【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

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56 二人の処遇

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 誕生パーティーから一週間後、ズバニールは母親とともに東部へ向けて出発した。ズバニールの希望で家族の見送りは無い。
 薄いカーテンをひいた三階の部屋の窓際に二つの影があった。

「わたくしがズバニールを追い込んでしまったのかしら……」

 メイロッテは目尻にそっとハンカチを置く。

お義姉様おねえさまがお気になさることではございませんわ。すべてはズバニール本人が行動してきた結果です。それにわたくしたちはまだ十八。ズバニールならきっとやり直しができます。わたくしはそれまでに領地を繁栄させズバニールに数割譲渡しても現在の資産と変わらないだけのものにするつもりですわ」

「わたくしの妹は頼もしいわね」

 妹と改めて言われたアリサは肩を揺らして動揺した。

「あの……お義姉様おねえさま……。コンティ伯爵家のお名前でなくオルクス公爵家になったこと……後悔なさっていませんか?」

「え? どうして? わたくしはコンティ家との絶縁を言い渡されたわけではないですし、養女にしていただいたのに早々に嫁いでしまい申し訳なく思っているくらいですわ。
第一王子殿下のお相手が伯爵家なので王家の身内に公爵家の名前がほしいというのもわかります。そういう建前をうるさく言う者たちが少なからずおりますものね。わたくしの身分がそれらの者たちへの対応に割く時間を減らすお役にたてるのですから喜んでいるくらいですよ」

「でも知っていらっしゃるのでしょう?」

 俯くアリサにメイロッテは首を傾げる。

「本当はわたくしの我儘でお義姉様おねえさまになっていただいたって……」

 涙ぐみそうになるアリサは唇を少し噛む。メイロッテはアリサをそっと抱きしめた。

「アリサ。それほどまでにわたくしを愛してくれてありがとう。貴女と本当の姉妹になりたいと思っていたからわたくしにとってもとても嬉しい申し出だったのよ。こうして一度オルクス公爵家に入れば、何があっても貴女と姉妹であることは不変だもの。わたくしはここへ里帰りしてもいいのよね?」

 アリサがバッと顔を上げるとメイロッテの慈悲深い笑顔がそこにあった。

「もちろんです。もちろんですわ。メイお義姉様おねえさま。いつでも来てくだいさませね」

「ええ。ルナ様が呆れるくらいに来てしまうかもしれないわ。うふふふふ」

 後ろで涙を拭いていたメイドがお茶を淹れて二人をソファへ促した。

 ズバニールがいなくなって三ヶ月ほど過ぎた頃、執務室でカイザーから仕事を教えてもらっているときにアリサはふとズバニールが気になった。

「ズバニールは新しい学園に慣れましたかね」

 窓の外の遠い空を見る。

「頑張っているようだ。プライドより実務を選択できるようになった分、大人になったのだろう」

「そうですか。数年後が楽しみですね。パレシャ嬢とも上手くやっている様子ですか?」

「ん? パレシャ嬢のこと、お前に報告しなかったか?」

「ええ。あの翌日には男爵様ご夫妻と一旦領地へ荷物を取りに帰るとは聞いておりましたが、わたくしはお会いしませんでした。学園は退学なさってお荷物も二日後には男爵家に送られたはずですわ。ルナお義兄様おにいさまに付き纏っている様子はございませんから王都にはいらっしゃらないですよね?」

 メイロッテを悲しませるようなことは許さないアリサはルナセイラの周りにパレシャがいないかどうかは常にチェックしている。

「パレシャ嬢はズバニールがここを去った同日に北部の二国向こうの王国へ送り出した」

「えええ!!! 国外追放ではやり過ぎではありませんか? お父様もお母様も、責任はズバニールにもあるとお考えなのでしょう?」

 驚愕の事実にアリサは顔を青くした。

『パレシャさんは逞しい感じではありますけど無一文で放置されたらさすがに厳しいのではないかしら。教養も知識も乏しい様子でしたもの。
三ヶ月も前ですから探すことは不可能かもしれませんわね』

「なっ!! 違う違う違う! ワシはそんなに非道いことはしないぞっ!」

 愛娘に軽蔑されるかもしれない恐怖からカイザーは必死に否定した。

「パレシャ嬢からの提案だ。提案というより傲慢ごうまん我儘わがままだが、ズバニールと離れる様子だったから全面的に認めてやったのだ」

「二国向こうは海を渡らねばなりませんわね。男爵家に賄えますの?」

「旅費もこちら持ちで更に我が家が懇意にする商団にそちらへ回ってもらう手配までしてやったのだ」

「まあ。そうでしたの。でもなぜそのお国なのかしら? 確か……我が国よりだいぶ途上なお国のはずですわよね?」

「そうだ。特に特産物があるとは聞かないし、我が国とは交易もない国だ。だから商団へ随分と色をつけてやることになった」

 カイザーが小さくため息を吐いたのでアリサは慰めるように微笑した。
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