しているアリサに視線を一度向け再び合わせた。
アリサほど弁えた行動をする者が身内であるズバニールに注意もせずに他人への苦言に行くとは思われていない。
「そのせいでアリサ嬢があのご令嬢に付き纏われることになって、俺はアリサ嬢には食堂を利用しないように忠告したのさ」
「それはいいアドバイスです。あれに絡まれたら精神が病んでしまいますからね」
ケネシスはパレシャを思い出し嫌悪感を目に宿す。
「おい。顔を作れ。極寒の顔になっているぞ。言葉もな。さすがに『あれ』はまずかろう」
「だからテッドに壁際に立ってもらっているのではないですか。テッドだけにしか見られていませんよ」
「隠しきれるわけないだろう。だから『氷の小公爵』なんて二つ名をつけられるんだぞ」
ケネシスは呆れ顔のテッドを鼻であしらう。
「ふん。望むところです。わざとなのは知っているでしょう?」
「全く…。美男子の優男のくせに。
まあいいや。とにかくあのご令嬢に絡まれるなら俺の友人たちを側に置くか? ノアルに相談すれば上手くやってくれるぞ」
テッドの友人たちとは鍛錬をともにしている者たちである。
「いや。わざと姿を見せてやろうと思っているのです。そうすれば少しはアリサ嬢への執拗さが薄れるかもしれないでしょう」
ケネシスはアリサの名前を出しただけで顔が綻ぶ。アリサに気が付かれないところであってもアリサの役に立てることが嬉しいのだ。
「なるほどな。アリサ嬢もそろそろ食堂へも足を運びたいだろうからな。でも大丈夫なのか?」
「適当に食堂から離してから身を隠しますから大丈夫ですよ。あれが食堂へ戻って来る前にアリサ嬢のテーブルの警備をしていただけますか?」
「わかった。俺たちでアリサ嬢のテーブルを囲みあのご令嬢が来たら立ちはだかるようにしよう」
「ええ。お願いします。それと僕に関する説明は避けて、警備をするから食堂を使っていただけるようにアリサ嬢への説明もお願いします」
「またか…。ケネシスがアリサ嬢のためにやっていることなのにアリサ嬢本人には言ってはダメなのか?」
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「アリサ嬢が僕の行動を知ったら心配して遠慮なさいますから。君たちが食事テーブルを配慮することぐらいならアリサ嬢も受け入れてくださるでしょう」
「まわりを気遣うアリサ嬢もアリサ嬢を気遣うケネシスも…。しょうがないな。引き受けてやるよ」
「テッド。いつも助かります。友人の多い君にしかできないことですから」
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