神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第2章 超人ヒムニヤ

剣聖 対 火竜(4)

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 やれやれだ。

 もうちょっとで死ぬとこだったぜ……。

 でも、何とか助かったみたいだな。仲間も無事なようだし、とりあえずは少し休むか。


 まずは、服を乾かそう。

 木は豊富にあるので火を起こし、焚き火をする。一旦、服を脱ぎ、木を組み立てて物干し竿を作り、そこに吊るす。風がいい感じにそよいでいる為、すぐに乾くだろう。

 服を乾かしている間、ほぼ全裸になってしまうが、今の間に改めて付近をよく観察してみる。

 この辺りの川は幅が広く、いつの間にやら流れがかなり緩やかになっていた。木々は相変わらず濃い。濃いが、川の上には木がないために、他の場所よりもかなり明るい。
 しかし、森の神性はより強くなっているように感じる。こんな神聖な場所でパンツ一丁ですみません……。


 チチチチチチ……
 キュウキュウ……
 ホロホロホロ……

 鳥か獣かわからないが、色んな生き物の鳴き声が聞こえてくる。
 のどかだ……。

 チチチチチチ……
 キュウキュウ……

 チチチチチチ……
 バシュッバシュッ!!
 ホロホロホロ……

 キュウキュウ……

 ドォォォォォォォーーーン!!

 バサバサバサ……

 …………。

 いやー。
 派手な音を出す生き物がいるもんだな。


「レィブリィ! ブレスが来るぞ!! 逃げろ!!」

 グァアアアアアアアアアアアアア!!!

 おお。
 人の声によく似ているな。

 ゴォォォォォォォォォォォォォ!!


 うおお。
 まるで、何者かがブレスを吐いているような音がする。



 …… うあっっっっっつ!!!!
 アチチチチチ!

 熱気がここまでくる。

「勘弁してくれ。ヤな予感しかしねぇ」

 1人でブツブツ言いながら、渋々シュタークスを手に持つ。

 うぅ。嫌だぁぁ。


「矢を放て!! ビャーテ! 右からだ!!」

 戦ってるよな……やっぱり……。
 んで、相手って……。

 ギュォォォォーーーー
 ガァァァァァァァァァァァーーーー

 木々の隙間から、巨大な体が見える。

 いや、見えない見えない。木が邪魔で全く見えない。俺の目には真っ赤な体に黄色の眼球、塔ほどの太さがある足に青年らしき誰かが捕まっている所や、口から炎がヨダレのように漏れている所などは全く見えない。

 ヒィィィィィーーーー!!!

 やっぱし!!


 ドラゴン!!


「オイフェミア! 狙われている! 川へ逃げろ!!」

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥーー……

 うぉぉぉ。吸ってる吸ってる!

 ゴォォォォォォォォォォォォォォーー!!!

 吐いたぁ~~~!
 火炎ブレス!!

 俺の目の前一面が炎で一杯になる。そしてその炎の手前で、まさに今、オイフェミアと呼ばれたであろう女性が俺の方に猛突進してくる。

 ええい! くそっ!!!

地竜剣技エアドラフシェアーツ!!」

 行きがかりだ。助けてやるか!

「『岩砕フェルセヴェルグナ』!!!」

 迫り来る炎の息フレイムブレスと、駆け込んで来た女性との間に『岩砕』を発現させる。

 熱風に煽られて女性が吹き飛ばされ、俺の胸の中に飛び込んで来た。ドラゴンと敵対する事は避けたいが、女性を放り出すわけにはいかない。しっかりと胸で受け、抱き止めてやる。

「大丈夫かい?」
「ひっ? 誰?」
「そんなのは後だ。やれやれ……」

『岩砕』が砕け散り、ブレスを吸収する。

 まだ幼さの残る女性を地に立たせ、ふと見上げると、上空でホバリングしているドラゴンが目に映る。

 ……あれ……待て待て。

 目が合っている……………………。

 ドラゴンと目がバッチリ、合っている。

 勘弁してくれーーーー。


 グルルルル……。

 うう……。唸るんじゃない。怖いじゃないか……。

「今だ、射てーーーーー!!!」

 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!

 森の中から巨体に向けて、多くの矢が放たれる。だがドラゴンは全く意に介さず、じっと俺の顔を見続けている。

 あ~。あの矢じゃなぁ。
 アデリナ位の威力がないと無理だろうなぁ……。

 不意に、頭に声が鳴り響く。

(マッツ・オーウェンだな……)

 うぉっと……。
 頭に直接話し掛ける、この恐ろしい声は……。

(グェグェグェ。そうだ。貴様の目の前にいるこの私だ)

 目の前……。

「まさか! オイフェミアが!!」
「え?」

(違うわ! そんなで『グェグェ』とか笑ってたら怖いだろうが!)

 グルルルル……。

 意外に軽快に突っ込んで来るな。


 しかしマズったぞ。ドラゴンに話し掛けられてしまった。
 オイフェミアは、顔にハテナマークをたくさん浮かばせて、俺を見つめて固まっている。

「どうした!? ドラゴンの動きが止まったぞ!」
「今の内だ、退却するぞ!」

 いや、俺も退却したい……。
 てか、あんたら、仲間がドラゴンに捕まってるんじゃないのか。

(待っていたぞ、マッツ・オーウェン。さあ、貴様の力、見極めさせて貰おうか)

 ヒィィィィィーーーー

 何という最悪の展開。

(私達を助ける者なのか、破滅に導く者なのか、確かめさせてもらう)

 お断りします。

「俺はここに来て、たまたま珍しいモノを見ただけなんだ!」

(何を言っとるんだ、お前は……)

 ドラゴンの口から炎が一際漏れる。

 ……と思った瞬間、先ほど、騒いでいた奴らがいた辺りを炎の息フレイムブレスが焼き尽くす。

「なにしやがる!」

(お前がやらないというならそれで良い。見込み違いだったという事だ。ならば視界にいる者を焼き尽くす! 私にとっては地上に生きる者共の命など塵に等しい)

 くそう! やっぱりこうなってしまうのか。

 ―――
「そんな事言って…… 結局、戦うんでしょ?」
「やめたまえ、リタ。嫌な予感がする」
「うふふ」
 ―――

 リタの言霊、ハンパないな。
 仕方ない。腹をくくれ!

「ようし! わかった。相手になってやるぜ。その代わり、今、足で掴んでいる人を離せ」
「……」

 いきなり独り言を言い出した俺にびっくりしてか、オイフェミアがギョッとした感じで更に俺を見つめる。心無しか、モジモジしているようだがあまり気にしない。

(グェグェ。そうか、やる気になったか。ならばこうしよう。私からこの人質を救い出せばお前の勝ち、それ以外は私の勝ち)

「ふん、いいだろう」

 その言い方だと、命までは取られなさそうだ。こっちは思いっきりやってやる。
 ドラゴンとの交渉を終え、胸の中の可愛らしい女の子に顔を向ける。

「オイフェミアさんとやら。ここからは俺とこの火竜とのタイマンだ。急いでここから離れなさい」
「え? あ、はい。でも、あれ……竜に捕まっているのは私の子なんです! 私だけ逃げる訳にはいきません!」
「え? あんな大きな子供がいるの?」

 見た目、15、6歳に見えるのだが……。エルナといい、コンスタンティンといい、アンチエイジングが凄すぎないか。

「いいよ。助けておいてやる」

 どっちみち、そうしないと俺の負けなんだからな。
 あれ? 負けたらどうなるんだろうか。

(グェグェ。死ぬんだよ。お前の仲間共々な)

 ブチッ

「俺の仲間に手ェ出すんじゃあねえよ! お前は今から俺がぶっ飛ばしてやる!!」

 何やら、竜の口の端が少し上がった気がする。
 笑ってやがるのか?

「さあ、俺が必ず助けてやる。早く逃げろ」
「う……ありがとうございます! あの、お名前は……」
「マッツ・オーウェン!」

 言い捨てて、魔剣を片手に俺はドラゴンに向かって突進する。

 この幼いお母さんは、きっと俺のカッコいい背中を見て、しびれているだろう。


 この時、パンツ一丁だったことを思い出したのは、それからかなり経ってからだった。
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