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甘党なのは変わらない
しおりを挟む「おいっしぃ~!」
輝く瞳で綺麗にパンケーキを一切れずつ口にする黒崎に笑ってしまう。普段はチャラくて生意気な奴だけれど、こんな所は可愛いと思う。
「昔から甘党だもんな、お前」
「甘味は正義」
「そーですか、よかったね」
そこまで喜んでもらえたなら作り甲斐もあるというものだ。適当にバナナやら缶詰のみかんやらを盛り付けてチョコソースをかけただけだが。
「そこまで好きなら自分で作ればいいのに」
「それが出来たら苦労しねーって」
確かに昔から不器用なのは知っているが…。材料を混ぜて焼くだけのものが、そんなにも大変なことなのだろうか。
「料理ってのはさ、下ごしらえから片付けまでが料理だろ?」
「そりゃあな」
「俺は下ごしらえ面倒だし、片付けも面倒だし。だからずっと人に作ってもらってばっかりでさ」
「…それって」
作ってもらってばっかりって、誰に?恋人に?
「ん?」
「…なんでもない」
俺たちは生まれた時から一緒で、何だかんだ側にいて。何でもお互いを分かっているようだけれど、実際はコイツが何を考えているのか分からない。
「…そんな甘ったるいの、美味い?」
カロリーだけが高そうな、如何にもな品。
「美味いよ?ひとくち食べる?」
綺麗に切り分けられたそれをフォークごと差し出される。が、俺はこれでも潔癖というか、何というか。神経質なんだろう。人の食べかけを食べたりなんてあり得なかった。
それを知っててニヤニヤと笑うコイツに、ほんの少しだけ意趣返ししたくなった。
「…もらう」
自然に黒崎の手を握って、それを口に含む。やはり甘い。チョコレートの味しかしないし。
「…た、たべた」
何とも言えない表情でこちらを見る黒崎に笑ってしまう。
「なんだよ?」
「食べると思わなかったから…」
そこでふと思いついたセリフを口に出す。
「お前のならイケるかなって」
「っ~~……!」
耳まで真っ赤になっている理由が分からないけれど、やっぱりそうしていたら可愛いと思う。男相手に、しかも幼馴染にそう思ってしまう俺は重症なんだろう。
「…なに」
「別に?黒崎って変なとこ、純情だな」
「純情ってなんだよ」
「俺との間接キスに真っ赤になっちゃったところとか?」
普段は言わないジョークも、幼馴染だから遠慮なく言える。
「か、間接キスって、お前、」
明らかに動揺する黒崎が面白くて、笑いはしばらく止まなかった。
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