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41 少女「騎士様たちの本当の仲間になりたい」
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ヴィエナの父ボイズは騎士団に所属する騎士爵であった。祖父も騎士爵を賜っていた。
ヴィエナの母は平民でヴィエナが幼い頃に病で亡くなってしまいヴィエナには母親の記憶はほぼない。ボイズは妻の死を期に王都警備の衛兵になり実力で隊長を務めていた。
ボイズが仕事中事故に巻き込まれて亡くなった時、騎士爵という爵位は消滅した。一切の収入がなくなってしまったがそれまで母の代わりに家事をしていたヴィエナには外でできることは少なかった。
大家のおばあさんがヴィエナに謝りながら孤児院への支度をさせる。
「ごめんね。うちに余裕があればいいのだけどあたしもこの部屋の家賃がないと生きていけないんだよ」
「大丈夫です。おばあちゃん、お父さんとお別れもお墓もやってくれてありがとうございました」
「ボイズさんには町のみんなが世話になっているからね。孤児院は近所だし親切な神父様だ。成人さえすれば働き口には心配いらないよ。この近所のもんはあんたの仕事の手助けぐらいはできるから」
「はいっ! 大きくなったら戻ってきます」
そこに現れたムーガが馬から飛び降りヴィエナの前に膝をついて肩に手を優しく置いた。ムーガは汗だくで息も切らしていて息を整えることもなく口を開く。
「はあはあ! ヴィエナ! ボイズ殿! ボイズ殿は?!」
遠征に出ていたムーガは帰都途中で訃報を聞き隊を抜け出して駆けつけた。
「ムーガのおじちゃん!」
これまで泣かなかったヴィエナはムーガの胸に飛び込んで泣いた。後ろにいる大家もヴィエナが泣くことを我慢していたことに気がついていたのでヴィエナの姿にもらい泣きしながらもボイズのことを説明した。
ムーガはボイズに世話になったと感じていてヴィエナを引き取ることはムーガにとって自然なことであったしヴィエナもムーガに懐いていたので孤児院よりムーガと伴にいることを選んだ。ムーガが三十歳、ヴィエナは十歳の時である。
だが引き取ってはみたもののムーガにはヴィエナに何をしてやればいいのかがわからなかった。ムーガは王城内の部屋とは別に王城近くの部屋を借りヴィエナの住まいとするとヴィエナはこれまで父親と暮らしていたように家内のことは進んでやるのでムーガの心配を他所に比較的穏やかな日常となった。
夜中に帰宅してヴィエナの寝顔を覗くと頬に涙の跡があったときにはムーガは寝袋を持ってきてヴィエナのベッドの横に寝た。起きたときに驚いたヴィエナであったがすぐにムーガに飛びつき首に抱きついた。
しかし、ムーガはボイズのように王城勤務に変更することはしなかったため当然長期出張がある。その期間は父親と暮らしていた部屋の大家のところへ金銭を渡して預かってもらうことをヴィエナに提案したムーガだったがヴィエナは泣いて嫌がった。
『父親が仕事中に亡くなったから一人になりたくないのかもしれないな』
ヴィエナのいる家に交代で様子を見に来ていた隊員たちはヴィエナを任務に随行させることに賛成した。
「チビがいた方が尚更平民の商隊だと思ってもらえますよ」
「ヴィーのパンケーキが食べれるように材料持って行きましょう!」
道中の休憩時間になると皆こぞってヴィエナと遊びたがりヴィエナは飽きることは全くなかった。ただし、その遊び相手が第三師団第二部隊の猛者たちであっただけだ。
猛者たちは自分たちのノリでヴィエナと全力で戯れる。
猛者たちは自分たちのノリでヴィエナを全力で追い回す。
猛者たちは自分たちのノリでヴィエナを全力で振り回す。
そんな猛者たちのせいでヴィエナは知らず知らずのうちに俊敏で体力もある子供になっていく。
『さすがにボイズ殿の血筋だ。こいつらと遊べるなんて普通の子供は泣いているぞ』
ムーガも苦笑いで見ていた。
移動中も乗馬を習ったり荷台で読み書きを習ったりと充実した日々を送った。
そしてそのような旅を二年ほど経験するとヴィエナからムーガに言い出した。
「私! みんなの本当の仲間になりたいっ!」
家の食堂で食後のお茶をしていたムーガは驚きのあまり椅子からずり落ちた。
ヴィエナの母は平民でヴィエナが幼い頃に病で亡くなってしまいヴィエナには母親の記憶はほぼない。ボイズは妻の死を期に王都警備の衛兵になり実力で隊長を務めていた。
ボイズが仕事中事故に巻き込まれて亡くなった時、騎士爵という爵位は消滅した。一切の収入がなくなってしまったがそれまで母の代わりに家事をしていたヴィエナには外でできることは少なかった。
大家のおばあさんがヴィエナに謝りながら孤児院への支度をさせる。
「ごめんね。うちに余裕があればいいのだけどあたしもこの部屋の家賃がないと生きていけないんだよ」
「大丈夫です。おばあちゃん、お父さんとお別れもお墓もやってくれてありがとうございました」
「ボイズさんには町のみんなが世話になっているからね。孤児院は近所だし親切な神父様だ。成人さえすれば働き口には心配いらないよ。この近所のもんはあんたの仕事の手助けぐらいはできるから」
「はいっ! 大きくなったら戻ってきます」
そこに現れたムーガが馬から飛び降りヴィエナの前に膝をついて肩に手を優しく置いた。ムーガは汗だくで息も切らしていて息を整えることもなく口を開く。
「はあはあ! ヴィエナ! ボイズ殿! ボイズ殿は?!」
遠征に出ていたムーガは帰都途中で訃報を聞き隊を抜け出して駆けつけた。
「ムーガのおじちゃん!」
これまで泣かなかったヴィエナはムーガの胸に飛び込んで泣いた。後ろにいる大家もヴィエナが泣くことを我慢していたことに気がついていたのでヴィエナの姿にもらい泣きしながらもボイズのことを説明した。
ムーガはボイズに世話になったと感じていてヴィエナを引き取ることはムーガにとって自然なことであったしヴィエナもムーガに懐いていたので孤児院よりムーガと伴にいることを選んだ。ムーガが三十歳、ヴィエナは十歳の時である。
だが引き取ってはみたもののムーガにはヴィエナに何をしてやればいいのかがわからなかった。ムーガは王城内の部屋とは別に王城近くの部屋を借りヴィエナの住まいとするとヴィエナはこれまで父親と暮らしていたように家内のことは進んでやるのでムーガの心配を他所に比較的穏やかな日常となった。
夜中に帰宅してヴィエナの寝顔を覗くと頬に涙の跡があったときにはムーガは寝袋を持ってきてヴィエナのベッドの横に寝た。起きたときに驚いたヴィエナであったがすぐにムーガに飛びつき首に抱きついた。
しかし、ムーガはボイズのように王城勤務に変更することはしなかったため当然長期出張がある。その期間は父親と暮らしていた部屋の大家のところへ金銭を渡して預かってもらうことをヴィエナに提案したムーガだったがヴィエナは泣いて嫌がった。
『父親が仕事中に亡くなったから一人になりたくないのかもしれないな』
ヴィエナのいる家に交代で様子を見に来ていた隊員たちはヴィエナを任務に随行させることに賛成した。
「チビがいた方が尚更平民の商隊だと思ってもらえますよ」
「ヴィーのパンケーキが食べれるように材料持って行きましょう!」
道中の休憩時間になると皆こぞってヴィエナと遊びたがりヴィエナは飽きることは全くなかった。ただし、その遊び相手が第三師団第二部隊の猛者たちであっただけだ。
猛者たちは自分たちのノリでヴィエナと全力で戯れる。
猛者たちは自分たちのノリでヴィエナを全力で追い回す。
猛者たちは自分たちのノリでヴィエナを全力で振り回す。
そんな猛者たちのせいでヴィエナは知らず知らずのうちに俊敏で体力もある子供になっていく。
『さすがにボイズ殿の血筋だ。こいつらと遊べるなんて普通の子供は泣いているぞ』
ムーガも苦笑いで見ていた。
移動中も乗馬を習ったり荷台で読み書きを習ったりと充実した日々を送った。
そしてそのような旅を二年ほど経験するとヴィエナからムーガに言い出した。
「私! みんなの本当の仲間になりたいっ!」
家の食堂で食後のお茶をしていたムーガは驚きのあまり椅子からずり落ちた。
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