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家族会議、しましょうか
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「はい、全員注目」
ぱん、とルアネが手を叩けば、朝ご飯のあとで稽古に疲れ果てて寝て、起きてからまったり過ごしたいからと始まっていた双子の癒しのティータイムが一時中断される。
ごくん、と口の中に入っていたケーキを呑み込んだレイラと、アイスティーのお替りを注いでもらっているフローリアと、二人の行動は割と反対だ。
アルウィンは双子をデレデレと眺めており、たまに双子それぞれに『父様やめて』『お父様、ちょっと居心地が悪いですわ』と注意されているが、どこ吹く風状態。
「はい、何でしょうかお母様」
「フローリア、此度の婚約破棄の件についてですけれど」
「…?」
はて何だ、と首を傾げているフローリアに、ルアネは問い掛けた。
「王家から慰謝料の話が来ております」
「はぁ…」
「とりあえずフローリアの思ったことを言ってみなさい」
「お金で解決できないんですもの、わたくしが償ってほしいものって」
でしょうね、とレイラは心の中で相槌を打つ。
小さい頃から王太子妃教育に出向くたび、『可能ならわたくしの時間を返してもらいたいわ…』と心底疲れたように呟いていたのを知っているし、金でどうにかできると安易に思っている王家がレイラは心底嫌いだった。
「リアの欲しいものって、帰ってこない時間でしょ?」
「それもあるけれど」
「まだあるの?」
「殿下にあれこれ言われ続けてしまって疲れ切ったわたくしの心のケアもね、多少はしていただきたいな、って思うの」
「具体的には」
淡々と会話する双子を、両親は見守ってくれている。
こういう時は思い切り吐き出させた方が良いと思っているから、ルアネもアルウィンも何も言わない。
「ストレス発散の場、とでも申しましょうか…」
「もっと分かりやすく」
「魔獣いっぱい葬りたい」
にこー、と効果音の付きそうなほど眩い笑顔で、躊躇なく言い切ったフローリアに、メイド長と執事長が明後日の方向に視線を向けた。慣れている二人でも、さすがにちょっと耐えきれなかったらしい。
「あと、魔装具の力をフルパワーで出したいんですの」
「あー…」
フローリアが見かけによらず好奇心も戦闘意欲ももりもりなのは、身内とシェリアスルーツ家騎士団くらいしか知らない。あと知っているのはフローリアの友達くらい。
学園の実習で出てくる魔獣はせいぜいいっても、ランクC止まりだからもっと実践的な戦闘がしたいのだろう。
たまにぽそりと『はぁ…体がなまりますわ…』と物騒なことを言っている。
このことが最近のシェリアスルーツ家騎士団の訓練に如実に出てしまっているので、騎士団員が死屍累々としているのはルアネも把握済。報告したのは勿論ダドリーである。
「あなた、フローリアをこっそり王宮騎士団の訓練に参加させられませんこと?ほら、将来の団長候補、とかいう形で」
「まだ正式に侯爵位を得ていないし、騎士団の試験も受けていないからなぁ…」
「お父様」
はいはい、とフローリアが目をきらきらさせながら手を挙げた。
「でしたら、わたくしへの慰謝料は、騎士団への無条件入団が良いですわ!」
それを聞いたルアネ、アルウィンの心の声は綺麗にハモった。
「(でしょうね)」
「(だろうな)」
続いてレイラは迷うことなく声に出してこう言った。
「学力問題ないんだろうけど、手合わせして、とか言われたらどうするの?」
「すればいいじゃない」
しれっと言い放った双子の片割れの台詞に、思わずレイラは硬直する。
違う、そうじゃないのよフローリア!と絶叫しかけるが、ルアネもいるのでそれは必死に堪えた。
きっとフローリアと手合わせして、ぼこぼこにされてしまうと騎士団員の面子もつぶれること間違いなしだろう。いや、アルウィンが鍛えてくれているので恐らくその辺の男性よりはやわではないと思うが、相手はフローリア。
Aランクくらいの魔物なら倒すというよりも、虐殺しにかかってるのか?というレベルで生き生きとしながら攻撃を仕掛けるし、学園での手合わせでの様子を聞いている限り、恐らく同学年の男子などでは歯が立たないことは明らかなのだが、現状として実家のシェリアスルーツ家騎士団員もぼっこぼこにしかねないレベルだから、何卒手加減をどうぞ、と感じるくらいだ。
「リア、自分の規格外な強さ分かってる?」
「…レイラが居てくれると更に心強いんだけど」
「そうじゃなーい!今はそうじゃないでしょー!」
「レイラ、お行儀が悪い」
「あいた!」
手にしていた扇を器用に投げ、レイラの額に命中させたルアネだが、心の内はレイラと同じである。
「フローリア、貴女は旦那さま直々にがっつりと鍛えられている自覚があるの?」
「ええと…」
あるけれど、フローリアからすればそれが『普通』なのだ。
普通のことを真剣に言われても、とフローリアはちょっと困ってしまった。
「鍛えられている、っていっても…」
「わたくし、どうやってもリアには勝てないからね」
「えぇ…」
双子だから力量は同じくらいだと思っているからこそ、フローリアは思いもよらない返答に困り顔になってしまった。
レイラもそこそこ規格外には強いけれど、使用武器が飛び道具なだけにメイン火力としては不足しがちではある。とはいえ、どうにかすればかなり火力が盛れるけれど、本人がそれを望まない限りはあり得ない。望むのは恐らくフローリアはじめ、家族に万が一があったとき。
「でも…慰謝料って言われても思いつくの、それくらいしかないんだもの…」
しゅんとしているフローリアは可愛いけれど、言っている内容は結構えげつないことは、ルアネとレイラは理解しているが、アルウィンは結構ノリノリぽい雰囲気ではある。
「ちょっとお父様」
「あなた」
「え?」
目がキラキラしているアルウィンをジト目で見ているルアネとレイラ。
喜んでいるらしいアルウィンの様子を見て、フローリアは輪をかけて嬉しそうにしている。
「お父様、陛下たちに進言してくださいます!?」
「勿論だ!」
「やったわ!卒業パーティーまで退屈だな、って思っておりましたの!」
珍しく嬉しそうにはしゃいでいるフローリアが見れるのは嬉しいし、喜んでいるフローリアは可愛いけれど、違うのよ…とがっくり肩を落とすレイラを見て、ルアネは今度内緒で好きなものを買ってあげよう、と心に決めたのであった。
ぱん、とルアネが手を叩けば、朝ご飯のあとで稽古に疲れ果てて寝て、起きてからまったり過ごしたいからと始まっていた双子の癒しのティータイムが一時中断される。
ごくん、と口の中に入っていたケーキを呑み込んだレイラと、アイスティーのお替りを注いでもらっているフローリアと、二人の行動は割と反対だ。
アルウィンは双子をデレデレと眺めており、たまに双子それぞれに『父様やめて』『お父様、ちょっと居心地が悪いですわ』と注意されているが、どこ吹く風状態。
「はい、何でしょうかお母様」
「フローリア、此度の婚約破棄の件についてですけれど」
「…?」
はて何だ、と首を傾げているフローリアに、ルアネは問い掛けた。
「王家から慰謝料の話が来ております」
「はぁ…」
「とりあえずフローリアの思ったことを言ってみなさい」
「お金で解決できないんですもの、わたくしが償ってほしいものって」
でしょうね、とレイラは心の中で相槌を打つ。
小さい頃から王太子妃教育に出向くたび、『可能ならわたくしの時間を返してもらいたいわ…』と心底疲れたように呟いていたのを知っているし、金でどうにかできると安易に思っている王家がレイラは心底嫌いだった。
「リアの欲しいものって、帰ってこない時間でしょ?」
「それもあるけれど」
「まだあるの?」
「殿下にあれこれ言われ続けてしまって疲れ切ったわたくしの心のケアもね、多少はしていただきたいな、って思うの」
「具体的には」
淡々と会話する双子を、両親は見守ってくれている。
こういう時は思い切り吐き出させた方が良いと思っているから、ルアネもアルウィンも何も言わない。
「ストレス発散の場、とでも申しましょうか…」
「もっと分かりやすく」
「魔獣いっぱい葬りたい」
にこー、と効果音の付きそうなほど眩い笑顔で、躊躇なく言い切ったフローリアに、メイド長と執事長が明後日の方向に視線を向けた。慣れている二人でも、さすがにちょっと耐えきれなかったらしい。
「あと、魔装具の力をフルパワーで出したいんですの」
「あー…」
フローリアが見かけによらず好奇心も戦闘意欲ももりもりなのは、身内とシェリアスルーツ家騎士団くらいしか知らない。あと知っているのはフローリアの友達くらい。
学園の実習で出てくる魔獣はせいぜいいっても、ランクC止まりだからもっと実践的な戦闘がしたいのだろう。
たまにぽそりと『はぁ…体がなまりますわ…』と物騒なことを言っている。
このことが最近のシェリアスルーツ家騎士団の訓練に如実に出てしまっているので、騎士団員が死屍累々としているのはルアネも把握済。報告したのは勿論ダドリーである。
「あなた、フローリアをこっそり王宮騎士団の訓練に参加させられませんこと?ほら、将来の団長候補、とかいう形で」
「まだ正式に侯爵位を得ていないし、騎士団の試験も受けていないからなぁ…」
「お父様」
はいはい、とフローリアが目をきらきらさせながら手を挙げた。
「でしたら、わたくしへの慰謝料は、騎士団への無条件入団が良いですわ!」
それを聞いたルアネ、アルウィンの心の声は綺麗にハモった。
「(でしょうね)」
「(だろうな)」
続いてレイラは迷うことなく声に出してこう言った。
「学力問題ないんだろうけど、手合わせして、とか言われたらどうするの?」
「すればいいじゃない」
しれっと言い放った双子の片割れの台詞に、思わずレイラは硬直する。
違う、そうじゃないのよフローリア!と絶叫しかけるが、ルアネもいるのでそれは必死に堪えた。
きっとフローリアと手合わせして、ぼこぼこにされてしまうと騎士団員の面子もつぶれること間違いなしだろう。いや、アルウィンが鍛えてくれているので恐らくその辺の男性よりはやわではないと思うが、相手はフローリア。
Aランクくらいの魔物なら倒すというよりも、虐殺しにかかってるのか?というレベルで生き生きとしながら攻撃を仕掛けるし、学園での手合わせでの様子を聞いている限り、恐らく同学年の男子などでは歯が立たないことは明らかなのだが、現状として実家のシェリアスルーツ家騎士団員もぼっこぼこにしかねないレベルだから、何卒手加減をどうぞ、と感じるくらいだ。
「リア、自分の規格外な強さ分かってる?」
「…レイラが居てくれると更に心強いんだけど」
「そうじゃなーい!今はそうじゃないでしょー!」
「レイラ、お行儀が悪い」
「あいた!」
手にしていた扇を器用に投げ、レイラの額に命中させたルアネだが、心の内はレイラと同じである。
「フローリア、貴女は旦那さま直々にがっつりと鍛えられている自覚があるの?」
「ええと…」
あるけれど、フローリアからすればそれが『普通』なのだ。
普通のことを真剣に言われても、とフローリアはちょっと困ってしまった。
「鍛えられている、っていっても…」
「わたくし、どうやってもリアには勝てないからね」
「えぇ…」
双子だから力量は同じくらいだと思っているからこそ、フローリアは思いもよらない返答に困り顔になってしまった。
レイラもそこそこ規格外には強いけれど、使用武器が飛び道具なだけにメイン火力としては不足しがちではある。とはいえ、どうにかすればかなり火力が盛れるけれど、本人がそれを望まない限りはあり得ない。望むのは恐らくフローリアはじめ、家族に万が一があったとき。
「でも…慰謝料って言われても思いつくの、それくらいしかないんだもの…」
しゅんとしているフローリアは可愛いけれど、言っている内容は結構えげつないことは、ルアネとレイラは理解しているが、アルウィンは結構ノリノリぽい雰囲気ではある。
「ちょっとお父様」
「あなた」
「え?」
目がキラキラしているアルウィンをジト目で見ているルアネとレイラ。
喜んでいるらしいアルウィンの様子を見て、フローリアは輪をかけて嬉しそうにしている。
「お父様、陛下たちに進言してくださいます!?」
「勿論だ!」
「やったわ!卒業パーティーまで退屈だな、って思っておりましたの!」
珍しく嬉しそうにはしゃいでいるフローリアが見れるのは嬉しいし、喜んでいるフローリアは可愛いけれど、違うのよ…とがっくり肩を落とすレイラを見て、ルアネは今度内緒で好きなものを買ってあげよう、と心に決めたのであった。
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