国王ほど不自由なモノはない

榎本 ぬこ

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じゅーろく

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「なんだ、そのツラは。俺を売っておきながら」
「…フラれた者同士、祝杯でも上げましょうか」
 なるほど。俺がいない間にマリアを手に入れようとして失敗したのか。
「そうだな」
 不思議と責める気にはならなかった。
 そして何にかも分からない物に乾杯しようとしたところでグラスが取り上げられる。
「なにす、るー……」
 その顔を見て血の気が引いた。
「…随分と長い休暇でしたね?陛下」
「……ひさしぶりー、フェロンさん…」
 やばい。忘れてた、コイツのこと。



 それから地獄の一週間が始まった。
「サボった分やってもらいますよ」
「俺のせいじゃねぇよ!」
「言葉が乱れていますが、再教育が必要ですか」
「っ……くそぅ…」
 フェロンは俺がまだ王子の頃、俺の教育係だった。俺に万国の全てを教えたのはフェロンだ。
 ユリスに何故名前でと聞かれたが、多分それが原因だったのだろう。一時期グレた時に、「フェロン先生」と呼んでいたのを「フェロン」と呼び捨てするようになったのがキッカケだ。
「さぁ、言い直しましょうか」
「ぐぬ…」
「言うまで、そうですね…」
 微笑を浮かべるその顔はやばい。やばいことを考えている時の顔だ。
「余が悪いのではない!!」
「では誰のせいだと?」
「……王妃」
「自分の恋愛のために王妃様を犠牲にするとは感心しませんね」
 このタヌキ野郎!!全部知ってて聞いたのかよ!!
 …コイツに勝てる日は永遠に来ないだろうな…。
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