神様の料理番

柊 ハルト

文字の大きさ
25 / 150
ミルクの優しさ

02.5 ー スイスかフランスか

しおりを挟む

 誠との戯れは、今晩の相棒であるオスカーのノックによって中断された。
 アレクセイは今日ほど騎士団であることを、後悔したことはなかった。

「班長…顔、いつもより怖いっす」
「…そうか」
「アンタ公私混同するタイプじゃなかったじゃないですか」
「…そうだな」
「そんなに狼のツガイって、特別なモンなんですか?」
「…分からん。だが、俺の両親や親戚を見ていると、そうなのかもしれんな」

 アレクセイとオスカーは、夜の村周りを歩いていた。ところどころに弱いライトの魔法の球を浮かべ、光源を確保する。
 オスカーは、アレクセイの一年下の後輩だ。学生時代の後輩でもあるので、自分や狼獣人、そしてヴォルク家のことも何となく理解してくれている。それもあってか、オスカーは必要以上に自分を恐れない。
 アレクセイにとっては、やりやすい相手のうちの一人だった。

「ま、俺ら鷹獣人も基本的にはツガイは一人なんで、気持ちは分かるんですけどね。でも、ヴォルク家の血って厄介に見えるなぁ」

 腕を頭の後ろで組み、オスカーは軽い足取りで歩く。
 そう言えば、オスカーは番う相手は居るのだろうか。アレクセイは時折小さく動くオスカーの羽根を見ながら、そんなことを考えていた。
 仕事の話や相手の相談、軽口にも乗るが、アレクセイは自分から深い話をしたことがない。心を動かされる相手が見つからなかったので、ツガイに関しての話はもっとだ。
 そんな自分は、誠に愛想を尽かされないだろうか。
 アレクセイはここにきて、少し怖くなった。

「オスカー…」
「何です?」

 少し前を行くオスカーを呼ぶ。
 アレクセイは意を決して、オスカーに聞いた。

「俺は…マコトに相応しいのだろうか」
「…班長!?」

 驚いたオスカーは、足を止めてしまった。
 業務中に何の話をしているのだろうか。今までのアレクセイには、無かったことだ。それでも、アレクセイは聞いてみたかったのだ。

「あの…何か悪いもんでも食いました?」
「食べてないし、夕飯はお前達と同じ物を食べたはずだが」
「あー…ええ、そうですね。はー…恋はヒトを変えるのかー」

 オスカーが何やらモゴモゴ言っているが、アレクセイは答えを待っていた。

「あのですね…俺は何人か付き合ったことがあるけど、班長は初めてでしょ?」
「そうだな」
「それで、初めての恋で、浮かれている…と」
「そうだな」
「えーと…多分、誰でも悩むと思いますよ。自分が相手と釣り合うのか、とか。一緒に居て楽しんでくれてるのかとか、好きでいてくれてるのかな、とか」
「そうなのか」
「はい、そういうものかと。俺もいつも悩みますもん。でも、悩んでも仕方無いんですよね。だって、それって、お互いの相性じゃないですか」
「そうなのか」
「多分。相性と、あとは…お互いの努力だと思います。大切にしたいとか、喜ばせたいとか、そんなの。…俺の言うことが正解って訳でもないんですけど…偉そうに言って、すみません」
「いや、助かった。ありがとう」

 真摯に答えてくれたオスカーにアレクセイが礼を言うと、オスカーは固まってしまった。
 どうしたのかと目を細めると、オスカーは笑った。

「何か班長とこういう話するの初めてで、ちょっと新鮮っすね」
「確かにな。そして俺は、今日ほど自分がこうも面白みがない奴だと思ったことはない」
「そうっすか?真面目なだけだと思いますけど。でも、こんな班長が見れて、俺は楽しいです」
「そうか」
「はい」

 山の夜は街と比べ物にならないほど、暗い。
 夜空には溢れ落ちそうな数の星が瞬いていた。
 アレクセイはこの輝く星を、誠にも見せてやりたいと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星
BL
第二章スタート!:イブキと婚約をして溺愛の日々を送ろうとしていたブラッドフォード。だが、国の情勢は彼の平穏を許さず、王の花嫁選びが始まる。候補者が集まる中、偽の花嫁(♂)が紛れ込む。花嫁の狙いはイブキの聖獣使いの力で。眠りについた竜を復活させようとしていた。先の戦においての密約に陰謀。どうやらイブキの瞳の色にも謎があるようで……。旅路にて、彼の頭脳と策略が繰り広げられる。 第一章:異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...