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51 側近の実情
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兄上が僕の方に膝を向け僕の肩に手を置き一生懸命に誤解なく言おうする。
「ただ、ただな。お前が護衛を増やせと言ったということを誰かが聞いたら歪曲してとる者もいるかもしれないって話だよ」
「兄上。それがどういうことかわからないと言っているのです」
僕も兄上の必死さは伝わってくるので先程のようには声を荒げたりはしなかったが悲しさが混じり声が震えてしまった。
困惑した兄上が自分の額を覆う。
「すまん。本当に疑っているわけではいのはわかってくれ。バージルのために外での言動に注意が必要だと言いたいだけなんだ」
まだ意味はわからないがコクリと頷く。
「さっきも言ったけど第二王子派が第一王子の命を狙っているという噂がある。そして、お前は第二王子と同い年だから第二王子が王太子となればお前は側近となるだろう」
兄上は諭すように話すが第二王子の側近という聞いたことも考えたこともない話で更に理解できない内容になり目をパチパチさせた。
「そんなっ! 考えたこともありませんよっ? それに側近になったら何なのですか?」
「そうだよな。バージルがそんな考えでないことは家族の私達にはわかる。でもな……側近は外から見たら魅力的な地位だ……」
兄上は膝の上にひじを置き手を組んで項垂れた。
「魅力的?」
「そうだ。外から見れば、な。王族に関われておいしい思いができるとでも思っているやつは貴族にもまだいる。
バージル。お前は父上が楽をしておいしい仕事をしていると思うか?」
僕は父上の顔をじっと見た後ブンブンと顔を横に振った。
「父上はいっつも疲れているし急に呼び出されて慌てていることも多いし目の下のクマは消えていたことがないし。それって家族との時間も少ないってことだし。
僕はもっとクララと一緒がいいなって」
僕の考えていた父上の姿を言ったら父上も膝の上にひじを置き手を組んで項垂れてしまった。
「そ、そうか。私はそんなに働いているのか……。早く陛下には引退していただこう……。もっと家族と一緒にいたいし、な」
兄上がガバリと顔を上げて父上に縋る。
「父上! 勘弁してください! ブランドンはまだ王太子にもなってないのですよ!
ブランドンのやる気を抑えることがどれだけ大変か! 私たちはまだ学園に入ったばかりだというのに!」
「ほぉ! そうかブランドン殿下はやる気ありなのかっ! うんうん、それなら是非できることからやらせてみよう!」
「とにかくっ! 今はバージルの話ですよっ! 父上!」
嬉々とする父上とがっくりする兄上を交互に観察する。
『なんだよっ。兄上だって側近は大変だって思っているんじゃないかっ』
「僕はやっぱり側近なんてなりたくないっ! 父上のお仕事をやりたくない僕なんだから尚更護衛を増やせとは言わないでしょう」
「それはな、戦力に自信があり自分に疑いを持たれたないためだと考えるひねくれ者がいるんだよ。たまたまこちらの戦力が上だったけど殺すつもりだったんだろう、とか、な」
呆れたようにため息をつき説明してくれた兄上にはそのひねくれ者の顔が浮かんでいるのかもしれない。
そして、父上を見ると苦笑いをしているので父上にもそのひねくれ者の顔が浮かんでいるのだろう。
「ところで、なぜ、私が帰ってくることがお前のためになるのだ?」
「僕はこの公爵家を継ぎたくないのです。クララと伯爵家を継ぎたいのです。先日もクララとそのように話をしてきました。僕が公爵家のそしてクララが伯爵家のそれぞれ跡継ぎになるのは嫌なんです」
父上と兄上が目をまんまるにして僕を凝視した。それから吹き出した。
「プッ! ハーハッハ! すごいな、バージルは!」
「ハーハッハ! そうか、クラリッサ嬢のためか。ハハハっ! バージル、大切なものがあるのはよいことだ」
「父上! 兄上! 笑い事ではないです! もちろん、兄上のことも大切ですよ。だから兄上が公爵になってくれて僕が伯爵家に行くことが一番幸せなんです!」
「ハハ。そうか、わかった。でも学園に入れば第二王子と接点ができる。へんな噂には気をつけるのだよ」
父上が僕の目をまっすぐに見て言った。
「はい。わかりました」
「で、どうして私に増員を指摘できたんだ?」
僕は父上と兄上にはきちんと話すことにした。
「信じなくてもいいので、笑わないでくださいね」
僕は見た悪夢についてとダリアナ嬢に言われたことについてを二人に説明した。ダリアナ嬢については護衛もそれを見聞きしていることも。
「そうか、他に悪夢は見ているのか?」
「いえ、兄上が帰って来なかったときの夢なので続かないと思います」
「私たちはお前を信じるよ。でも周りの言葉に惑わされるな」
兄上が僕の肩に手を乗せて真剣な眼差しをぶつけてきたから素直に首肯する。
「話はわかった。バージル。もし、またダリアナ嬢の夢を見たら教えてくれ」
「はい。そうします」
「バージルはもうさがっていいよ。アレク、父上の報告を頼む」
父上と兄上はお祖父様のご様態のお話をするらしく僕は一人で執務室を出た。
「ただ、ただな。お前が護衛を増やせと言ったということを誰かが聞いたら歪曲してとる者もいるかもしれないって話だよ」
「兄上。それがどういうことかわからないと言っているのです」
僕も兄上の必死さは伝わってくるので先程のようには声を荒げたりはしなかったが悲しさが混じり声が震えてしまった。
困惑した兄上が自分の額を覆う。
「すまん。本当に疑っているわけではいのはわかってくれ。バージルのために外での言動に注意が必要だと言いたいだけなんだ」
まだ意味はわからないがコクリと頷く。
「さっきも言ったけど第二王子派が第一王子の命を狙っているという噂がある。そして、お前は第二王子と同い年だから第二王子が王太子となればお前は側近となるだろう」
兄上は諭すように話すが第二王子の側近という聞いたことも考えたこともない話で更に理解できない内容になり目をパチパチさせた。
「そんなっ! 考えたこともありませんよっ? それに側近になったら何なのですか?」
「そうだよな。バージルがそんな考えでないことは家族の私達にはわかる。でもな……側近は外から見たら魅力的な地位だ……」
兄上は膝の上にひじを置き手を組んで項垂れた。
「魅力的?」
「そうだ。外から見れば、な。王族に関われておいしい思いができるとでも思っているやつは貴族にもまだいる。
バージル。お前は父上が楽をしておいしい仕事をしていると思うか?」
僕は父上の顔をじっと見た後ブンブンと顔を横に振った。
「父上はいっつも疲れているし急に呼び出されて慌てていることも多いし目の下のクマは消えていたことがないし。それって家族との時間も少ないってことだし。
僕はもっとクララと一緒がいいなって」
僕の考えていた父上の姿を言ったら父上も膝の上にひじを置き手を組んで項垂れてしまった。
「そ、そうか。私はそんなに働いているのか……。早く陛下には引退していただこう……。もっと家族と一緒にいたいし、な」
兄上がガバリと顔を上げて父上に縋る。
「父上! 勘弁してください! ブランドンはまだ王太子にもなってないのですよ!
ブランドンのやる気を抑えることがどれだけ大変か! 私たちはまだ学園に入ったばかりだというのに!」
「ほぉ! そうかブランドン殿下はやる気ありなのかっ! うんうん、それなら是非できることからやらせてみよう!」
「とにかくっ! 今はバージルの話ですよっ! 父上!」
嬉々とする父上とがっくりする兄上を交互に観察する。
『なんだよっ。兄上だって側近は大変だって思っているんじゃないかっ』
「僕はやっぱり側近なんてなりたくないっ! 父上のお仕事をやりたくない僕なんだから尚更護衛を増やせとは言わないでしょう」
「それはな、戦力に自信があり自分に疑いを持たれたないためだと考えるひねくれ者がいるんだよ。たまたまこちらの戦力が上だったけど殺すつもりだったんだろう、とか、な」
呆れたようにため息をつき説明してくれた兄上にはそのひねくれ者の顔が浮かんでいるのかもしれない。
そして、父上を見ると苦笑いをしているので父上にもそのひねくれ者の顔が浮かんでいるのだろう。
「ところで、なぜ、私が帰ってくることがお前のためになるのだ?」
「僕はこの公爵家を継ぎたくないのです。クララと伯爵家を継ぎたいのです。先日もクララとそのように話をしてきました。僕が公爵家のそしてクララが伯爵家のそれぞれ跡継ぎになるのは嫌なんです」
父上と兄上が目をまんまるにして僕を凝視した。それから吹き出した。
「プッ! ハーハッハ! すごいな、バージルは!」
「ハーハッハ! そうか、クラリッサ嬢のためか。ハハハっ! バージル、大切なものがあるのはよいことだ」
「父上! 兄上! 笑い事ではないです! もちろん、兄上のことも大切ですよ。だから兄上が公爵になってくれて僕が伯爵家に行くことが一番幸せなんです!」
「ハハ。そうか、わかった。でも学園に入れば第二王子と接点ができる。へんな噂には気をつけるのだよ」
父上が僕の目をまっすぐに見て言った。
「はい。わかりました」
「で、どうして私に増員を指摘できたんだ?」
僕は父上と兄上にはきちんと話すことにした。
「信じなくてもいいので、笑わないでくださいね」
僕は見た悪夢についてとダリアナ嬢に言われたことについてを二人に説明した。ダリアナ嬢については護衛もそれを見聞きしていることも。
「そうか、他に悪夢は見ているのか?」
「いえ、兄上が帰って来なかったときの夢なので続かないと思います」
「私たちはお前を信じるよ。でも周りの言葉に惑わされるな」
兄上が僕の肩に手を乗せて真剣な眼差しをぶつけてきたから素直に首肯する。
「話はわかった。バージル。もし、またダリアナ嬢の夢を見たら教えてくれ」
「はい。そうします」
「バージルはもうさがっていいよ。アレク、父上の報告を頼む」
父上と兄上はお祖父様のご様態のお話をするらしく僕は一人で執務室を出た。
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