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7 理解していない人
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マイゼルは自分の知らないところで、婚約者フラールと自分の家族や使用人がニーナの家の話をして行動していることに驚愕する。
コンジュとラルトンは少しだけ憐れみの目でマイゼルを見た。
「コンジュ様。マイゼル様のお家が『代表して』ヘンリ男爵家へ赴いたのですわよ」
「ラルトン様。わたくしたちは、六家ですでに話し合いが済んでいるということですわ」
マイゼルだけの話ではないと理解して、美男子たちは青い顔を晒してただただ話を聞くことしかできなくなっていく。
「ヘンリ男爵様には第二夫人と妾の違いについてご理解いただけたようです」
「ニーナ様とはお会いできずご説明できていないのですっ。今でも勘違いされているのは一目瞭然ですわっ」
「確かに第二夫人は第一夫人の許可のある立場ですわぁ。でも、婚姻前からにこやかに許可できるものではありませんわぁ」
「そうですわね。しかしながら、ニーナ様のご様子を見るにわたくしたちにすでに許されていると思っていらっしゃるようですわね。
みなさまの軽率な行動が一つの貴族―ヘンリ男爵家―を没落の危機にさらしたのですよ」
「確かに男女の関係ではなかったのでしょう。しかし、腕に縋り付いたり抱きついたりという貴族ではありえないスキンシップをお許しになって、ニーナ様に誤解を与えてしまいましたねっ」
「高額なプレゼントをして、さらに誤解をさせてしまわれましたわねぇ」
「先程、ニーナ様は『マイゼル様が公爵家だからお三人の中でマイゼル様を選んだ』かのようなお言葉がありましたわね。それもみなさまには普段からそれらを伝えていたかのようでしたわ。
ならば、彼女のお家の事情を理解し対応すべきでしたのよ」
フラールは目を細めて話を続ける。お金のために婚姻をすることは領民のためであるから貴族としては当たり前の判断であり、ニーナを批判するものではない。
「四人でのお言葉の中には否定するべきものもあたったのではございませんの?」
フラールのまるで四人での会話を聞いていたかのような質問にたじろぐ。
ニーナは『ずっと一緒にいようね』とか『卒業してもパーティーに来たい』とか『私の住むお家はどこになるのかしら?』とか『公爵家なら大丈夫よね?』とか『いつでも四人で会えるでしょう?』とか。そのように、将来を見据えるような言葉はいくつも重ねている。三人はそれらについて一切否定してこなかった。
「学生だから夢を見させてあげたいと思ったんだ……」
コンジュの苦しい言い訳にメリナがわかりやすく眉を寄せる。
「ただの夢になさるおつもりなら卒業の一年前には、行動を改めるべきでしたわねっ。卒業間近まであのようになされば、卒業後の面倒も見てもらえるとお考えになって当然ですわっ」
「その後のご旅行まで予定なさっていて、誤解をするなという方が間違っておりますよねぇ。ルートス侯爵家―ラルトンの家―の別荘に長期滞在なさる予定でしたのでしょうぉ?」
ダリアーナは皮肉な笑顔をラルトンに見せる。
「ニーナ様のご婚姻を阻止していると思わせる行為ですね」
「ですから、ニーナ様の婚姻がなくなってしまったのはみなさんの責任であると判断されましたっ」
「うふふ。みなさんの個人資産を没収してヘンリ男爵家に謝罪金を支払うことになりましたぁ」
フラールたちはまるで祝い事のようにパチパチと手を打った。
高位貴族子女は生まれてすぐにある程度の資産を持たせてもらうことが多い。その範囲での出費なら許されるのだ。
美男子たちは自分たちの自由になる金がなくなったことに愕然とする。
コンジュとラルトンは少しだけ憐れみの目でマイゼルを見た。
「コンジュ様。マイゼル様のお家が『代表して』ヘンリ男爵家へ赴いたのですわよ」
「ラルトン様。わたくしたちは、六家ですでに話し合いが済んでいるということですわ」
マイゼルだけの話ではないと理解して、美男子たちは青い顔を晒してただただ話を聞くことしかできなくなっていく。
「ヘンリ男爵様には第二夫人と妾の違いについてご理解いただけたようです」
「ニーナ様とはお会いできずご説明できていないのですっ。今でも勘違いされているのは一目瞭然ですわっ」
「確かに第二夫人は第一夫人の許可のある立場ですわぁ。でも、婚姻前からにこやかに許可できるものではありませんわぁ」
「そうですわね。しかしながら、ニーナ様のご様子を見るにわたくしたちにすでに許されていると思っていらっしゃるようですわね。
みなさまの軽率な行動が一つの貴族―ヘンリ男爵家―を没落の危機にさらしたのですよ」
「確かに男女の関係ではなかったのでしょう。しかし、腕に縋り付いたり抱きついたりという貴族ではありえないスキンシップをお許しになって、ニーナ様に誤解を与えてしまいましたねっ」
「高額なプレゼントをして、さらに誤解をさせてしまわれましたわねぇ」
「先程、ニーナ様は『マイゼル様が公爵家だからお三人の中でマイゼル様を選んだ』かのようなお言葉がありましたわね。それもみなさまには普段からそれらを伝えていたかのようでしたわ。
ならば、彼女のお家の事情を理解し対応すべきでしたのよ」
フラールは目を細めて話を続ける。お金のために婚姻をすることは領民のためであるから貴族としては当たり前の判断であり、ニーナを批判するものではない。
「四人でのお言葉の中には否定するべきものもあたったのではございませんの?」
フラールのまるで四人での会話を聞いていたかのような質問にたじろぐ。
ニーナは『ずっと一緒にいようね』とか『卒業してもパーティーに来たい』とか『私の住むお家はどこになるのかしら?』とか『公爵家なら大丈夫よね?』とか『いつでも四人で会えるでしょう?』とか。そのように、将来を見据えるような言葉はいくつも重ねている。三人はそれらについて一切否定してこなかった。
「学生だから夢を見させてあげたいと思ったんだ……」
コンジュの苦しい言い訳にメリナがわかりやすく眉を寄せる。
「ただの夢になさるおつもりなら卒業の一年前には、行動を改めるべきでしたわねっ。卒業間近まであのようになされば、卒業後の面倒も見てもらえるとお考えになって当然ですわっ」
「その後のご旅行まで予定なさっていて、誤解をするなという方が間違っておりますよねぇ。ルートス侯爵家―ラルトンの家―の別荘に長期滞在なさる予定でしたのでしょうぉ?」
ダリアーナは皮肉な笑顔をラルトンに見せる。
「ニーナ様のご婚姻を阻止していると思わせる行為ですね」
「ですから、ニーナ様の婚姻がなくなってしまったのはみなさんの責任であると判断されましたっ」
「うふふ。みなさんの個人資産を没収してヘンリ男爵家に謝罪金を支払うことになりましたぁ」
フラールたちはまるで祝い事のようにパチパチと手を打った。
高位貴族子女は生まれてすぐにある程度の資産を持たせてもらうことが多い。その範囲での出費なら許されるのだ。
美男子たちは自分たちの自由になる金がなくなったことに愕然とする。
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