【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

文字の大きさ
17 / 57

17 ケネシスの逃亡

しおりを挟む
 ケネシスは有言実行した。食堂でランチボックスを購入するとすぐに食堂を出る。後ろをついてくるパレシャのスピードに気を配りながらどんどんと学舎から離れていく。広い広い庭園の最奥にある温室に来ると入る素振りで影に隠れてパレシャの様子を伺う。パレシャが温室へ入って行くと、もと来た道を今度は身を隠すようにしながら戻り学舎にあるケネシスだけの秘密の場所に行く。

「アリサ嬢はゆっくりと食事を楽しむことができただろうか…」

 テッドの手助けがあればきっとうまくいっていると確信しているケネシスは微笑を浮かべて窓からの景色に笑顔を向けた。

 そうして一週間もするとパレシャが少しばかり頭を使ってきた。

 購入を終え食堂を出ようとするがパレシャの気配がしない。不自然にならないように見渡すが見つけることができなかった。
 すると廊下の向こうから男子生徒と女子生徒が早歩きでやって来る。

「ワイドン小公爵様。我々はテッド様に武術のご指導をしていただいている者です。本日監視対象者Pは温室の前にてケネシス様を待ち伏せております」

 男子生徒がテッドの仲間を示すピンバッジを見せたのでケネシスは一つ頷いた。

「ほぉ。あれもいくらかは考えたようですねぇ」

 ニヤリと笑ったケネシスを見た二人はブルリと震える。

「報告ありがとうございます。テッドにも後ほど礼を言っておきます。お二人の昼食を遮ってしまい申し訳ありませんでした」

「とんでもございません。俺たちはワイドン小公爵様が例の令嬢を誘い出すためにお使いになる道の少し奥まったベンチで昼食をとっているので大丈夫ですよ。
俺たち婚約していて彼女が弁当を持ってきてくれるのです」

 男子生徒は頭をかき女子生徒は頬を染めて俯いた。

「そうでしたか。ではお二人からの情報をありがたく使わせていただきます。僕もたまにはテッドと一緒に昼食をとることにしましょう」

「テッド様も喜びます。では俺たちはこれで。
また怪しい動きがありましたら報告します」

「はい。お願いします」

 二人は再び庭園へ向かいケネシスは食堂にいたテッドに声をかけるとテッドの隣の席が空けられた。

「どうした?」

「テッドの友人が情報から勧告してくれましてね。お礼がてら食事でも一緒にしたくなったのですよ」

「俺のことがあるから臨機応変に対応してくれているのだろう」

「とてもありがたいです」

 それから何があったのかをテッドに説明し二人は食事を進めながら小声で話している。あらかた食べるものがなくなったころアリサがテーブルから立ち上がり二人のところに来た。

「ケネシス様。こちらでのお食事はお久しぶりのご様子ですわね。普段はちゃんとお召し上がりになっていらっしゃいますか?」

 話に集中していた二人はビクッと動揺した。ケネシスはクリクリの大きな金色の瞳をさらに大きくさせて心配そうにしているアリサに思わず破顔しそうになるが周りの目があるので微笑に留めた。

「きゃあ!!」
「すてきぃ!」

 微笑でも黄色い声があちこちから聞こえてきて真顔に戻るケネシスにテッドは苦笑いする。アリサもケネシスの現状を知っているので顔つきが変わったことに動揺や怒りはない。

「食事はすべての源です。ご心配には及びません。しっかりといただいております」

「それは安心しました。それにしてもここ数日どちらで…」
「あああ!!! ケネシス! いたぁ! なんで?」

 声のする方を振り返れば例のご令嬢パレシャが遠くからケネシスを指さしていた。まだテッドの仲間が遮るほどの距離ではないが甲高い声が食堂中に響いた。テッドの仲間がざっと動きパレシャの視界と進路を遮りアリサの二人の友人はすぐさまアリサに寄り添い人壁に隠れるように食堂を出ていく。テッドの仲間に誘導されたケネシスもそれに続いた。
 
 四人は二年Aクラスの教室に戻ってきた。衛兵が廊下に待機するこのクラスが一番安全である。赤を基調としたタータンチェックのリボンまたはネクタイの者しか通されない。
 ちなみに三年生はアーガイル、一年生はギンガムチェックであり、クラスで色が異なるのはどの学年も共通である。

 ケネシスが自分の席に座りホッと息をつく。
 昼休みの教室にはアリサとその友人三人とケネシスだけとなった。ケネシスを護衛していたテッドの仲間は衛兵に任せて食堂に戻ってしまったし衛兵は事件がない限り教室へは入ってこない。 

「ケネシス様」

 カナリヤのような可愛らしい声に振り向けばそこには怒りをあらぬ限りに表すアリサが腰に手をあてて仁王立ちしていた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?

水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」 ここは裁判所。 今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。 さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう? 私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。 本当に裁かれるべき人達? 試してお待ちください…。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...