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29話
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軽井沢の街中を軽快に走り、見覚えのある道を曲がると、鶴木聡の別荘が見えてきた。
「あっ‥あれだな‥」
別荘はあの時と変わらず、立派な佇まいの大きな屋根ですぐに分った。
近づくと庭にすでに2台の車が止まっていた。
汰久もその隣にポルシェを駐車すると、二人で荷物を下ろし玄関へと進む。
虎太郎は、そこから庭に目を向けウッドデッキを見ると、あの時、みんなで座り見上げた夜空を思い出した。
あの時は、楽しかった‥。
ふとそんな感情がよぎり、虎太郎は頭を振った。
「‥ん?どうかした?」
「‥いや‥なんでもない」
汰久に心を見透かされたような気がして、虎太郎は無理に笑顔を向ける。
インターホンを押すと、中からドアが開きみんなが出迎えてくれた。
「ああ!久しぶり~」
「お前ら元気だったか?」
「連絡もなしで、白状もん!」
「元気そうじゃん!」
4人ともが一斉に話し出し、なんと返事をしていいのか迷ってしまい、不思議とみんなで顔を見合せ笑い出す。
「クックッ‥お前ら、しゃべり過ぎだ!クスクスッ‥落ち着けよ」
「ハハハッ‥だな。まぁ、入れよ。積もる話もいっぱいあるからさ」
聡の言葉に、笑いながらリビングへ入っていくと、前回と全く変わらない風景がそこにはあった。
リビングには大きなソファとテーブルがあり、テーブルの上にはすでに豪華な料理が並び、リビングの薪ストーブは、すでに火が付き室内は温かくなっていた。
10月とはいえ日が暮れると軽井沢はもう寒い。
「お前ら、早かったな」
汰久の言葉に、みんなが顔を見合わせる。
「ああ、俺は鍵開けで蓮と一緒に早めに来たけど、慎之介と健一はさっき着いたばっかりだ。今回は買出しも料理も面倒だから、デリバリーを頼んだぜ、もう来てるから、乾杯しよーぜ!」
聡はそう言うと、用意してあるシャンパンクーラーからシャンパンを取り出し、栓を開ける。
ポンと音を立て開けられたシャンパンを、みんなのグラスへ注いでいく。
「では、みんなとの再会と、我らが蓮の結婚を祝って‥」
「かんぱ~い!!蓮、おめでとう!」
一斉に声を上げ、蓮の祝いの言葉を口にすると、照れながら蓮はありがとうとグラスを上げた。
シャンパンに口をつけ、みんなの顔を眺めていると、一気に自分が大学時代に戻った感覚になる。
みんなも同じ気持ちなのか、すぐに話し出し、数カ月のブランクも何も感じさせない。
話題の中心は蓮の結婚話で、どこで出会ったのか、どうやって付き合い始めたのかと、質問攻めになっていた。
その後は、みんなのそれぞれの近況報告。
みんな新入社員として頑張って仕事しているようで、悩みはほとんと同じだった。
それぞれの道で頑張っている様子に、虎太郎の胸がズキンと痛みを発する。
「ほんとに凄いよな~あの、新開美沙希だろ?羨ましいぞ!この野郎!」
飲み始めて1時間も経たないのに、すでに酔いが回っているのか、先程から同じ話を何度もしているのは、吉沢健一だ。
「はいはい、お前はもうジュースにしとけ」
そう言って健一のグラスをジュースに取り換えているのは、福岡に就職した慎之介だ。
「そうそう、汰久。お前、あの車で来たって事は、もう隠すの止めたのか‥?」
汰久にワインを注ぎながら、聡が小声で聞いているのが隣に座っている虎太郎にも聞こえてきた。
「あっ‥いや‥」
「‥なになに?汰久の隠し事~?ダメだよ、隠し事は、良くない‥早く白状しちゃいなさい!」
聞こえていたのか強引に会話に入ってくるのは、酔いの回っている健一。
「クスクスッ‥お前は飲み過ぎだぞ~」
笑いながらそう答えた汰久は、話題が逸れてほっとした顔をしていた。
「ところで、お前ら二人はよく会ってんの?」
聡が、汰久と虎太郎の顔を交互に見ながらそう聞いてくる。
「‥あっ‥うん。たまたま会社の取引先に、汰久がいて‥‥ホント驚いたんだよ」
虎太郎の言葉に、へぇ~と納得の顔をして頷いていた。
「虎太郎は、え~と、大島食品?の営業だっけ?」
「そ‥そう」
「大島食品って、大手だろ~やっぱ営業は大変?」
「う‥うん。まぁ大変と言えば大変かな‥。だけど、職場の人が皆いい人ばかりで、ちゃんと教育してくれるから、安心して仕事が出来るし、やりがいがあるよ」
話ながら、来栖と一緒に過ごした日々が頭の中に溢れてくる。
「そっか、いい職場みたいだな。お前がそんな笑顔になるなんて‥ふふっ‥」
聡にそう言われ、自分が笑みを浮かべている事に気が付き、ハッと横にいる汰久を見ると、汰久がスッと目を逸らした。
「そ‥そんなお前はどうなんだよ‥聡の方が大変だろ?後継者教育なんだから‥」
慌てて話題を変えるように、聡に話を向ける。
「いや~そうでもないよ。後継者って言ったって、父親はまだまだ元気だし、俺はまだ下っ端で、平社員。まずは会社に慣れろってさ。まぁ、俺の事は社長の息子だってバレてるから、気は使われているのかな‥ハハッ・・」
「そっか、まぁ気は使うだろうな‥」
虎太郎がそう返すと、聡がチラリと汰久を見た。
その視線に気が付いて、虎太郎も汰久に目を向けると、汰久は虎太郎を見てニコッと微笑んだ。
この笑顔は、何かを誤魔化そうとしている顔だ‥そんな事を考え虎太郎も笑みを返した。
「あっ‥あれだな‥」
別荘はあの時と変わらず、立派な佇まいの大きな屋根ですぐに分った。
近づくと庭にすでに2台の車が止まっていた。
汰久もその隣にポルシェを駐車すると、二人で荷物を下ろし玄関へと進む。
虎太郎は、そこから庭に目を向けウッドデッキを見ると、あの時、みんなで座り見上げた夜空を思い出した。
あの時は、楽しかった‥。
ふとそんな感情がよぎり、虎太郎は頭を振った。
「‥ん?どうかした?」
「‥いや‥なんでもない」
汰久に心を見透かされたような気がして、虎太郎は無理に笑顔を向ける。
インターホンを押すと、中からドアが開きみんなが出迎えてくれた。
「ああ!久しぶり~」
「お前ら元気だったか?」
「連絡もなしで、白状もん!」
「元気そうじゃん!」
4人ともが一斉に話し出し、なんと返事をしていいのか迷ってしまい、不思議とみんなで顔を見合せ笑い出す。
「クックッ‥お前ら、しゃべり過ぎだ!クスクスッ‥落ち着けよ」
「ハハハッ‥だな。まぁ、入れよ。積もる話もいっぱいあるからさ」
聡の言葉に、笑いながらリビングへ入っていくと、前回と全く変わらない風景がそこにはあった。
リビングには大きなソファとテーブルがあり、テーブルの上にはすでに豪華な料理が並び、リビングの薪ストーブは、すでに火が付き室内は温かくなっていた。
10月とはいえ日が暮れると軽井沢はもう寒い。
「お前ら、早かったな」
汰久の言葉に、みんなが顔を見合わせる。
「ああ、俺は鍵開けで蓮と一緒に早めに来たけど、慎之介と健一はさっき着いたばっかりだ。今回は買出しも料理も面倒だから、デリバリーを頼んだぜ、もう来てるから、乾杯しよーぜ!」
聡はそう言うと、用意してあるシャンパンクーラーからシャンパンを取り出し、栓を開ける。
ポンと音を立て開けられたシャンパンを、みんなのグラスへ注いでいく。
「では、みんなとの再会と、我らが蓮の結婚を祝って‥」
「かんぱ~い!!蓮、おめでとう!」
一斉に声を上げ、蓮の祝いの言葉を口にすると、照れながら蓮はありがとうとグラスを上げた。
シャンパンに口をつけ、みんなの顔を眺めていると、一気に自分が大学時代に戻った感覚になる。
みんなも同じ気持ちなのか、すぐに話し出し、数カ月のブランクも何も感じさせない。
話題の中心は蓮の結婚話で、どこで出会ったのか、どうやって付き合い始めたのかと、質問攻めになっていた。
その後は、みんなのそれぞれの近況報告。
みんな新入社員として頑張って仕事しているようで、悩みはほとんと同じだった。
それぞれの道で頑張っている様子に、虎太郎の胸がズキンと痛みを発する。
「ほんとに凄いよな~あの、新開美沙希だろ?羨ましいぞ!この野郎!」
飲み始めて1時間も経たないのに、すでに酔いが回っているのか、先程から同じ話を何度もしているのは、吉沢健一だ。
「はいはい、お前はもうジュースにしとけ」
そう言って健一のグラスをジュースに取り換えているのは、福岡に就職した慎之介だ。
「そうそう、汰久。お前、あの車で来たって事は、もう隠すの止めたのか‥?」
汰久にワインを注ぎながら、聡が小声で聞いているのが隣に座っている虎太郎にも聞こえてきた。
「あっ‥いや‥」
「‥なになに?汰久の隠し事~?ダメだよ、隠し事は、良くない‥早く白状しちゃいなさい!」
聞こえていたのか強引に会話に入ってくるのは、酔いの回っている健一。
「クスクスッ‥お前は飲み過ぎだぞ~」
笑いながらそう答えた汰久は、話題が逸れてほっとした顔をしていた。
「ところで、お前ら二人はよく会ってんの?」
聡が、汰久と虎太郎の顔を交互に見ながらそう聞いてくる。
「‥あっ‥うん。たまたま会社の取引先に、汰久がいて‥‥ホント驚いたんだよ」
虎太郎の言葉に、へぇ~と納得の顔をして頷いていた。
「虎太郎は、え~と、大島食品?の営業だっけ?」
「そ‥そう」
「大島食品って、大手だろ~やっぱ営業は大変?」
「う‥うん。まぁ大変と言えば大変かな‥。だけど、職場の人が皆いい人ばかりで、ちゃんと教育してくれるから、安心して仕事が出来るし、やりがいがあるよ」
話ながら、来栖と一緒に過ごした日々が頭の中に溢れてくる。
「そっか、いい職場みたいだな。お前がそんな笑顔になるなんて‥ふふっ‥」
聡にそう言われ、自分が笑みを浮かべている事に気が付き、ハッと横にいる汰久を見ると、汰久がスッと目を逸らした。
「そ‥そんなお前はどうなんだよ‥聡の方が大変だろ?後継者教育なんだから‥」
慌てて話題を変えるように、聡に話を向ける。
「いや~そうでもないよ。後継者って言ったって、父親はまだまだ元気だし、俺はまだ下っ端で、平社員。まずは会社に慣れろってさ。まぁ、俺の事は社長の息子だってバレてるから、気は使われているのかな‥ハハッ・・」
「そっか、まぁ気は使うだろうな‥」
虎太郎がそう返すと、聡がチラリと汰久を見た。
その視線に気が付いて、虎太郎も汰久に目を向けると、汰久は虎太郎を見てニコッと微笑んだ。
この笑顔は、何かを誤魔化そうとしている顔だ‥そんな事を考え虎太郎も笑みを返した。
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