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32 新公爵「お前が王太子になれ」
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ラオルドは穏やかにノンバルダを諭す。
「エーティル嬢はまだ十六だし、すべては国王陛下がお決めになることだからわからないよ。
まあ、なってもいいように研鑽はしているけどな」
「公爵家として全面的に支援するから何でも言ってくれよ」
前のめりになり真剣な眼差しのノンバルダにラオルドは少しばかりたじろいだ。
「あはは。それは頼もしいな。だが、王太子の力量を見せねばならないから公爵家に手助けしてもらうわけにはいかないよ」
「なぜだ? 公爵家の後ろ盾を持ち、支援が強いことも王子の資質の一つだろう」
「いや。臣下は誰が国王になっても忠義心を持ってもらうため王子による派閥は作らないことになっているんだ」
「それが建前であることは皆が知っているぞ。誰もがどの王子に取り入るべきかと思案し行動しているじゃないか。側近の推薦人制度はその象徴だ」
「今は試験に合格した者を半数使役させているよ。
ノンバルダ。俺は公爵家にこそ誰が国王になっても支えてくれる筆頭になってほしいと思っているのだよ」
「私はラオルドが国王になることを望んでいる」
「そ、そうか。それは嬉しいが、実のところ王位継承についてどうすべきか悩んでいるのだ」
「はあ???」
ノンバルダは不敬と取られかねないほど顔を歪めた。ラオルドは困ったように笑う。
「執務としての才はキリアの方が上だと思うのだ。俺は武術の方が得意だな。昔のように近隣地区と戦って統一を図る時代なら俺が国王に相応しいかもしれないが、今はまず現王国を安定させることが大切だ。だからキリアの……」
「ダメだっ! 国王にはラオルドがなるのだ!」
ラオルドの言葉に被せ気味に発したノンバルダは頭を掻きむしる。
「ノンバルダ……?」
「あ、あ、すまない……」
ノンバルダは髪を手で梳いて姿勢を正した。
「私はラオルドが国王になってほしい」
「なぜだ?」
「血の繋がりのある者を応援するのは当然だ」
「何を言うのだ。すでに王家と親類ではないか。だからこそこうして急な訪問をも受け入れているのだぞ」
「だが、私と国王陛下は血の繋がりはない」
「そんなことっ!」
ラオルドが些末なことだと言おうとするとノンバルダはガバリと立ち上がる。
「私は父を越える。越えねばならない。そのためには国王と血縁であることは追風になる。
ラオルド。頼んだぞ。何なりと言ってくれ」
ノンバルダはラオルドの返事を待たずに歩きだして部屋を出ていった。
ラオルドはそれをあ然と見送ることしかできなかった。
その一ヶ月後。ラオルドの誕生パーティーが主な貴族が招待されて催されたが王太子の発表はなかった。
国王陛下は王太子をラオルドにと内々に打診をしたが、ラオルドがまだ決めかねていると答えたためである。国王陛下も国王の地位をすぐに譲るというものではないので慌てる必要はないと判断した。
パーティーから一週間もせずにノンバルダから面談願いがありラオルドがそれを受け入れるとノンバルダはすぐにやってきた。
ノンバルダの表情は固くそれを察したラオルドは挨拶もそこそこに再び周りの者たちを遠ざける。
二人になって早々にノンバルダは誕生パーティーで王太子の発表がされなかったことへの不平不満を漏らした。
「俺から国王陛下にお願いしたのだ。俺はまだ自分が最大に国に貢献できる形を模索しているのだよ」
「そんなものは王太子になれば自由自在じゃないかっ!」
「逆だ。王太子になればその責任とそれに伴う仕事でそんなことを考える余裕はなくなる」
「王太子こそがラオルドの形だ。何を躊躇しているのだ? とにかく、早目にエーティル嬢はものにしておけよ」
「は?」
「エーティル嬢もキリア殿下ももうすぐ十七だ。二人がそういう関係になったら既成事実を作られるぞ。その前にこちらがそうしておかねばならない」
ラオルドは考えもしていなかった話に呆然とする。
「エーティル嬢はまだ十六だし、すべては国王陛下がお決めになることだからわからないよ。
まあ、なってもいいように研鑽はしているけどな」
「公爵家として全面的に支援するから何でも言ってくれよ」
前のめりになり真剣な眼差しのノンバルダにラオルドは少しばかりたじろいだ。
「あはは。それは頼もしいな。だが、王太子の力量を見せねばならないから公爵家に手助けしてもらうわけにはいかないよ」
「なぜだ? 公爵家の後ろ盾を持ち、支援が強いことも王子の資質の一つだろう」
「いや。臣下は誰が国王になっても忠義心を持ってもらうため王子による派閥は作らないことになっているんだ」
「それが建前であることは皆が知っているぞ。誰もがどの王子に取り入るべきかと思案し行動しているじゃないか。側近の推薦人制度はその象徴だ」
「今は試験に合格した者を半数使役させているよ。
ノンバルダ。俺は公爵家にこそ誰が国王になっても支えてくれる筆頭になってほしいと思っているのだよ」
「私はラオルドが国王になることを望んでいる」
「そ、そうか。それは嬉しいが、実のところ王位継承についてどうすべきか悩んでいるのだ」
「はあ???」
ノンバルダは不敬と取られかねないほど顔を歪めた。ラオルドは困ったように笑う。
「執務としての才はキリアの方が上だと思うのだ。俺は武術の方が得意だな。昔のように近隣地区と戦って統一を図る時代なら俺が国王に相応しいかもしれないが、今はまず現王国を安定させることが大切だ。だからキリアの……」
「ダメだっ! 国王にはラオルドがなるのだ!」
ラオルドの言葉に被せ気味に発したノンバルダは頭を掻きむしる。
「ノンバルダ……?」
「あ、あ、すまない……」
ノンバルダは髪を手で梳いて姿勢を正した。
「私はラオルドが国王になってほしい」
「なぜだ?」
「血の繋がりのある者を応援するのは当然だ」
「何を言うのだ。すでに王家と親類ではないか。だからこそこうして急な訪問をも受け入れているのだぞ」
「だが、私と国王陛下は血の繋がりはない」
「そんなことっ!」
ラオルドが些末なことだと言おうとするとノンバルダはガバリと立ち上がる。
「私は父を越える。越えねばならない。そのためには国王と血縁であることは追風になる。
ラオルド。頼んだぞ。何なりと言ってくれ」
ノンバルダはラオルドの返事を待たずに歩きだして部屋を出ていった。
ラオルドはそれをあ然と見送ることしかできなかった。
その一ヶ月後。ラオルドの誕生パーティーが主な貴族が招待されて催されたが王太子の発表はなかった。
国王陛下は王太子をラオルドにと内々に打診をしたが、ラオルドがまだ決めかねていると答えたためである。国王陛下も国王の地位をすぐに譲るというものではないので慌てる必要はないと判断した。
パーティーから一週間もせずにノンバルダから面談願いがありラオルドがそれを受け入れるとノンバルダはすぐにやってきた。
ノンバルダの表情は固くそれを察したラオルドは挨拶もそこそこに再び周りの者たちを遠ざける。
二人になって早々にノンバルダは誕生パーティーで王太子の発表がされなかったことへの不平不満を漏らした。
「俺から国王陛下にお願いしたのだ。俺はまだ自分が最大に国に貢献できる形を模索しているのだよ」
「そんなものは王太子になれば自由自在じゃないかっ!」
「逆だ。王太子になればその責任とそれに伴う仕事でそんなことを考える余裕はなくなる」
「王太子こそがラオルドの形だ。何を躊躇しているのだ? とにかく、早目にエーティル嬢はものにしておけよ」
「は?」
「エーティル嬢もキリア殿下ももうすぐ十七だ。二人がそういう関係になったら既成事実を作られるぞ。その前にこちらがそうしておかねばならない」
ラオルドは考えもしていなかった話に呆然とする。
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