42 / 67
第2章 姫
42話 魔操石
しおりを挟む
もう少し、もう少しでこちらを見て居た奴の所につく。
遠くでこそこそ監視をしているなどどう考えても怪しい。強引に連れてくることが出来なくても、話くらいはするべきだろう。
「誰だ!」
小高い丘を越えて、木の上に向かって問いかける。
しかし、返事はない。
返事の代わりとして、大きな土の塊と、一個の真っ黒い手のひら位の石が落ちてきた。
俺はそれをキャッチする。
「なんだこれは?」
禍々しい黒い石。正直長い間見つめていたい物ではない。それに、こうやって見つめていても何かが見つかる訳ではない。ただ何かの手がかりになればいいと考えて、一応持って帰ることに決めた。
周辺もチラリと探してみたが、何か役に立ちそうな物もなかった。
「戻ろう」
俺はロネカ姫一行の元に帰った。
「戻った」
「何処に行っていたのだ?」
俺が戻ると、ウテナの腕の中でロネ姫がすやすやと眠っている。その寝顔は年相応といった感じで、守ってあげたい。そういう欲求が湧いてくるのを感じる。
「黒幕の様なやつがいたところに行っていた」
「黒幕?」
「どういうことですか?」
ウテナとメイドの一人が聞いてくる。もう一人のメイドは馬車の中に戻っている様だ。
「かなり離れたところから俺達を見ていた奴がいたんだ。そいつがこれを落としていった」
「これは!」
「まさか……」
「知っているのか?」
「ああ、これは魔操石(まそうせき)。帝都の闘技場でも魔物同士が戦っているだろう? そいつらを戦わせるために使っている時の物だ」
「これが……ただの魔石じゃないのか?」
アイシャは魔石としか言っていなかったけど。
「こちらでは一応分けていることがほとんどですね。魔石と魔操石」
「なるほど」
「この魔操石ですが、相当な大きさです。しかもかなりの質が良い物ですので、簡単には手に入るようなものでもありません。しかし、そういったものは普通は厳重に管理されているはずです」
「それがなぜここに?」
「分かりません。正直それを突き止めるには一度帝都に帰らなければ……」
「しかし、これは公務で来ている。そう簡単に帰る訳には行かん」
「これだけ被害が出ているのにか?」
普通なら城に戻るのが当然というように思う。
「皇族の護衛は城からは最低限しか出してくれない。それは手駒は自分で集めろ。暗に言っているのだ。そして、国内での自分の身も守れ無い者に生きている価値はない。部下も集めつつ公務もこなす。それがこの国の皇族のルールだ」
「厳しいんだな……」
そこまでだとは思っていなかった。
「皇族は人々の上に立つ。実力主義を掲げておいて、その程度も出来ぬのでは許されない」
「分かった」
「ただ襲撃をされたのだ。少しくらいの遅れは許される。だから、その間の護衛はセレット。頼んでもいいだろうか?」
「何を言ってるんだ。俺は最初から言っていただろう? ちゃんと護衛の仕事はすると。だから任せろ。ネズミ一匹入れない様にしてやるよ」
「頼んだ」
「この魔操石はこのまま持っていても問題ないのか?」
「ああ、ちゃんとした魔力を使って操るようにしないと出来ないはずだ」
「それも、こっちの方とか、割とざっくりとしたことしか指示できません。それだけ大きなものになるとかなりの魔力が必要になるかと」
「詳しいな」
「グリードベアを操ってたのは私ですから」
そう言ってメイドはポケットから小さな魔操石を取り出す。
「お前……」
「あなた……」
「その非難は甘んじて受けます。ですから、姫様にだけは何もしないで頂けないでしょうか」
メイドはそう言って頭を下げる。
「何を言う。その話は終わって……」
「終わっていません。実際に多くの人々が傷つき、倒れているのです。その責任は取らなければなりません」
「それは……」
「その必要はありませんよ」
そう言って出てきたのはオリーブさんだった。
******
「どうしてでしょうか?」
メイドは頭を下げたままそう問い返す。
「お話は聞いていました。我々が勝てるような相手を選んだと。しかし、これだけ被害が出たのはウォータードラゴンのせいであり、グリードベアのせいではない。そして、グリードベア程度にやられる我ら護衛団ではあってはいけないのです。だから、貴方がたのせいではない。弱かった我々のせいなのです」
「オリーブさん……」
「オリーブ……」
「だから貴方がたのせいでは断じてありません。護衛団と称して守り切れない。そんなことは仕事を果たしていないのと同義です。それが例え雇い主から仕向けられた以上は全うする。それが護衛というものです」
「しかし……」
「これ以上我々に言わせないでください。お願いします……」
オリーブは辛いだろうに、そう言って頭を下げる。
「畏まりました」
メイドもそう言って了承し顔をあげる。その顔は納得がいっていないようだった。
「良かった。それでは、私はもう少し休ませてただ来ますね」
「はい」
オリーブさんはそう言って帰っていき、自分で地面に横たわった。
「強いな」
俺の口からはそんな言葉が出ていた。
「ああ、強い。誰もが強くあろうとする。それがこの国のいい所なんだ。うかうかしていられない」
「そうか……。それでこれからどうする? 数日はここで休憩か?」
「ここで休憩と言うか、皆のものを治療しなくては。幸い死者がいなかったのが救いだ」
「あんな魔物相手にすごいよ」
「恐らく多くを倒すために威力を分散させていたのだろうが、そのお陰だな」
「このまま無事で帰れるといいんだが……」
「それは問題ない」
「?」
俺は彼女の顔を見るが、そこには心配した様子は一切ない。
「当然だろう? 龍騎士様が守ってくれるんだからな」
「はは、そうだな。大舟に乗った気持ちでいてくれ」
「そうする」
夜になった時、ある人物が俺の所に来る。
遠くでこそこそ監視をしているなどどう考えても怪しい。強引に連れてくることが出来なくても、話くらいはするべきだろう。
「誰だ!」
小高い丘を越えて、木の上に向かって問いかける。
しかし、返事はない。
返事の代わりとして、大きな土の塊と、一個の真っ黒い手のひら位の石が落ちてきた。
俺はそれをキャッチする。
「なんだこれは?」
禍々しい黒い石。正直長い間見つめていたい物ではない。それに、こうやって見つめていても何かが見つかる訳ではない。ただ何かの手がかりになればいいと考えて、一応持って帰ることに決めた。
周辺もチラリと探してみたが、何か役に立ちそうな物もなかった。
「戻ろう」
俺はロネカ姫一行の元に帰った。
「戻った」
「何処に行っていたのだ?」
俺が戻ると、ウテナの腕の中でロネ姫がすやすやと眠っている。その寝顔は年相応といった感じで、守ってあげたい。そういう欲求が湧いてくるのを感じる。
「黒幕の様なやつがいたところに行っていた」
「黒幕?」
「どういうことですか?」
ウテナとメイドの一人が聞いてくる。もう一人のメイドは馬車の中に戻っている様だ。
「かなり離れたところから俺達を見ていた奴がいたんだ。そいつがこれを落としていった」
「これは!」
「まさか……」
「知っているのか?」
「ああ、これは魔操石(まそうせき)。帝都の闘技場でも魔物同士が戦っているだろう? そいつらを戦わせるために使っている時の物だ」
「これが……ただの魔石じゃないのか?」
アイシャは魔石としか言っていなかったけど。
「こちらでは一応分けていることがほとんどですね。魔石と魔操石」
「なるほど」
「この魔操石ですが、相当な大きさです。しかもかなりの質が良い物ですので、簡単には手に入るようなものでもありません。しかし、そういったものは普通は厳重に管理されているはずです」
「それがなぜここに?」
「分かりません。正直それを突き止めるには一度帝都に帰らなければ……」
「しかし、これは公務で来ている。そう簡単に帰る訳には行かん」
「これだけ被害が出ているのにか?」
普通なら城に戻るのが当然というように思う。
「皇族の護衛は城からは最低限しか出してくれない。それは手駒は自分で集めろ。暗に言っているのだ。そして、国内での自分の身も守れ無い者に生きている価値はない。部下も集めつつ公務もこなす。それがこの国の皇族のルールだ」
「厳しいんだな……」
そこまでだとは思っていなかった。
「皇族は人々の上に立つ。実力主義を掲げておいて、その程度も出来ぬのでは許されない」
「分かった」
「ただ襲撃をされたのだ。少しくらいの遅れは許される。だから、その間の護衛はセレット。頼んでもいいだろうか?」
「何を言ってるんだ。俺は最初から言っていただろう? ちゃんと護衛の仕事はすると。だから任せろ。ネズミ一匹入れない様にしてやるよ」
「頼んだ」
「この魔操石はこのまま持っていても問題ないのか?」
「ああ、ちゃんとした魔力を使って操るようにしないと出来ないはずだ」
「それも、こっちの方とか、割とざっくりとしたことしか指示できません。それだけ大きなものになるとかなりの魔力が必要になるかと」
「詳しいな」
「グリードベアを操ってたのは私ですから」
そう言ってメイドはポケットから小さな魔操石を取り出す。
「お前……」
「あなた……」
「その非難は甘んじて受けます。ですから、姫様にだけは何もしないで頂けないでしょうか」
メイドはそう言って頭を下げる。
「何を言う。その話は終わって……」
「終わっていません。実際に多くの人々が傷つき、倒れているのです。その責任は取らなければなりません」
「それは……」
「その必要はありませんよ」
そう言って出てきたのはオリーブさんだった。
******
「どうしてでしょうか?」
メイドは頭を下げたままそう問い返す。
「お話は聞いていました。我々が勝てるような相手を選んだと。しかし、これだけ被害が出たのはウォータードラゴンのせいであり、グリードベアのせいではない。そして、グリードベア程度にやられる我ら護衛団ではあってはいけないのです。だから、貴方がたのせいではない。弱かった我々のせいなのです」
「オリーブさん……」
「オリーブ……」
「だから貴方がたのせいでは断じてありません。護衛団と称して守り切れない。そんなことは仕事を果たしていないのと同義です。それが例え雇い主から仕向けられた以上は全うする。それが護衛というものです」
「しかし……」
「これ以上我々に言わせないでください。お願いします……」
オリーブは辛いだろうに、そう言って頭を下げる。
「畏まりました」
メイドもそう言って了承し顔をあげる。その顔は納得がいっていないようだった。
「良かった。それでは、私はもう少し休ませてただ来ますね」
「はい」
オリーブさんはそう言って帰っていき、自分で地面に横たわった。
「強いな」
俺の口からはそんな言葉が出ていた。
「ああ、強い。誰もが強くあろうとする。それがこの国のいい所なんだ。うかうかしていられない」
「そうか……。それでこれからどうする? 数日はここで休憩か?」
「ここで休憩と言うか、皆のものを治療しなくては。幸い死者がいなかったのが救いだ」
「あんな魔物相手にすごいよ」
「恐らく多くを倒すために威力を分散させていたのだろうが、そのお陰だな」
「このまま無事で帰れるといいんだが……」
「それは問題ない」
「?」
俺は彼女の顔を見るが、そこには心配した様子は一切ない。
「当然だろう? 龍騎士様が守ってくれるんだからな」
「はは、そうだな。大舟に乗った気持ちでいてくれ」
「そうする」
夜になった時、ある人物が俺の所に来る。
1
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる