【完結】転生者候爵令嬢のわたくしは王女と一緒に転落するらしいのですが全力で拒否したいと思いますわ〜公爵令息の僕の悪夢は現を拒否隣国王女編〜

宇水涼麻

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26 また空回り

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 10月に4年も恋い焦がれたコレッティーヌ嬢に学園の一室でようやくと会え、さてこれからと思った矢先、同僚が怪我をして、急遽僕が代わりに外交に行かねばならなくなった。
 コレッティーヌ嬢に婚約者がいないというのは、すでに調べてあったし、あのような化粧をしているのだから、その気になるような男性もいないのだろうとは思っていた。なので、この外交を済ませ、それからゆっくりとお誘いしようと考えていたのだ。

 外交から帰ってきてみたら、マーシャから連絡があった。「お見合いの会」をするというのだ。僕は1度と断った。僕は個人的にコレッティーヌ嬢と会いたかったから。
 しかし、よく聞くと、建前は「異国異文化交流会」だという。それって、留学生は出るということだ。僕はやはり参加することを決めた。断ったり、出ると言ったり、ここでも空回り。マーシャにもチクリと怒られた。

 さらには、帰国したばかりで書類は山のようにあり、あの会には遅れて行くことになってしまった。またしても空回り。マーシャには、また怒られた。

 それでも、僕の目的の人は一人だけだったから、少しばかり強引だとは思ったが、コレッティーヌ嬢と二人になるようにした。コレッティーヌ嬢に喜んでもらおうと、ケーキも用意した。僕にとってはとっても幸せな時間だったんだけど、コレッティーヌ嬢にとっては、困っただけだったんだ。またまた、僕は空回り。
 
 そして、空回りに気が付かず、コレッティーヌ嬢が困っただけだなんて知らない僕は、その翌日には長期休暇をとり、隣国へと旅立った。

〰️ 〰️ 〰️

「隣国?ですか?何をなさりに?」

 ゼンディール様は少し俯き加減でお話をしておりましたので、わたくしはずっとゼンディール様を見ていることができましたの。

「ケーバルュ厶王国のボージェ侯爵領へ行ってきた。侯爵様に婚約のお願いをしに、ね」

 さすがにわたくしも動きが止まりました。だって、だって、だって!

「君から『趣旨を理解してお見合いに参加したのだ』と聞いたとき、僕は自分の最大の空回りにやっと気がついたんだ」

 ゼンディール様は、顔をあげられ、わたくしの目をしっかりと見ました。わたくしはその目から逃げることはできませんでした。

「コレッティーヌ嬢、僕は君が好きだ。どうか僕を男として見てくれないだろうか」

 わたくしの答えは、ずっと決まっていたのだと思います。何も戸惑うことなく、頷くことができたのですもの。
 ゼンディール様は、膝に置いていたわたくしの両手を大きな両手で包み込み、そこに頭を当てられて、何度も何度も『ありがとう、ありがとう』とおっしゃってくださいました。


〰️ 〰️ 〰️

 翌週末、ゼンディール様のご要望で、わたくしとパティ様はメイドたちとともに、学園の寮からエイムズ公爵邸に引っ越しました。公爵ご夫妻は公爵領にいらっしゃり、妹キャサリン様はすでに嫁がれ、弟ディリック様はご自身の伯爵領におられるそうです。

 お仕事が忙しいゼンディール様は、早くお帰りになられたお夕食はわたくしとともにしたいと、しかし、いつ早くお帰りになれるかはわからないので、わたくしに公爵邸にいてほしいとおっしゃるのです。
 わたくしに異論はなく、普段はパティ様と、早馬からの連絡があれば、ゼンディール様とパティ様とでお夕食をとっております。

〰️ 〰️ 〰️

 少し戻りまして、お化粧事件から2日後の朝、学園に参りますと、わたくしの顔をご覧になった5名様は、がっくりとなさっておりました。クララ様は泣きそうです。
 わたくしはウォルバック様とボブバージル様はさておき、マーシャ様、クララ様、パティ様を教室の隅へとお誘いし、小さな声でお話をしました。

「先週よりも、ソバカスが1つ減り、つり目は1ミリ下がり、眉は0.3ミリ薄くなり、顔色は少しよくなっているそうですの。卒業までには、素顔に近くなる予定ですわ」

 わたくしがそう言いますと、みなさまはわたくしの顔をジッと見ます。わたくしが見られているのに、目が合わないという不思議な現象を体験しています。

「本当に素顔がわかりませんわね」

「ええ、わたくしなんて、何年もコレット様の素顔を見ていたはずですのに、こうなると、なかなか思い出せませんわ」

 クララ様は何もおっしゃりませんが、何度も瞬きをなさるクリクリおめめは、なんと可愛らしいのでしょうか。

 制服というのは便利なもので、胸は大きくなったはずですが、あまり変化は目立ちません。『こういう時、ボレロって便利よね』どうやら『はるかの知識』では、この制服をボレロと申すそうですわ。
 わたくしは先日まで胸を潰す下着を着ておりました。それが普通のことだと思っていたのです。こうなりますと、呼吸のなんと清々しいことか。もうあの下着は着たくありません。

 『はるかの知識』はもちろん、わたくしの誤解も、カリアーナのテクニックも知っておりました。『だって、話的にどうなるか面白そうだったから』あくまでも、わたくしたちの生活を、小説のように思っているフシのある『はるかの知識』なんですのよ。全く困ってしまいますわね。
 ちなみに、胸を潰す下着の辛さは『はるかの知識』は『慣れでしょう』と申しておりました。そんなものに慣れたくありませんでしたわ。『はるかの知識』は時々イジワルです。


〰️ 〰️ 〰️


 僕とウォルがあまりにも呆けているから、コンラッドとセオドアが訝んでいた。だが、コレッティーヌ嬢があの化粧をしてきたということは、素顔を晒すつもりがないということなので、それを言うつもりはない。いや、言うことはできない。
 だが、ウォルの意外な特技?が発覚して、ある意味、事なきを得た。

「気が付かないのか?コレッティーヌ嬢、今日は……そのぉ……ス、スタイルがいいと思わないか?」

 確かに言われると、先日のドレスほどではないが、女性としての魅力的な部分が、強調されているように見える。ウォル、目敏い!

「ウォルって、ムッツリだったんだな」

 苦肉の策で発した言葉で、セオドアにそのように判断されたウォルは、膝から崩れ落ちた。コンラッドはその隣に座り込み、ウォルの肩を『ポンポン』と優しく叩いた。きっと、それはそれで屈辱ではないかと、僕はウォルを可哀想な者を見る目で見ていた。

〰️ 〰️ 〰️

 年の暮れも近くなった頃、例の『マーシャ様の会』は、すでにあれから2回ほど行われておりますが、お隣での開催にも関わらず、わたくしは参加しておりません。パティ様は随分と楽しそうに行かれるようになりました。

 テストも終わり、テスト休みです。そんなある日のお夕食、パティ様の食がすすみません。

「パティ様?いかがなさいましたの?」

「コレット様、コレット様はどうして『マーシャ様の会』に行かなくなったのですか?」

 必死な目をこちらに向けるパティ様は可愛らしいです。

「ゼンディール様が行くなと申したからですわよ。わたくしも…………ゼンディール様に行ってほしくありませんし………」

 わたくしは、フォークを置いて、ナプキンで顔を隠しました。恥ずかしいです。

「ですわよね………。でも、女から先に『行かないで』というのは、はしたないかしら?」

 パティ様は相当悩まれているようで、涙目です。

「そんなこと……「そんなことありませんよ!パティ嬢!」」

 わたくしと被さるようにゼンディール様のお声が響きました。

「ゼンディール様、何をなさっておりますの?」

「あ、いや、その、早く帰れたからびっくりさせようと思って………」

 ゼンディール様の後ろに立つ執事のジルドがケーキの箱を持ち上げ、『これです』と示した。

「だけど、パティ嬢の悩み相談を邪魔しては申し訳ないなぁと思って……」

 ゼンディール様が小さくなっていきます。きっと、『驚かせたい』と『邪魔したくない』と『入ってしまった』との 空回りで悩んでいらっしゃるのです。お可愛らしいわ。
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