双甲伝2-SOUKOUDEN2-

野口てんぐ

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第20章 決戦の兆し

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戦場の中心で、ポン・ミク・マメの三匹が立ちはだかり、村人たちも勇敢に声を上げ続けていた。
一度は押されかけた戦線が持ち直し、誰もが「このまま勝てるかもしれない」と希望を抱き始めたその時――。

「……戯れはここまでだ」

玄牙の低い声が響き渡った。
その瞬間、空気が一変する。
まるで大地そのものが牙を剥いたかのように、凍りつくような殺気が広がった。
ポンの背筋に冷たいものが走る。

「な、なんだ……?」
村人の一人が震える声を漏らした。

玄牙の全身の毛が逆立ち、体躯がさらに膨張する。
黒々とした筋肉が盛り上がり、爪は鋼のように輝いた。
その姿は、もはや獣を超えた怪物そのものだった。

「これが……玄牙の本当の力……!」
マメが矢を構えながら呟く。
だが、その手が震えていた。

同時に、月影もまた静かに槍を地面に突き立てた。
「夜白の影を超えるために……俺は禁じられた技を選んだ」
槍の先から黒い光が溢れ出し、地面を走る。
その闇はまるで生き物のように蠢き、敵味方を区別なく絡め取ろうとした。

「な、なんだこの力……!」
村人たちが次々と足を取られ、悲鳴を上げる。

「やめろッ!」
ミクが鉄棒で闇を払おうとするが、振るった鉄棒ごと力を吸い取られるかのように重く沈んだ。
「ちっ……厄介な術だな……!」

玄牙が吠える。
その咆哮だけで空気が揺らぎ、近くの村人が耳を押さえて倒れ込んだ。
「小僧ども……俺たちを甘く見すぎたな! これが我らの真の姿だ!」

圧倒的な力の前に、戦場の均衡は一瞬で崩れた。
村人たちは次々と膝をつき、誰もが絶望に飲まれかける。
マメも、矢をつがえながら息を荒げていた。
「くそっ……どうすれば……」

だが、その時。

「まだだ……!」
ポンが地面に踏みしめた足を震わせながら、甲羅を前に突き出した。
「どんなに強くても、俺たちは諦めない! 仲間を守るために戦うんだ!」

その声に、ミクも歯を食いしばりながら立ち上がる。
「そうだ……勝てるかどうかじゃねぇ。負けないって気持ちで立ち向かうんだ!」

そしてマメもまた、震える指で矢を引き絞った。
「俺たちは……一人じゃない! ここには仲間がいる! 村人たちがいる!
絶望なんかに、負けてたまるか!」

三匹の声が響くたびに、倒れかけた村人たちが再び顔を上げる。
闇に絡め取られた足を必死に引き抜き、丸太や石を握り直した。

「そうだ……俺たちはまだ戦える!」
「負けるもんか!」

小さな炎が、再び燃え広がっていく。

玄牙と月影はその様子を見て、同時に笑った。
「ほう……面白い」
「だが、その希望をここで潰す」

二人の気配はさらに膨れ上がり、夜空にまで届くかのようだった。
戦場全体が、まるで巨大な嵐の中心にいるかのように揺れ動く。

「来るぞ……!」
ポンが叫ぶ。
三匹と村人たちは必死に身構える。

玄牙と月影の奥の手が解き放たれようとしていた。
この戦いが、いよいよ最終局面へと突入する――。
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