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武官から文官へ⁉ 突然の転属命令
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「このまま十月騎士団に残り、文官騎士として団長付き秘書官を務めてみませんか?」
そんな内示を受けたのは、今日、突然のこと。
ひと月前から「客員」として招かれていた自分を世話してくれていた文官が訪ねて、こちらの意向を伺うように尋ねてきた。
だが……。
これはすでに決定が下されている転属命令なのだな、と即座に感じ取れたので、カノアは姿勢を正し、このトゥブアン皇国に十二ある騎士団のなかでもっとも高潔なる魂を持つ海軍騎士の七月騎士団の武官である矜持を存分に放つように、教本のように角度に寸分の狂いもなく一礼する。
そして、言ってしまった――。
「――謹んでお受けいたします」
と。
だが……ほんとうであれば、すこし考える時間が欲しかった。
ほんとうであれば、考える必要などなく、ただひと言、
――なぜ武官の俺が、文官に成り下がらなければならないんだッ!
こう言ってやりたかった。
言う?
いや、怒鳴り散らすように叫んでやりたかった!
だが、このトゥブアン皇国の頂点のひとりである「決断の長」――十月騎士団団長直々の要請だと前置きがあった以上、カノアの立場でどうして断ることができよう?
それに……。
これまで海軍騎士として腕を振ってきた七月騎士団、その最高位である団長がカノアを引き止めることもせずに、この十月騎士団に差し出したとするのであれば……。
あっさり見放された身で、見苦しく「捨てないで」と縋れとでも言うのか?
カノアは下げた顔の形相を見せぬよう、歯ぎしりしながらこの言葉を口から出さないようにするのが精いっぱいだった。
一礼を終え、姿勢を正すと、内示を告げに来た文官が酷く怯えたようすでカノアを見ながら青ざめている。
彼の目には辛うじて「心中お察しします」と突然の転属命令に同情を含んでいるようで、その一方では「自分に憤懣をぶつけられても……」とも含んでいる。
そうだろう――。
それくらいに目の前の文官を見やるカノアには怒気が孕み、心中で荒れ狂うよう「承服できぬッ」のひと言だけを煮えたぎらせた金色の目で彼を睨みつけているのだから。
――いったい、俺に何の落ち度があったっていうんだッ?
――俺は「左遷」の沙汰を受けるような真似をしたのかッ?
カノアは叫びたくて、叫びたくて、堪らない。
だが、どうにか耐えようと拳をぐっと握る。
それは相手に振り上げないのが不思議なくらいに震えて、簡単に力を解くこともできなかった。
それほどまでにカノアはいま、文官に成り下がる屈辱に耐えることができなかったが、自分は――声に出して返答してしまったのだ。
――謹んでお受けいたします、と。
言葉にしてしまった以上、心中でどれほど真逆の感情に荒れ狂っていても取り下げることはできない。
これは武官としての矜持と、カノア本人の矜持でもあった。
――さあ、お前が上官に持ち帰りたい言葉は発してやったぞ!
――それを伝えに、さっさと俺の前から失せろッ!
――あと三秒待ってやる。
――それ以上は手もとが狂ったって、知らないからな!
カノアが眼光だけで目の前の文官に通告すると、彼は正しく理解したようすでそそくさと部屋を後にしてしまう。
身体はほとんど逃げだす勢いだったというのに、扉を閉める際は音も立てずに丁寧に閉ざすとは。
さすがはトゥブアン皇国に十二ある騎士団のうち、文官の最高峰である十月騎士団所属のひとりというべきか。
カノアはどうでもいい感想を浮かべてみたが、カノアも武官としての矜持を保つのもここまでだった。
人目がなくなった瞬間にはもう、あまりの落胆に身を沈めるようにその場に座り込んでしまう。
「くそ……ッ」
カノアは両手で顔を覆い、そのまま深くうなだれた。
「俺が何をしたっていうんだよ……」
つぶやいた声が酷く重い。
□ □
薄茶色の髪はさほどの癖もなく、ゆったりと腰もとまで流れていた。
カノアは普段、それを緩めに編んだ三つ編みでまとめている。
容姿は端麗な美丈夫にも見えるし、秀麗な美形――美人にも見えるそれ。
けっして女性と見間違われるような背格好ではないが、目鼻立ちの線はどこか細く、武官として日々鍛えている身体もしなやかで優美だった。
だいたい、なよなよとした雰囲気は不似合いで、カノアからは微塵も感じられない。
言動からしてきっぱりとした性格をしている。
そして……。
――濃紺の生地を基調に仕立てられた軍装は、海軍騎士の七月騎士団の特色。
肩章は武官を表す見事な細工があって、肩から胸もとにかけて数本下がる飾り紐も七月騎士団特有の金糸で編みこまれた飾緒。
――歩けば目を惹く美貌のカノアは、現在二十七歳。
所属する騎士団は武官。
名称は海軍騎士の七月騎士団。
これはトゥブアン皇国に十二ある騎士団のうち、武官の騎士団では最高峰に当たり、島大陸を国土とする広告をつねに海洋域で護りつづけている誇り高き騎士団である。
カノアはそこで軍船団の旅団長を務めることもできる実力の持ち主で、同時に明晰な一面も持ち合わせているため、しばしば参謀職に就いて軍船団を支えている。
――その実績を見込まれたのだろう。
文官の頂点に立つ十月騎士団で、海洋を戦場とする――この場合は海戦ともいう――七月騎士団の「いろは」をレクチャーするため、ひと月前ほどから客員として招かれていたのがはじまりだ。
――トゥブアン皇国は、五年と平和がつづいたことがないからねぇ。
最初に客員として招かれたとき、顔を合わせた十月騎士団の上層部がそれとなく口にしたので、カノアもすぐに自分の立場を理解した。
――もしかすると……。
このトゥブアン皇国にふたたび戦禍が訪れようとしているのかもしれない。
そう読み取ることができたので、カノアは積極的に講談した。
すでに重々周知されているとはいえ、あらためて海軍騎士の七月騎士団が根拠地とする重要な軍港、そこに配されている軍船の種類、所属数、配属されている武官たちが日ごろどのような訓練をして、有事の際はどのような行動を取るのかを詳細に話し、準備の必要な気配があるのなら大げさには捉えず、すぐに大海令を下してほしいと説いた。
戦争というものは、一朝一夕で用意が整うわけではないのだ。
それに……。
――この国は六年前、大規模な海洋海戦を経験している。
このときも勝利こそ収めたが、それは「辛うじて」の結果で、七月騎士団は一度壊滅状態まで陥っている。
失われた軍船、武官の数は計り知れない。
生き残った者を指で数えたほうが早いほど、トゥブアン皇国を身を挺して護ってくれた命が悉く海の底へと沈んでしまった。
あれから六年――。
七月騎士団の常備常設は、あれから戻ったとは言い難い。
その年月の最中にも海洋海戦を経験せざるを得ない事態に遭遇している。
――トゥブアン皇国の国民性は、陽気で穏やかだというのに……。
ほんとうに平和だけに包まれて過ごす年月は、五年と持たない。
――世界地図を広げてみると。
トゥブアン皇国はちょうど、西の大陸、東の大陸、それらを大きく隔てている大海洋の中心……そのやや下側にぽつんと島大陸として位置している。
大陸としては孤立で小振りだが、長く一国制度を保ち、四方を海洋に囲まれているため資源は豊富、しかも広大な国土も数多の恩恵をもたらしてくれるので人々は何不自由なく、のんびりと暮らしている。
――その頂点に立つのは、唯一皇帝。
――あとはすべてが平等平民で、貴族階級や身分制度とは無縁。
一見はそうやって平和なのだが――。
有り余る資源を保有するため、世界の文化中心圏と称する西の大陸の諸国から国土、島大陸そのものを狙われ、もう何百年と侵略戦争を迎撃するそれが後を絶たない。
幸い、何があっても絶対防衛を努める海軍騎士の七月騎士団のおかげで、皇国は長き歴史のなかでただの一度も敵国に国土を踏ませたことがない。
そのため七月騎士団は、トゥブアン皇国においてもっとも重要な騎士団として確立している。
――その騎士団に所属し、武官を務めるのは「騎士」としてもっとも栄誉。
カノアは海軍騎士にひたすら憧れて、十五歳のときに少年兵を一人前に育てることを目的とする十二月騎士団に入団し、二年間の厳しい修練を修了。
以降は樹年近く、ずっとこの七月騎士団で奮励努力をつづけてきた。
当時はまだ若かったが、六年前の大海戦を生き残り、以降も勃発する海戦に向かって勝利に貢献し、このトゥブアン皇国の盾としてつねに海洋を見つめてきた。
――今回の客員として招かれた理由もそうだろう。
あと数年も経たずに新たな侵略戦争の恐れがあるから、経験と現場を熟知しているカノアが軍備を正しく揃える文官の「手伝い」をするために呼ばれた……その意識が強かったから、積極的にあらゆる知識を投じたのに――。
――その報いがこれか?
このまま正式に十月騎士団で、団長付き秘書官を務めてほしいだなんて……。
カノアの脳裏はふたたび怒りに煮えたぎる。
――十月騎士団に何を気に入られて、転属を望まれたのだろう?
――七月騎士団は何が気に食わなくて、カノアをあっさり手離したのだろう?
実戦も、経験も、知識もある。
まだまだ前線で充分に奉職できる年齢だというのに、なぜ……ッ?
カノアの性格はけっして温厚ばかりではないが、誰の目から見ても落ち度などない。――なのに、
「その気高き海軍騎士の武官が、陸で書類を抱える文官になれなんて……」
カノアは耐えきれず、ぎゅっと目を閉じてしまう。
軍船と砲弾。
海戦特有の剣技。
美しい大海原、波の音、海の匂い……。
こればかりを身体に染みこませて生きてきたというのに、それと別れ、この先どう生きろというのだろう?
――カノアは今日、そのすべてを一瞬で打ち砕かれてしまった。
そんな内示を受けたのは、今日、突然のこと。
ひと月前から「客員」として招かれていた自分を世話してくれていた文官が訪ねて、こちらの意向を伺うように尋ねてきた。
だが……。
これはすでに決定が下されている転属命令なのだな、と即座に感じ取れたので、カノアは姿勢を正し、このトゥブアン皇国に十二ある騎士団のなかでもっとも高潔なる魂を持つ海軍騎士の七月騎士団の武官である矜持を存分に放つように、教本のように角度に寸分の狂いもなく一礼する。
そして、言ってしまった――。
「――謹んでお受けいたします」
と。
だが……ほんとうであれば、すこし考える時間が欲しかった。
ほんとうであれば、考える必要などなく、ただひと言、
――なぜ武官の俺が、文官に成り下がらなければならないんだッ!
こう言ってやりたかった。
言う?
いや、怒鳴り散らすように叫んでやりたかった!
だが、このトゥブアン皇国の頂点のひとりである「決断の長」――十月騎士団団長直々の要請だと前置きがあった以上、カノアの立場でどうして断ることができよう?
それに……。
これまで海軍騎士として腕を振ってきた七月騎士団、その最高位である団長がカノアを引き止めることもせずに、この十月騎士団に差し出したとするのであれば……。
あっさり見放された身で、見苦しく「捨てないで」と縋れとでも言うのか?
カノアは下げた顔の形相を見せぬよう、歯ぎしりしながらこの言葉を口から出さないようにするのが精いっぱいだった。
一礼を終え、姿勢を正すと、内示を告げに来た文官が酷く怯えたようすでカノアを見ながら青ざめている。
彼の目には辛うじて「心中お察しします」と突然の転属命令に同情を含んでいるようで、その一方では「自分に憤懣をぶつけられても……」とも含んでいる。
そうだろう――。
それくらいに目の前の文官を見やるカノアには怒気が孕み、心中で荒れ狂うよう「承服できぬッ」のひと言だけを煮えたぎらせた金色の目で彼を睨みつけているのだから。
――いったい、俺に何の落ち度があったっていうんだッ?
――俺は「左遷」の沙汰を受けるような真似をしたのかッ?
カノアは叫びたくて、叫びたくて、堪らない。
だが、どうにか耐えようと拳をぐっと握る。
それは相手に振り上げないのが不思議なくらいに震えて、簡単に力を解くこともできなかった。
それほどまでにカノアはいま、文官に成り下がる屈辱に耐えることができなかったが、自分は――声に出して返答してしまったのだ。
――謹んでお受けいたします、と。
言葉にしてしまった以上、心中でどれほど真逆の感情に荒れ狂っていても取り下げることはできない。
これは武官としての矜持と、カノア本人の矜持でもあった。
――さあ、お前が上官に持ち帰りたい言葉は発してやったぞ!
――それを伝えに、さっさと俺の前から失せろッ!
――あと三秒待ってやる。
――それ以上は手もとが狂ったって、知らないからな!
カノアが眼光だけで目の前の文官に通告すると、彼は正しく理解したようすでそそくさと部屋を後にしてしまう。
身体はほとんど逃げだす勢いだったというのに、扉を閉める際は音も立てずに丁寧に閉ざすとは。
さすがはトゥブアン皇国に十二ある騎士団のうち、文官の最高峰である十月騎士団所属のひとりというべきか。
カノアはどうでもいい感想を浮かべてみたが、カノアも武官としての矜持を保つのもここまでだった。
人目がなくなった瞬間にはもう、あまりの落胆に身を沈めるようにその場に座り込んでしまう。
「くそ……ッ」
カノアは両手で顔を覆い、そのまま深くうなだれた。
「俺が何をしたっていうんだよ……」
つぶやいた声が酷く重い。
□ □
薄茶色の髪はさほどの癖もなく、ゆったりと腰もとまで流れていた。
カノアは普段、それを緩めに編んだ三つ編みでまとめている。
容姿は端麗な美丈夫にも見えるし、秀麗な美形――美人にも見えるそれ。
けっして女性と見間違われるような背格好ではないが、目鼻立ちの線はどこか細く、武官として日々鍛えている身体もしなやかで優美だった。
だいたい、なよなよとした雰囲気は不似合いで、カノアからは微塵も感じられない。
言動からしてきっぱりとした性格をしている。
そして……。
――濃紺の生地を基調に仕立てられた軍装は、海軍騎士の七月騎士団の特色。
肩章は武官を表す見事な細工があって、肩から胸もとにかけて数本下がる飾り紐も七月騎士団特有の金糸で編みこまれた飾緒。
――歩けば目を惹く美貌のカノアは、現在二十七歳。
所属する騎士団は武官。
名称は海軍騎士の七月騎士団。
これはトゥブアン皇国に十二ある騎士団のうち、武官の騎士団では最高峰に当たり、島大陸を国土とする広告をつねに海洋域で護りつづけている誇り高き騎士団である。
カノアはそこで軍船団の旅団長を務めることもできる実力の持ち主で、同時に明晰な一面も持ち合わせているため、しばしば参謀職に就いて軍船団を支えている。
――その実績を見込まれたのだろう。
文官の頂点に立つ十月騎士団で、海洋を戦場とする――この場合は海戦ともいう――七月騎士団の「いろは」をレクチャーするため、ひと月前ほどから客員として招かれていたのがはじまりだ。
――トゥブアン皇国は、五年と平和がつづいたことがないからねぇ。
最初に客員として招かれたとき、顔を合わせた十月騎士団の上層部がそれとなく口にしたので、カノアもすぐに自分の立場を理解した。
――もしかすると……。
このトゥブアン皇国にふたたび戦禍が訪れようとしているのかもしれない。
そう読み取ることができたので、カノアは積極的に講談した。
すでに重々周知されているとはいえ、あらためて海軍騎士の七月騎士団が根拠地とする重要な軍港、そこに配されている軍船の種類、所属数、配属されている武官たちが日ごろどのような訓練をして、有事の際はどのような行動を取るのかを詳細に話し、準備の必要な気配があるのなら大げさには捉えず、すぐに大海令を下してほしいと説いた。
戦争というものは、一朝一夕で用意が整うわけではないのだ。
それに……。
――この国は六年前、大規模な海洋海戦を経験している。
このときも勝利こそ収めたが、それは「辛うじて」の結果で、七月騎士団は一度壊滅状態まで陥っている。
失われた軍船、武官の数は計り知れない。
生き残った者を指で数えたほうが早いほど、トゥブアン皇国を身を挺して護ってくれた命が悉く海の底へと沈んでしまった。
あれから六年――。
七月騎士団の常備常設は、あれから戻ったとは言い難い。
その年月の最中にも海洋海戦を経験せざるを得ない事態に遭遇している。
――トゥブアン皇国の国民性は、陽気で穏やかだというのに……。
ほんとうに平和だけに包まれて過ごす年月は、五年と持たない。
――世界地図を広げてみると。
トゥブアン皇国はちょうど、西の大陸、東の大陸、それらを大きく隔てている大海洋の中心……そのやや下側にぽつんと島大陸として位置している。
大陸としては孤立で小振りだが、長く一国制度を保ち、四方を海洋に囲まれているため資源は豊富、しかも広大な国土も数多の恩恵をもたらしてくれるので人々は何不自由なく、のんびりと暮らしている。
――その頂点に立つのは、唯一皇帝。
――あとはすべてが平等平民で、貴族階級や身分制度とは無縁。
一見はそうやって平和なのだが――。
有り余る資源を保有するため、世界の文化中心圏と称する西の大陸の諸国から国土、島大陸そのものを狙われ、もう何百年と侵略戦争を迎撃するそれが後を絶たない。
幸い、何があっても絶対防衛を努める海軍騎士の七月騎士団のおかげで、皇国は長き歴史のなかでただの一度も敵国に国土を踏ませたことがない。
そのため七月騎士団は、トゥブアン皇国においてもっとも重要な騎士団として確立している。
――その騎士団に所属し、武官を務めるのは「騎士」としてもっとも栄誉。
カノアは海軍騎士にひたすら憧れて、十五歳のときに少年兵を一人前に育てることを目的とする十二月騎士団に入団し、二年間の厳しい修練を修了。
以降は樹年近く、ずっとこの七月騎士団で奮励努力をつづけてきた。
当時はまだ若かったが、六年前の大海戦を生き残り、以降も勃発する海戦に向かって勝利に貢献し、このトゥブアン皇国の盾としてつねに海洋を見つめてきた。
――今回の客員として招かれた理由もそうだろう。
あと数年も経たずに新たな侵略戦争の恐れがあるから、経験と現場を熟知しているカノアが軍備を正しく揃える文官の「手伝い」をするために呼ばれた……その意識が強かったから、積極的にあらゆる知識を投じたのに――。
――その報いがこれか?
このまま正式に十月騎士団で、団長付き秘書官を務めてほしいだなんて……。
カノアの脳裏はふたたび怒りに煮えたぎる。
――十月騎士団に何を気に入られて、転属を望まれたのだろう?
――七月騎士団は何が気に食わなくて、カノアをあっさり手離したのだろう?
実戦も、経験も、知識もある。
まだまだ前線で充分に奉職できる年齢だというのに、なぜ……ッ?
カノアの性格はけっして温厚ばかりではないが、誰の目から見ても落ち度などない。――なのに、
「その気高き海軍騎士の武官が、陸で書類を抱える文官になれなんて……」
カノアは耐えきれず、ぎゅっと目を閉じてしまう。
軍船と砲弾。
海戦特有の剣技。
美しい大海原、波の音、海の匂い……。
こればかりを身体に染みこませて生きてきたというのに、それと別れ、この先どう生きろというのだろう?
――カノアは今日、そのすべてを一瞬で打ち砕かれてしまった。
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