神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第2章 超人ヒムニヤ

《神妖精》超人ヒムニヤ(1)

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 ……

 …………

 ………………


 どこだ。ここは。

 真っ暗だ。


 あれ? 俺、何してたっけ。

 確か……。


 はっ! ドラゴンは!?

 どうなった?


 ……。

 ……この真っ暗な場所……。


 ん? あいつドラゴンにやられた傷がない。


 ひょっとして、俺は死んだのだろうか。

 おかしいな。ドラゴンは倒したと思ったが……?

 最後の最後で殺すのが可哀想になり、とりあえず、俺がやられたのと同じ、右の脇腹に穴を開ける位にしてやったんだが。

 まさか、それが仇になってやり返されたんだろうか。


 だとしたら……悔やみきれんなあ。

 俺はともかく、みんなが心配だ。

 俺抜きでこれから先、大丈夫なのかな……。


 ヘンリック……

 リタ……

 クラウス……

 アデリナ……

 エルナ……



 そして、リディア……。

 ビルマークでの夜の宴……

 あ~~~くそっ!!

 あん時、マルクスが来なければ!!


 もうちょっとで、こう!
 あとちょっと、いや、あと数秒あれば……。


(余裕あるな、お前)


 ゾッ……とする声だった。


 誰だ!?

 俺のプライベートな世界に入ってくるんじゃねぇよ!


(お前の世界……?)


(フフ。違うな。ここは、私の世界)


(全てを閉じ込める、闇の世界)


 ……

 お前……

 分かりやすいな。物凄く分かりやすい。


 これ程、出会ってすぐに『悪』とわかる奴も珍しいな。


 『悪』の波動が漏れ出してるぜ?


(今までに何度か……お前の事を見ていた)


 ん?

 覗き見か?


(忌々しいが、お前……創世神に守られているな)


(おかげでお前をだけでも一苦労だ)


(驚いた……ぞ)


(今の世に……これ程……強い人間が……いるとはな)


 ふん。褒めても何も出んぞ。


(私の……計画を。いくつか……)


(潰してくれた……ようだな)


 は? お前の計画?

 …………身に覚えがないが。


(まあ……良い)


(しかし……、ドラゴンを……相手出来る程の奴が)


(この世にいようとは)


 あのドラゴンも、お前の計画とやらの1つなのか?


(フ……ドラゴンは……人智の外にいる生物……)


(私でさえ……どうこうできる存在では、ない)


 ふーん。

 えらく、正直だな。

 で、お前、誰なんだよ。


 その時、俺の顔のほんの30センチほど先に、忽然と浮かび上がる、不気味な顔。


 まぶたが無い―――

 その為か、まんまるな目をしている。

 歪んだ鼻筋と口元。

 頭髪は無い。

 違和感のある、馬蹄の形をした白い口髭。


 だが、何より特徴的なのは左眼だ。

 眼球が無く、ぽっかりと空いている暗い穴の中では、何やら白い砂のようなモノが楕円の渦を巻いている。宇宙が見える感じ……とでも言えばいいだろうか。


(おや。あまり……驚かないな……)


 いや、声から想像してたよりは、まともな顔立ちだぜ!?


(フ……フ……フフ……)


(マッツ・オーウェン……気に入った……)


(この……顔を、覚えておけ……)


(む………………)


 ん? どこ見てんだ?


(邪魔が…………あいつか……)


(ちち……)


(マッツ・オーウェン……)


(私の元に……来い……)



 そして、そいつは消えた……。

 結局、名乗らずに。

 不気味なセリフと、闇の波動を残して―――



 直後、不意に辺りが明るくなる。

 ふと、目の前にさっきとは違う新たな人の、いや何か聖なるものの気配を感じ、目を凝らす。


(無事か?)

 美しく澄みきった、そして凛とした強さを感じる声が頭に響く。

 そして顔を上げると幼少の頃に夢で会った女神、ツィさまに匹敵する美しい女性が目の前にいた。

 見たことも無い綺麗な銀髪と、全てが完璧な対称で形作られた顔のパーツ配置。切れ長だが優しく慈愛に満ちた目、鼻筋が通り、赤く形の良い唇。

 身長はリディアより少し高い。白く透き通ったドレスを身に纏い、スレンダーではあるが、いやでも目に付く体の線が女性である事を強調している。


 思わず、見るだけでビクッと体が波打ってしまう。


 誰だ?

 俺を助けてくれたのか!?


(さっきの奴と関わっていても、ろくな事にならないからな)


 喋り方は若干乱暴だが、なんと澄み切った声なんだ……。


 お嬢さん、助けてくれてありがとう。
 お礼にをしてあげよう。いや、させて下さい。


 かつて無謀にもツィ様にした願いを言ってみる。

 どうせこれも夢、もしくは死後の世界だ。

 そう、俺は自由だ!


 キョトンとした可愛い表情とともに、切れ長の目を丸くする美しいお嬢さん。

(キス……!?)

(アッハハ! まさかそんな事を言われようとは)


 言いながら、この女神も満更ではなさそうだ。

 そして……頰を赤らめた―――気がするぜ。


(面白い奴。この私にそんな事を言ったのは、覚えている限り一人しかおらんぞ)

 ドキドキ……
 なんか、イケそうな気がする。

 一人いたのが気になるが。

(人と触れ合うなど何百年振りか)

(そうだな……お前なら……いいぞ?)

 なんと!

 快諾!! まさかの!!

 死後の世界、バンザイ!!


 思わずにやけてしまう。ヤバい。
 この顔を見られたらまた『エロ隊長』とか言われちゃうな。

 ま、でも
 ここには準備OKの女神と俺しかいない。


 音も無く、目の前までス―――ッと降りてくる。
 体の線がとても細い。華奢だ。


(マッツ!)

 リディアの声が聞こえる気がする。

 ごめんよリディア。愛してるよリディア。
 先立つ不孝を……。


 ではお別れもすみました。

 失礼して……

 お嬢さんの肩と腰に手を回し、くちづけの体勢に……

 俺の眼前で目を瞑る絶世の美女。
 女神様もキスする時は目を瞑るんだな。


 では……いただきます!


「……バカマッツゥゥゥゥゥゥゥ!!! 何してんのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 ガッツーーーーーーーーーーーン!!!


 俺の大好きな声と共に頭に強烈な衝撃を受け、俺は目覚めた―――

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