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第四章 大精霊を求めて

4-7 みんな、お待ちかねのブツ

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「お、姐御やる気だね。そんな姐御と師匠にプレゼントだよ。
 まだ試食品なんだけどさ。
 特に高山にはこいつが無くっちゃね」

 そう言って取り出した物は、もちろん味噌だった。

 そう、例の鉱石をフォミオに渡したのでパワーアップして作ってくれた各種の味噌・たまり・醤油であった。

 これで高山名物の肉の朴葉焼きを楽しめるぜ。

 愛知県の半分は岐阜県とさして違わないくらい山が濃いので、この手の料理は地理的に近いのもあって非常に好まれる。

 伊達に、大いなる田舎とは呼ばれていないのだ。

 おそらく岐阜方面からは名古屋の学校を出ついでに、近所の大都会名古屋にそのまま就職で越してくる人も少なくないはずなので、その手の岐阜系の食い物は名古屋でも割と一般的なのではないだろうか。

 岐阜市あたりなんかだと名古屋へは完全に標準的な通勤圏内だ。
 名古屋から俺の実家西三河へ帰るのに比べたら時間も半分ほどで済むくらいだし。

 どっちも味噌が好まれる土地柄だしな。

 もっとも朴葉は日本特産の物なので、代用になる似たような葉を捜さないといけないがなあ。

 はたして見つかるだろうか、あれは独特な香りが肝心なのだ。
 似たような物でいいなら何かのオリジナルの葉でも悪くないのだが。

 勇者陽彩が故郷を懐かしみ、どうしても食べたがっているとか言って、師匠経由で王様を騙して探させたらどこかで見つかるかもしれん。

 いやもちろん陽彩だって喜んで食うのだろうが、どちらかというと年配の人が喜ぶ食い物だろう。

 高山生まれの師匠向けの逸品だな。
 あれは俺も大好物なんだけど。

「おお、ついに味噌が出来たのか」
「こんなに種類があるの?
 やけに早いわね」

 よくぞ聞いてくれました。
 俺はニヤリっと笑って自慢げに言ってやった。

「あっはっは、フォミオの奴がスキルを進化させて、スキル発酵を入手したからな。

 実は俺達の小屋の裏手に専用の味噌小屋まで作ってあるのさ。

 スキル発酵を使うと、短時間で完璧な発酵を行なえるので、発酵食品の試作なんかもあっという間に終えられるのさ。

 師匠、こいつの出来はあんたから見てどうなんだい」

 指ですくって味見して師匠も思わず叫んだ。
「でかした!」

 どうやら、師匠の舌に叶うだけの出来だったようで、俺も安堵した。

 出来には自信があったが、師匠は味には格別に煩いからな。

 そして俺が次に師匠に渡した物を見て、師匠はその厳つい顔を、どこのおっとりしたおっさんかと思うような感じに破顔させた。

「おお、いや日本人にはこれが無くっちゃなあ」

 師匠を狂喜させた、その物体を見て大喜びをする人が半数、そして微妙な顔をした奴が半数だった。

 さすがに嫌な顔をした奴はいない。
 そいつこそは日本人にとって、実に郷愁を誘う日本独特と言っていいような特別な食い物だったからだ。

「うーん、日本産発酵食品の代名詞、納豆かあ」

「いや和食には欠かせないのかもしれないけど、あたしは少し苦手なんだよね」

「納豆ってあんまり好きじゃないんだけど、この異世界なら頑張って食べてもいいかなあ」

「ええい貴様ら、愚かな事を。
 納豆こそ、我がソウルフード!」

「納豆巻!」

 うーん、勇者達も白熱しているな。

 俺も納豆は嫌いじゃないのだが、そいつばかりはちょっと微妙なメニューだな~。

 まあ食わないのなら、わざわざ納豆なんて作らせたりはしない訳なのだが、納豆巻は納豆食いにも微妙と言える代物だ。

 アメリカ人も寿司は好んで食うが、やはりこれを食うのは日本人か日系人だけらしいし、ここでも微妙な顔をされそうな食い物だ。

「とりあえず、これでアルファ米と味噌汁、豆腐に納豆まで揃ったね。

 後は海苔とシャケなんかの焼き魚や干物あたりが揃うと立派な日本の朝御飯だな~」

「こうなると、どうしても鰹節が欲しいな。
 やはり麺汁にはあれが欠かせん」

 各地の祭りの話題に加えて、味噌醤油などのお待ちかねだった日本調味料を迎えて、皆一気に郷愁感が爆発したようだ。

「鰹節と海苔は俺も欲しいんだよなあ。
 後は本物の米さえあれば。

 日本みたいに美味い米が無いだろうから、稲を発見できたらそういう物を作れるものか、地の大精霊ノームに相談かな。

 今度、暇を見て海まで海苔を探しに行くよ。
 水中活動用のスキルを持った魔核は既に入手してあるし。

 海の魔物は大きくて危険だから人任せにしたくないのが難点なのさ。

 海があるんだから、大概の海藻類はどこかに必ずあるはずなんだ。

 鰹も似たような魚で鰹節は作れない事はないんだろうが、あれは作る時に半端なく手間暇かかるからなあ。作

 れるかどうかはフォミオ次第かも」

 だが、それを聞いた国護師匠は力強く言い切った。

「鰹節ならば、この俺が作ってみせよう。
 一穂、さっさと鰹漁に行ってこい」

「え、師匠って高知県所縁の人でした? 
 そういや、うどんなんかも作っていたから四国関係なのかな」

「ふ。俺は飛騨高山出身だと言っただろう。
 以前にネットで見た作り方でなんとかするのだ。
 なせばなる」

 う、それは絶対に無理なんじゃないの。
 まあ、この人なら力業でやってしまいかねんが。

 あと、強引に魔法使いを扱き使うという荒業はあるよな。
 捻ったところでは錬金術で鰹節とか?

 調味液関連とかならそれも有りかもしれん。
 そういや、そっちの方面はマーリン師という超逸材がいたよな。

 方法に行き詰って困ったら、あの人に泣きつこうっと。
 その辺は、お愛想と金次第でなんとかなるし。
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