神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

文字の大きさ
49 / 204
第2章 超人ヒムニヤ

剣聖 対 火竜(5)

しおりを挟む

青竜剣技ブリュドラフシェアーツ!」

 ドラゴンとの距離、およそ10メートル位にまで接近する。近付く程に感じる圧倒的ド迫力、地上最強生物との対決だ。どこまで人間の力が通用するか……いざ、勝負!!

「『シューヴ』!!」

 ルーペルトに放った時は、さすがに人間相手にフルパワーという訳にはいかず、遠慮して魔力を半減させた。

 だが今の相手はドラゴン、最大魔力で水属性の『突』をぶっ放す!

 魔力で発現させた水流がスクリュー状になり、ニヤニヤ笑っている(と勝手に俺が思っている)奴の面に捻り込む!!

 ドッシュゥゥゥゥ!!
 ズッゴォォォォォン!


 グォォォォ……


 奴が唸る。

風竜剣技ダウィンドラフシェアーツ!!」

 俺の左右に小型の旋風を起こす!
 休む間を与えず、シュタークスを横に一閃、空中に真空の刃を大量に発生させる。

「『鎌鼬シィシェル』!!」

 瞬間、ドラゴンの顎から炎が漏れ出す。

 ゴォォォォォォォォォォォーーー!!!

 視界一杯の炎の息フレイムブレス
 巻き込まれたら終わり―――。

地竜剣技エアドラフシェアーツ!『岩砕フェルセヴェルグナ』!!」

 吐かれてからだと、走って逃げるのはつらい。それ程の範囲攻撃。

 なら防ぐ! ブレスにも効果がある事は、先程オイフェミアの前で実証済みだ。分厚い岩の壁は見事に炎の息を吸収し、役目を終えて砕け散る。

 そして!

 シュインシュイン!!

 ブレスよりも先に放った俺の『鎌鼬』が、ドラゴンの翼を切り裂く!

 ズバババババババババババババババッッ!!

 竜の翼からいくつかの鱗のようなカケラが落ちてくる。かけらと言っても、数十センチ四方程度のものから2メートル位のものまで、さまざまだ。

 ドゴーン! ドガッ! ゴッ!

 グォォォォォォォォォォ!!

 首をくねらせ、怒りの表情を見せる。

 おお! 効いてるぞ! きっと!!
 修羅剣技は地上最強生物にも対抗できる!!

 バッサバッサと羽ばたき、凄まじい旋風を巻き起こす!

 ブゥォォォォ!!
 ビュゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 うう……。

 た……立ってられ……ない!

 そして、俺に向けて、一際大きく、顎を開く!

 何か危険だ。同じブレスとは考えにくい。直感的にそう思い、今度は防がずに猛ダッシュで森の奥側に逃げる。ドラゴンの下をくぐる感じだ。

 直後!

 フィン…………

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンン!!!

 さっきまでいた場所で、物凄い爆音だ。

 凄まじい爆風で数十メートル吹っ飛ばされる。

「うわあああああぁぁぁ!!」

 ドンッ! ズザザザザ!!

 地面に衝突し、しかし爆風で煽られて止まらず、そのまま転げまくる。

「あうう……いっつつ……何なんだ。何しやがったんだ!?」

 そういえば、俺がまだ、鳥のさえずりを楽しんでいた時に、同じ爆音が鳴っていた。あれか。

 ドラゴンって、爆発を起こせる……のか!?

 ふと、爆発の連続で死にかけた、魔神アスラとの絶望的な戦いを思い出し、押し殺していた恐怖が頭をもたげてくる。

 ……

「ぐぅぅ……クソったれ……が!!!」

 だが、それを必死で飲み込む。

 もう、戦いは始まった。
 ここでビビるのは何1つ良いことはない。

 目の前にいるのは魔界の住人ではない。
 少し大きいだけのこの世の生物、そう、爬虫類だ。多分!

火竜剣技フラムドラフシェアーツ!『アネヴォム』!!」

 奴の腹にポイントし、爆破する。火属性の攻撃ではあるが、あくまで爆発は物理だ。しかも、アスラと違って生物は大抵、腹は柔らかい。きっと効く。

 ドォォォォォォォォォン!!

 ギュォォォォォォォ!!

 ドラゴンの叫びが響き渡る。

 だが、爆破した辺りを確認する限り、見た目のダメージはないようだ。

「参ったな。腹でもこの硬さか」

 突如! ドラゴンが、落下してきた!!

 ブッシュゥゥ!!!!

 押し潰される!!! と、思った瞬間、腹部に激痛が走り、体がふわりと浮くのがわかる。

「ぐああああッッ!! ……ぐ……う」

 ボッタボッタボッタボッタ……。

 空いている方の足に捕まったらしい。そして、運の悪い事に、ドラゴンの割れた爪の一筋が俺の右脇腹を貫通しており、そこから血が流れ出る……。

 グボッ……。

 血を吐いた。

 パンツが血まみれだ! 畜生!!

 ドラゴンは俺(と、もう1人)を掴んだまま、しばらく飛行し、一際大きな木に向かって滑空する。

 超絶、嫌な予感がする。こいつ、殺す気か……。

 幸い、シュタークスは離さなかった。そして、爪が突き刺さってはいるものの、ドラゴンがデカすぎて、ある程度、体は動く。

地竜剣技エアドラフシェアーツ!!」

 あと数十メートルで木に当たる! という所で、ドラゴンは俺をパッと放し、宙返りをする。
 そのまま慣性の法則で爪が抜け、俺は物凄いスピードで木に一直線―――

「うおああああああ!!! 『岩砕フェルセヴェルグナァァァァァァ』!!!!」

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 バキバキバキバキ!!


 ………………。


 何十本の枝を折り、木にぶつかっただろうか。

 身体中がやられ過ぎて麻痺している。
 気絶していないのが不思議な位だ。

 肋骨3本、左腕、右脚……骨折しているな……。
 頭は守りきったし、肺に穴も開いていない。

 大丈夫だ。

 しばらくじっとしてりゃ、これ位治るだろう。
 俺のタフさを舐めるんじゃあねぇぜ……

 目に血が入り、視界を遮る。
 視界から消えたドラゴン……どこに行きやがった? もう……許さない。

 さぁて次は、俺のターンだ……ぜ!!


 時間の感覚も曖昧だが、おそらくその十数秒後。

 バッサバッサ……。

 姿は見えずとも、音は聞こえる。それがまた恐怖心を煽る。

 だが、今の俺は、かなり怒っている。

 ここまでしてくれたんだ。相応のツケを払ってもらうぜ。姿を隠し、俺に時間を与えたのが、お前の失敗だ。

 静かにシュタークスを構え、詠唱を始める。

「リンクス・ナラ・ファミュラ……」

 シュウゥゥゥゥゥゥ―――

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーー!!!!

 炎の息フレイムブレス!!

「レイネア・フォールチ・ダ……」
風竜剣技ダウィンドラフシェアーツ!! 『翔《クシア》』!!」

 修羅剣技の平行詠唱だ!!

 竜巻に乗り、ブレスを避けて一気に上昇、視界が開け、ドラゴンの眼前に出たことを知る。

 よく見ると、この火竜、傷だらけだ。俺がつけた傷もあるが、そうでは無い傷の方が多い。先ほどの奴らがつけた傷でも無いだろう。
 そう思いながらも、続けて詠唱する。

「レイニアマ・レイテンマ・レイナク……」
青竜剣技ブリュドラフシェアーツ!『突《シューヴ》』!!」

 ドッシュゥゥゥゥ!!

 顔面に1発、お見舞いだ!!

「ヴィエンソ・ビーララ・ヴィルトス……」

 合間に更に『翔』を放ち、翔ぶ!
 次に目指すは後頭部。

「ミル・イン・トゥヴァイス……」
火竜剣技フラムドラフシェアーツ!『アネヴォム』!!」

 後頭部を爆破。ここも、キズだらけだ。殺すのは少し、可哀想か……。そんな事を思う。まあ、でも俺も散々、やられたからな。同じ位はやられてもらおうか!


「サーアル・イーコール……」

 詠唱を続け、そして、更に『翔』!『翔』!!

「ツェバラヴァシヤンマ・リィ・ナ……」

 翔ぶ! ドラゴンよりもっと上へと。

「アノラマ・ファティマ・ラクティア・ラ・ラ・メイデン」


 そして―――


 修羅剣技、最強の攻撃だ。
 これを食らって、落ちろ!!

魔竜剣技ダヴィドラフシェアーツ!!!!」

 ドラゴンが首を回し、俺と目が合う。
 魔剣シュタークスが、7色の光を放つ。

 キーーーーーーーーーン……。

 この音は超振動によって発せられる音。今から始まる大破壊への前奏曲プレリュードだ。

 グォォォォ…………!!!


 今更、謝っても知らん!!!


「『天魔滅殺ヴァルティマ・レイ』!!!!」


 魔剣から放たれる7色の光が睦み合い、1本の白色と化す。
 ドラゴンの首程の太さに編み込まれ、チ……という小さな音と共に瞬時に地上に達する光撃が放たれる。

 残るは光撃の半ばにおり、右の脇腹に綺麗に穴の空いたドラゴンと、

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンンンンンンンン………………


 凄まじい轟音、そしてドラゴンの数倍の大きさに抉られた巨大なクレーターだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...