レオンライト叙事詩 〜異世界ガチで冒険した結果〜

加納ウノ

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第一話 転生完了

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「命を守る」
これが小学校の作文で書いた俺の黒歴史。
このぐらいの年頃はヒーローだのヒロインだのに強く憧れを抱く時期であり、俺ものそのひとりだった。
とはいえ小学五年生にもなってそんなことを言う奴はほぼいない訳で、そんなことともつゆ知らない俺は全クラスの前で

笑われた、、、

純粋な少年の夢が無惨にも砕かれた瞬間である。


そんなこんなで立派?に大人になった訳だが、心の底では憧れを抱いていたのか、はたまた笑った奴らへの反発か、そんなのがあったからこそ消防士という職に就けたのかもしれない。

妥協の連続で生きてきた者にとって憧れだの夢だの目標だのというものは遥か彼方のお話なのだ、、、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


死に際。もちろん覚悟はしてた。煙火の中に入って人を助ける最前線。いつ死ぬともわからないのがこの職業だ。わかってる。もう助からない。動けないのだ。目はぼやけて、肺はおそらく焼け爛れている。でも命は救えた。守れた。最後に運び出した人も、もう助かった頃だろう。これでいい。これでいい。


ブツンッ


何も感じない、、、
暗いのかも、明るいのかも。
これが死ぬということなのか、、、

「、、、」



「、、、」

何か聞こえる。声か?誰かいるのか?

「魂よ、、、」

ずいぶんと優しい声だ。

「善良なる魂よ、、、」

俺のこと、、、だよな?たぶん、、、。

「何を望む、、、」

望み?ちょっと待て、あんたは誰だ?此処はあの世?なのか?

「何を望む、、、」

、、、聞こえないのか?
望みって言ったって、俺はもう、、、たぶん死んでるんだから、何を望もうと無駄だろ?

「何を望む、、、」

、、、望み、、、
そうだ、俺が昔からずっと叶えたかった夢。
妥協の果てに消えかけていた夢。
ずっと無意識に叶えようとしていた夢。

「、、、、、、、、、、、、」


「、、、良かろう、叶えてみせよ、、、」

見えないはずの視界に閃光が走る、、、、、、、、、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


、、、!空、、、空だ!なんだ?視界がぼやける、、、そうだ確か俺死んだはず、、、ってか、、、
なんで俺、、、飛んでるの?

ウォォォォォ!!!!!

⁉︎下で何か動いてる?あれは、、、!人だ!それも100や200なんてもんじゃない!それと、、、なんだろうあの黒い軍団?敵なのか?もしかしてこいつら、、、ここで戦うのか?

、、、なんとなくわかってきた。たぶん今俺は体がないんだ。霊体って奴だな。そんで、死んだはずの俺が見たこともない世界のお空にいる。つまり、、、異世界転生ってやつか?いや、生きてはないから転生じゃないのか?ってか普通アニメだと異世界に飛ばされるなら体もつけてくれるのが定石だろ!、、、いや今はそんなことにツッコミ入れてる場合じゃない。まずは体を探さないと、、、ってかこれ序盤から詰んでない?

ドゴォォォォ!!!!!

戦いが始まったみたいだ。

、、、さてと、それはそれとしてこれからおれはどうすればいいのか。天の声も聞こえてこないし、もしかして体も自分で探せということか?例えば死んですぐの人なら入れるとか。もしかして、、、だからこの戦場に下ろしたのか?、、、
考えても仕方ない。とりあえずやってみるか!

なんとか地上付近に降りることができた俺はなんとなくその戦場を眺めていた。そして気づいたこいつらが戦っているのは人ではない。相手は魔物だったゴブリンやトロールみたいな見た目の魔物が森の奥からどんどん出てくる。そいつら目掛けて人間軍は後方から魔法のようなもので相手を殲滅していく。初めて見たファンタジーっぽいものを目の当たりにして俺は感極まっていた。

ん?

一人の少年が目についた。
兜の隙間から見える赤毛の髪。170くらいの身長だろう。しかしこの世界の人間の平均身長は、見たところかなり高い(180ぐらい)。そのせいで周りからは頭ひとつ小さいという感じだ。しかしその戦いは周りと大差ないほど奮闘している。だが体格のせいもあるのだろう、はっきり言って押し負けている。

その少年の必死に戦う姿に俺は目が離せなかった。どこか自分のなれなかった姿を見ているような気持ちになった、、、

ガキン!!!!!

ズバッ!!!!!

あっ!

少年の左肩から鮮血が噴き出す。その直後彼は力なく崩れ落ちた。

だが、少年は諦めなかった自分に剣を振り下ろした敵目掛け自分の剣を突き立て、その切先は相手の喉元を捉えた。

圧巻だった。その瞬間はまるで時が止まったみたいで、確実にその少年が最も輝いていた。
少年を死なせてはいけない!その一心で俺は体の中へ入った。いや、入れた。自分でもどうやったのかわからない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

また暗いところへ出た。奥には弱々しい光。おそらくあれはこの少年の魂なのだろう。今にも消えそうなその光に向かって声をかけた。

「聞こえるかい?」

「、、、うっ、、、だ、誰?」

「君は死んじゃいけない。君のような強い人間は、こんなところで死んじゃいけないんだ!」

「、、、強くないよ僕は、、、生きる自信がないのさ、、、それだけの技能もないし、力も無い。

、、、憧れていた兵団に入れたものの僕は戦力外だった、、、

、、、生まれた時から孤児だった僕の寿命はこの日までだったのかもしれない、、、」

「、、、いや、君は強い。憧れているものになること、なろうとすること自体、出来ない人がほとんどだと思う。
でも君はそれが出来た、、、それだけで十分立派で凄いことだと思う。」

「、、、ありがとう、、、」

「、、、君は?神様か、何か?、、、」

「、、、わからない、、、わからないんだ、何も、、、自分がどうなっているのかも、、、」

「、、、僕の妄想じゃなければ、、、君はもしかしたらスピリチュアルボディなのかも、、、」

「⁉︎」

「、、、うん、、、しかもかなり純粋なね。わかるんだ、魔物の図鑑で読んだことある、、、から、、、体を探してるんだろ?、、、」

確かに、依代的なものは探していたが、、、

「、、、ならさ、、、僕の体貰ってくれない、、、かな、、、」

「、、、えっ⁉︎」

「もうすぐ僕は逝くからこの体は空っぽになる。もちろん死ぬぐらいの損傷があるから、君が無事生きられるかは保証できないけど、、、君は僕を強い人間と言ってくれた、、、とても嬉しかったんだ、、、」

「、、、」

「だから僕の体使ってはくれないかな?」

「、、、、、、本気なのか?、、、」

「うん、、、それに、アンデットになるのも嫌だからね。」

笑った気がした。その言葉を残して、、、

「わかった、、、君の名前は?」

「僕は、レオン、、、君に捧げた者の名だ。」

「わかった、、、レオン、、、君のことを忘れない。」

ニコッ

「ありがとう、、、」

そう言って、光は昇り、そして消えた。


レオンがくれたこの体、無駄にはしない!
絶対に転生してやる!

体のあちこちに感覚が生まれる、と同時に激しい痛みと熱さ、息苦しさに意識が遠のく中で必死に耐えた。その時、、、

全身を光の粒子が身を包み、全身の痛みが消え、その上とても体が軽かった。



俺は悟った、、、、、、、、、、、、転生完了、、、、、、、、、、、、、、、




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