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相談②
しおりを挟む達也と煌が付き合い始めて早数ヶ月。
その日も、響也は煌に呼び出されていた。
「なに、お前から飲みに誘うのって珍しいな」
誘われたことに内心嬉しく感じながらも、複雑な気分だ。
「また達也のコト?」
これで何度目だろう、惚気話を聞かされるために呼び出されるのは。まぁ断ればいいだけなのだが、俺以外のヤツとこういう話をしてほしくない。煌が俺に話してくれるのはきっと、信用があるからだろう。それは素直に嬉しい。
「そーだよ。…手ェ出すの早すぎ」
「…もういいじゃん、さっさとヤられたら」
「アホか」
「お前だって本望だろ」
こんな言い方しか出来ないのは、今でもこの男に少なからずとも思いを募らせているからだと自分でも分かっている。
「…俺のせいで、達也の成績下がったりしたら嫌なんだよ」
「……」
達也が羨ましい。
こんなにも大切に思ってもらえて、手を出せるほど近くにいて。
「じゃあ、俺にしとく?」
「……あはは、何言ってんの。シャレになんないって」
「ならなくていーよ」
結婚予定の彼女と別れたのは、つい昨日の話だ。
「ごめんなさいっ…!」
全て知っていると思ったのだろう。許しを請うための自白は、響也の予想を上回るものだった。
「響也なら、受け止めてくれるって甘えてたの…!」
受け止めるつもりでいた。
けれど、達也と煌のことも重なって、どうしても陽菜と別れたかった。
当て馬でもいい、グチ聞きでもいい。
煌のそばにいたい。
達也のできない何かを、俺がしてあげたい。
そう思ったから、別れた。
「…お前って、ホスト向いてるかもな!イケメンだしー」
ケタケタと笑う酔っ払いにドキリとするが、そんな感情は次の言葉で打ちのめされる。
「達也に似てっ!」
ちげーよ、達也が俺に似てんだよ。
まぁ、反論するのも面倒だからしないけどさぁ。
「煌、飲みすぎ」
「…酔ってたら、達也が甘えさせてくれるもん…」
なんだそりゃ。
「そんで、いっしょに寝れるもん…」
もんってなんだ、もんって。
可愛すぎか、こんにゃろう。
「…なに?」
「別に。…お前、本当に達也にベタ惚れだなって思って」
「まーね」
「うっわ、リア充破滅しろ!」
「しねーし、一生離れねーし」
「…突き放されたらどうすんだよ」
「ないもん。達也は俺のこといきなり突き放したりしない」
言い切るこの男が嫌いだ。
けれど、そんな風に言い切ることのできるこの男が好きだ。
だから俺は今日も、良い幼馴染を演じるのだ。
少しでも長く、この男のそばにいたいから。
「…またかよ。今度はなんて?」
家に帰るなり、達也が不機嫌そうに尋ねてくる。
「…さぁ?」
イラつくので知らぬふりをすると、眉間にシワが寄った。
「煌ちゃん。ほら、俺の部屋行くよ」
「んー……達也ぁ…」
「はー…。…なんで俺じゃなくて、兄さんに相談なんかするかなぁ」
「んだよ、俺じゃ不満って?」
「別に。兄さんのことを信用してないワケじゃないです、けど」
「けど?」
「…アンタが煌ちゃんのこと見る目、気に入らねーんだよ」
「………」
「言っとくけど、煌ちゃんはもう、俺のだから」
「…ダッセェ。煌のこと信じてないのかよ」
「まさか」
「…じゃあ何だよ」
イラつく。本当、イラつく。
「煌ちゃんに近付くヤツなら、兄さん以外でも嫉妬するから。…気にしないで」
んだよ、それ。
煌も嬉しそうに笑ってんじゃねーよ。
「そーかよ」
解ってはいても、嫉妬する。妬む。俺のモノになればいいのにと、願ってしまうのだ。
きっとこれはもう、どうしようもないことだけれど。
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