49 / 58
49話
しおりを挟む
虎太郎が職場に復帰して1ヶ月が経とうとしていた。
すでに新しいマンションを見つけ、聡の部屋からの引っ越しも済んでおり、虎太郎の毎日の生活は安定していた。
仕事も順調に進んでおり、忙しく働いてもいた。
「若奈、受付に荷物が届いてるってさ」
内線の電話を受けた同僚からそう伝えられ、虎太郎は返事をすると、1階の受付へ出向いていく。
何か届く予定もなかったが、なんだろうと首を傾げ受付に声を掛けると、段ボールが一つ届いていた。
配送伝票をみて、虎太郎の息が一瞬止まった。
差出人の名前が『伊藤汰久』になっていたから。
虎太郎の新しい住所は知らない筈なので、ここに送ってきたのだろうか‥あれだけ決心をしたのに、中を開けるのが少しだけ怖かった。
そのまま段ボールを抱え、オフィスの隣にある会議室へと入る。
どうしても思い出される不安が、虎太郎の手を震えさせ、それでもゆっくりと段ボールを開けると、一番上に手紙が乗っていた。
封筒には『虎太郎へ』と書かれていた。
震える指でゆっくりと封を開け、中の手紙を取り出し広げて読み始める。
『虎太郎へ
お前は、俺を憎んでいるだろうな。俺は、お前と出会ってからずっとお前だけを見てきた。お前が誰かに微笑んだり、誰かと一緒にいたりするだけで、胸が苦しくなり許せなかった。今考えると、あの時の俺は狂っていた。頭の中では分かってたんだ、それがお前を傷付ける事だと、それでも俺は自分を止める事が出来なかった。今、お前を失ったのは、すべて自分のせいだと、お前を好きになってしまった自分が悪いのだと、そう思うようにした。だけど‥無理だ。俺にとって、お前と過ごした日々は、かけがえのない宝物だったから。だから、虎太郎‥あの楽しかった思い出だけは忘れないで‥友人として一緒に過ごした時間だけは‥どうか、思い出として残しておいて欲しい。今まで苦しめて、ごめんな。もう‥会う事はないけど、出会ってくれて、ありがとう。 汰久 』
読み終えると、虎太郎はその場に泣き崩れてしまった。
苦しい‥汰久の行いを許すことは出来ないけど、自分は、その気持ちに答えてあげられなかったけど、あの時、一緒に歩いたキャンパスには沢山の思い出が詰まっている。
だから忘れないよ‥汰久。
ごめんね。
こんな自分を好きになってくれて、ありがとう。
手紙を握り締めた手が小刻みに震え、溢れる涙が止まらない。
長い時間が経ち、ようやく涙が止まった時、握り締めた手紙が涙と汗でグチャグチャになっていた。
虎太郎は立ち上がると、段ボールの中を確認する。
中には、虎太郎が汰久のマンションに置いていた物が入っていた。
置きっぱなしだったパスポートや、他の書類に、よく着ていた服と、そして一番下に、あの時の来栖のアウターが入っていた。
あの時、ゴミ箱から回収して収納にしまっておいた物だ、本当だったら、捨てられても仕方がないのに、わざわざ送ってくれた事に、汰久の心の中の優しさが見えた気がした。
「‥汰久‥ごめんな‥ありがとう‥」
小さく呟いた言葉と一緒に笑いあったあの時の思い出が、汰久に届くようにと願った。
すでに新しいマンションを見つけ、聡の部屋からの引っ越しも済んでおり、虎太郎の毎日の生活は安定していた。
仕事も順調に進んでおり、忙しく働いてもいた。
「若奈、受付に荷物が届いてるってさ」
内線の電話を受けた同僚からそう伝えられ、虎太郎は返事をすると、1階の受付へ出向いていく。
何か届く予定もなかったが、なんだろうと首を傾げ受付に声を掛けると、段ボールが一つ届いていた。
配送伝票をみて、虎太郎の息が一瞬止まった。
差出人の名前が『伊藤汰久』になっていたから。
虎太郎の新しい住所は知らない筈なので、ここに送ってきたのだろうか‥あれだけ決心をしたのに、中を開けるのが少しだけ怖かった。
そのまま段ボールを抱え、オフィスの隣にある会議室へと入る。
どうしても思い出される不安が、虎太郎の手を震えさせ、それでもゆっくりと段ボールを開けると、一番上に手紙が乗っていた。
封筒には『虎太郎へ』と書かれていた。
震える指でゆっくりと封を開け、中の手紙を取り出し広げて読み始める。
『虎太郎へ
お前は、俺を憎んでいるだろうな。俺は、お前と出会ってからずっとお前だけを見てきた。お前が誰かに微笑んだり、誰かと一緒にいたりするだけで、胸が苦しくなり許せなかった。今考えると、あの時の俺は狂っていた。頭の中では分かってたんだ、それがお前を傷付ける事だと、それでも俺は自分を止める事が出来なかった。今、お前を失ったのは、すべて自分のせいだと、お前を好きになってしまった自分が悪いのだと、そう思うようにした。だけど‥無理だ。俺にとって、お前と過ごした日々は、かけがえのない宝物だったから。だから、虎太郎‥あの楽しかった思い出だけは忘れないで‥友人として一緒に過ごした時間だけは‥どうか、思い出として残しておいて欲しい。今まで苦しめて、ごめんな。もう‥会う事はないけど、出会ってくれて、ありがとう。 汰久 』
読み終えると、虎太郎はその場に泣き崩れてしまった。
苦しい‥汰久の行いを許すことは出来ないけど、自分は、その気持ちに答えてあげられなかったけど、あの時、一緒に歩いたキャンパスには沢山の思い出が詰まっている。
だから忘れないよ‥汰久。
ごめんね。
こんな自分を好きになってくれて、ありがとう。
手紙を握り締めた手が小刻みに震え、溢れる涙が止まらない。
長い時間が経ち、ようやく涙が止まった時、握り締めた手紙が涙と汗でグチャグチャになっていた。
虎太郎は立ち上がると、段ボールの中を確認する。
中には、虎太郎が汰久のマンションに置いていた物が入っていた。
置きっぱなしだったパスポートや、他の書類に、よく着ていた服と、そして一番下に、あの時の来栖のアウターが入っていた。
あの時、ゴミ箱から回収して収納にしまっておいた物だ、本当だったら、捨てられても仕方がないのに、わざわざ送ってくれた事に、汰久の心の中の優しさが見えた気がした。
「‥汰久‥ごめんな‥ありがとう‥」
小さく呟いた言葉と一緒に笑いあったあの時の思い出が、汰久に届くようにと願った。
0
あなたにおすすめの小説
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
発情薬
寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。
製薬会社で開発された、通称『発情薬』。
業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。
社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。
【完結】好きじゃないけど、付き合ってみる?
海野雫
BL
大学3年の直人(なおと)は、恋愛経験ゼロ。人付き合いは苦手ではないが、誰かを「好きになる」感情がよくわからない。付き合ってる友人たちを見ても、自分には縁のない話だと思っていた。
ある日、部活の後輩である健(けん)が「一緒にルームシェアしませんか?」と持ちかけてくる。引っ越しを考えていた直人は、悪くない条件にOKを出し、ふたりの同居生活が始まる。
快適すぎる日々。健は料理も掃除もできて、適度に距離を保ってくれる最高のルームメイト。
しかしある夜、健がポツリと呟く。
「……元カレ、まだ忘れられないんです」
「ねえ先輩。付き合ってみませんか?――“好きじゃなくてもいいから”」
からかわれていると思いながらも、冗談めかして了承してしまう直人。
それが、まさかの擬似恋人生活の始まりだった。
恋人ごっこなのに手をつないだり、映画を観に行ったり、肩を貸したり。
最初はただの遊びだったのに、直人はだんだん健が笑うと嬉しくて、泣くと苦しいと感じるようになっていく。
一方、健は「直人に本気になってはいけない」と自分に言い聞かせていたが、直人の優しさや真面目さに、次第に惹かれ始める。
擬似恋人から始まった関係は、本物の「好き」に変わるのか?
本気になったとき、ふたりはどう答えを出すのか――。
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~
結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】
愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。
──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──
長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。
番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。
どんな美人になっているんだろう。
だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。
──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。
──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!
──ごめんみんな、俺逃げる!
逃げる銀狐の行く末は……。
そして逃げる銀狐に竜は……。
白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる