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1 探し人
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「フラール! どこにいるっ!?」
「メリナ! ここにいるのかっ!?」
「ダリアーナぁ! どこにいるのぉ?」
三人の見目麗しい男子生徒が必死の形相で女子生徒の名前を連呼して探している場所は学生寮の食堂である。別々の入り口から食堂へ入ってきたその者たちはそれぞれタイプが違う美男子であり、慌てた様子や泣きそうな様子で声を出しているが美しさは損なわれていない。
ここはラスティラ王国の王都にある学園の学生寮に併設された食堂だ。本日学園はお休みだが、卒業式を明日に控え、これまでの思い出やこれからの夢や離れ違い思いを語る学生であふれかえっている食堂は談話室と化していた。三人の声が打ち消されるほどの喧騒に包まれ、そこここで笑い声も響いていた。
大声を出していた三人はこれまた大変美しい女子生徒たちが楽しそうに語らっていたテーブルに辿り着いた。喧騒に包まれていたはずの食堂であったが、三人が別々の入り口から大声を出しながら練り歩いたため、各々野次馬を引き連れていくこととなり、いつしかその空間は三人の動向に注目し、比較的静かな状態となっている。
「フラール! 探していたんだぞ。寮監に呼び出してもらったのに、なぜ部屋にいないのだ」
紺髪水色瞳の王子様系美男子が腰に手を当て肩で息をしている。
男性は女子寮には入れないので、例え家族であっても寮監に呼んできてもらわなくてはならない。
「メリナ! 聞こえなかったのか? 返事くらいしてくれ」
赤茶髪オレンジ瞳の騎士系美男子は呼吸が整っていないので、胸の前で組まれた両腕は大きく前後していた。
確かに三人の中では一番声が大きいが、このテーブルからは一番遠い入り口から入ってきていたし、喧騒の中で聞こえるはずもない。
「ダリアーナぁ! 見つけたぁ」
紫髪金瞳のかわいい系美男子は両膝に両手を乗せて、全身で呼吸している。
「あら? みなさまは随分お疲れのようですわね」
サラサラな銀髪のサイドを編み上げており、長いまつ毛に縁取られた紫水晶のような瞳は大きく大変整った容姿のキレイ系美少女が代表して三人に声をかけた。この美少女が王子様系美男子に探されていたフラール・メッソン公爵令嬢だ。
「今、邸から来たからだ」
「屋敷から戻ったばかりだ」
「邸宅からだものぉ」
三人は自分と同じ行動をしていた者がいたことにびっくりし、お互いに目を合わせていた。
学園の休日には、王都にタウンハウスを持つ高位貴族子女たちがタウンハウスに戻ることは珍しいことではない。だが、週も明けないうちに寮へ戻ってくることは珍しい。
「そうでしたの。こちら―学園―にいらっしゃるのは明日の式典前かと思っておりましたわ」
濡羽色の髪は後ろに一つにまとめられいて、厚めの前髪から覗く猫のような緑色の瞳が妖艶な雰囲気となっているお姉様系美少女が手を口元に当てて「オホホ」と笑ってる。彼女は、騎士系美男子に探されていたメリナ・ハリガル侯爵令嬢である。
「ああ。その予定だった」
「そのつもりだったさっ」
「そうしたかったよぉ」
またまた三人は目を合わせる。
「でしたら、どうしてこちらにいらっしゃるのかしら?」
ふわふわとした栗色髪をおろしている清楚系美少女が少しだけ垂れたピンクの瞳。かわいい系美男子に探されていたダリアーナ・エーノル伯爵令嬢はピンクの瞳をしばたかせた。
「あれを考え直してもらわねばっ!」
「あれを無効にするためだっ!」
「あんなのなしだよねぇ!」
またまたまたまた三人は目を合わせ、さすがに口をあんぐりとさせた。
「あれ? ですか?」
フラールが優雅な仕草で首を傾げて、メリナとダリアーナに意見を求めたが、二人も首を傾げた。
三人は恥辱に震えていたが、話を進めないわけにはいかない。
「メリナ! ここにいるのかっ!?」
「ダリアーナぁ! どこにいるのぉ?」
三人の見目麗しい男子生徒が必死の形相で女子生徒の名前を連呼して探している場所は学生寮の食堂である。別々の入り口から食堂へ入ってきたその者たちはそれぞれタイプが違う美男子であり、慌てた様子や泣きそうな様子で声を出しているが美しさは損なわれていない。
ここはラスティラ王国の王都にある学園の学生寮に併設された食堂だ。本日学園はお休みだが、卒業式を明日に控え、これまでの思い出やこれからの夢や離れ違い思いを語る学生であふれかえっている食堂は談話室と化していた。三人の声が打ち消されるほどの喧騒に包まれ、そこここで笑い声も響いていた。
大声を出していた三人はこれまた大変美しい女子生徒たちが楽しそうに語らっていたテーブルに辿り着いた。喧騒に包まれていたはずの食堂であったが、三人が別々の入り口から大声を出しながら練り歩いたため、各々野次馬を引き連れていくこととなり、いつしかその空間は三人の動向に注目し、比較的静かな状態となっている。
「フラール! 探していたんだぞ。寮監に呼び出してもらったのに、なぜ部屋にいないのだ」
紺髪水色瞳の王子様系美男子が腰に手を当て肩で息をしている。
男性は女子寮には入れないので、例え家族であっても寮監に呼んできてもらわなくてはならない。
「メリナ! 聞こえなかったのか? 返事くらいしてくれ」
赤茶髪オレンジ瞳の騎士系美男子は呼吸が整っていないので、胸の前で組まれた両腕は大きく前後していた。
確かに三人の中では一番声が大きいが、このテーブルからは一番遠い入り口から入ってきていたし、喧騒の中で聞こえるはずもない。
「ダリアーナぁ! 見つけたぁ」
紫髪金瞳のかわいい系美男子は両膝に両手を乗せて、全身で呼吸している。
「あら? みなさまは随分お疲れのようですわね」
サラサラな銀髪のサイドを編み上げており、長いまつ毛に縁取られた紫水晶のような瞳は大きく大変整った容姿のキレイ系美少女が代表して三人に声をかけた。この美少女が王子様系美男子に探されていたフラール・メッソン公爵令嬢だ。
「今、邸から来たからだ」
「屋敷から戻ったばかりだ」
「邸宅からだものぉ」
三人は自分と同じ行動をしていた者がいたことにびっくりし、お互いに目を合わせていた。
学園の休日には、王都にタウンハウスを持つ高位貴族子女たちがタウンハウスに戻ることは珍しいことではない。だが、週も明けないうちに寮へ戻ってくることは珍しい。
「そうでしたの。こちら―学園―にいらっしゃるのは明日の式典前かと思っておりましたわ」
濡羽色の髪は後ろに一つにまとめられいて、厚めの前髪から覗く猫のような緑色の瞳が妖艶な雰囲気となっているお姉様系美少女が手を口元に当てて「オホホ」と笑ってる。彼女は、騎士系美男子に探されていたメリナ・ハリガル侯爵令嬢である。
「ああ。その予定だった」
「そのつもりだったさっ」
「そうしたかったよぉ」
またまた三人は目を合わせる。
「でしたら、どうしてこちらにいらっしゃるのかしら?」
ふわふわとした栗色髪をおろしている清楚系美少女が少しだけ垂れたピンクの瞳。かわいい系美男子に探されていたダリアーナ・エーノル伯爵令嬢はピンクの瞳をしばたかせた。
「あれを考え直してもらわねばっ!」
「あれを無効にするためだっ!」
「あんなのなしだよねぇ!」
またまたまたまた三人は目を合わせ、さすがに口をあんぐりとさせた。
「あれ? ですか?」
フラールが優雅な仕草で首を傾げて、メリナとダリアーナに意見を求めたが、二人も首を傾げた。
三人は恥辱に震えていたが、話を進めないわけにはいかない。
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