国王ほど不自由なモノはない

榎本 ぬこ

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さんじゅーさん

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 はあっと今日で何度目になるか分からないリゼのため息に、リオンは少しだけ困ったような顔をする。
「リゼも皇太子も、あの男のどこがそんなにいいんだか」
「どこ、ねぇ」
 特にここ!ってところがあるわけじゃない。強いていうならーー顔かな。うわ、俺ってもしかして最低?
(でもま、人を好きになる理由なんてそんなもんだろ…)
 その理由がどうであれ、リゼとユリスには関係があるのだ。恋人ではない、なにか。
「リオンはさ、考えたことない?好きな奴に明らかに狙ってる男が近付いてるとか」
「リゼのそれはもう女目線から見てるんだな、皇太子を」
「……まぁ、そりゃ」
 一応ね?気に入らないというか、気に食わないというか。
「…俺の好きな奴にはもう男がいるからな」
「ーーえっ、好きな人いたの!?」
「おう」
「うそ、マジで!?」
 全然知らなかった。だっていつもリゼの傍にいたし、女っ気なんてなかった。結婚もせずに飄々と生きて、けれど周りに文句を言わせないだけの権力と実力を兼ね揃えたリオンに、まさか好きな人がいたなんて。
「誰!?」
「ん?お前」
「……ん?」
「ん?」
 幻聴かな。お前って、言われた気がする。
「ごめんもう一度…」
「だからお前だって」
 何でもないことのように書類に目を通しているリオンは嘘を付いている様子もなければ、冗談を言っている様子もない。
(…んん?)
「まぁ、別にお前に何か求めてる訳じゃないから安心しろ」
「え、いや、は?」
 どういうことだろう。俺は今、告白されたのだろうか。
「…え、いつから?」
「いつからって……初めて会ったときから?」
「……マジ?」
「マジ」
 リゼは考えた。考えて、考えて、考えて。
「…そういえばこの書類のことなんだけど」
 聞かなかったことにしようという結論に至った。
 の、だが。
「あー、でもまぁ」
「っ!」
「あのクソガキが嫌になったら、いつでも俺が抱いてやるよ?」
「な、なに言って」
 リオンは兄のような存在で、リゼが男を取っ替え引っ替えしていることも、リゼの身に何かあったらどうするのだと止めてくれて。
(…なんなの俺)
 モテ期ってヤツですか?
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