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しおりを挟む歯磨きをしている間、何故か自分のことを凝視してしまっていた。
あの時とは打って変わって、男らしくなったし、表情もあまり変化させない。無口になった。昔からの友人と話す時には素に戻ってしまうこともあるけど…
心の中ではいつも賑やかなんだけどなぁ…
「はぁ…」
いつからなんだろうか…高校のような気がするが、大切な記憶が抜けているような…
だけど辻褄の合わないようなことは今のところないし…
確実なのは『あの人』絡みであること。『あの人』の記憶だけは、鮮明に思い出すことが出来るのだ。
他の記憶はやんわりしてる。会話なんてほぼ覚えてないし…まぁそれはふつうのことかも?
のんびり支度をしていた俺は、とっくに遅刻の時間になっていることにも気づかなかった。
だだだだだだだだだっ
諸君!お分かりいただけただろうか!
俺は今全力疾走している。若いとはいえど大学生の男が。しかも、普段は運動していなさそうなインテリめがねが!!!←
もうすぐで教室だ!息を整えて…そうだな。悪びれず行こう。こんな見た目のやつが慌ててたって見苦しいだけだっ!
ガチャ…
シーン…………
大学の授業なので咎められることもあまりないけど…
この雰囲気…居にくい。
「黒宮くん。遅いおはようございます。教育実習に行く学校の書類があるので前に来なさい。」
クスクス…
公開処刑かよォおおおっ
「は、はい!」
そして学校の名前を見た瞬間、俺は走った疲れなんて吹き飛んで大絶叫した。
「いやぁぁぁっ!!!」
「ん?」
「ん?じゃないでしょ先生!俺、ここだけは嫌って言いましたよね?第10希望のどこにも入ってませんよね?てか5希望までの学校に行けない人は例年居ないとかいってましたよね???なんで!」
「遅刻した君に、文句が言えますか?」
「うぅ…」
「黒宮くん可愛すぎるぅうっ!」
「な、なんか雰囲気違うけどギャップ萌えやんね!」
後ろがザワザワしてるが関係ない!
そこで先生から衝撃の一言が
「そこの理事長直々に君に指名が来たんです。あそこの魔法学校は、ほかと比べ物にならない。出身者の君なら分かりますよね?」
「だからってぇ…!」
「黒宮くんは理事長と中々の仲良しのようですから直接文句を言いなさい。」
「仲良しって!?何言われたんですか!」
「寝顔が可愛い…とはおっしゃっていましたよ?」
ボソッと先生に呟かれたけど…あのやろぉおお!
「へ…変な意味じゃなくてっ!」
「注意事項など説明しないといけないので早く席に戻りなさい。」
「はい…」
ドボドボ席につこうとしていると、大学では仲の良い方な友人にこっちに来いよっと呼ばれてしまった。
「立翔。俺は今1人でいたいくらい落ち込ん…」
「馨の出身校ってことは俺ら学校同じやな!」
「はぁ…」
こいつは志野 立翔。明るく天真爛漫だがとりあえず人の話を聞かない。人懐っこくイケメンなので学校の人気者だ。
立翔はさらさらの栗色の髪が俺の顔に当たるくらい近くに寄ってきた。
「ちょ…ちか」
「馨と一緒になれたらいいなって思ってたんや!なんや不服そうやけど、天下の神宮寺学園やで?母校やから嫌なんかもしれんけど、敷地にすら入れないあの神宮寺学園やで??素直に喜び!」
「いや…嫌な理由があっ」
「なんかあっても俺が守るで、大丈夫や。」
「てか声でかすぎっ…」
むぎゅぅうううううっ
「ぐえっ」
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