神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第3章 英雄

マッツ 対 《戦闘狂》超人ヴォルドヴァルド(1)

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 アルの野郎め……致命傷ではないとは言え、正直、死にかけた。

 しかし、他のみんなも上手くやったようだ。近くに闇の波動の気配は感じない。
 だが、少し離れた場所に2人ほど、そしてこれは……ヘルドゥーソか? 奴がいるようだ。リディアに頼み、急ぎ、クラウスを呼んできてもらう。

 まず、ドゥルーブと俺を治してもらい、アルと暗殺者アサシンの後始末をドゥルーブに頼む。

 その足でリタと合流、シータ、マジュムル、エイゼルは残し、イシャン、アイラにケルベロスの後始末を頼む。

 ラーヒズヤの所へは誰も来なかったらしく、ヘンリックがイライラしていたようだ。ラーヒズヤに事の次第を簡単に報告しておく。

 全員で『帝王の間』に行き、ヴィハーン皇帝にも顛末を報告した。ヒムニヤが俺の所に駆け寄ってくる。

「マッツ、待っていた。よく無事だった。奴らはここより少しだけ東、別塔か? その辺りだ。気配を視るに、ヴォルドヴァルドもヘルドゥーソもいる。急いだ方が良い」

 珍しく焦っている感じだ。

 ヴォルドヴァルドを狙うという事は、超人同士の喧嘩……な訳はないだろうな。やはり目的は俺達と同じって訳か。
 道理で何度も出会う訳だ。

 ヒムニヤを加えて万全の態勢となったパーティメンバーで、急ぎ別塔に駆けてきた。
 だがその途中で、闇の気配がスッ……と消えたのを感じ、ヒムニヤと目が合う。
 気が焦る。

 別塔の広間では、以前、ここで見た黒い鎧が床に散在しており、中央で仰向けに倒れているデカい男が見える。
 瞬時に、鎧を剥ぎ取られたヴォルドヴァルドの本体だろうと推察。そしてすぐ傍には、ゴビンとアクシェイが気を失って倒れていた。

「ヴォルドヴァルドッッッ!!」

 俺達は叫びながら駆け寄り、ヴォルドヴァルドの身体中に紫色の斑点が出ているのを視認する。

「ゴビン様とアクシェイ様の『闇の干渉』は消えたようだ。クラウス、治療を頼む」
「了解です!」

 そう、クラウスに頼んでおき、ヴォルドヴァルドに声を掛ける。

「おい、大丈夫か、おいッ!!」
「う……むむ……」

 気を失っていただけのようだ。薄目を開け、俺達を見る。

「……お前達は……この前、来た奴らだな」

 何だ。凄い違和感……。
 こいつ、こんな静かな話し方をする奴だったか?
 ひょっとして、無茶苦茶弱っている……?
 大丈夫か!?

 しかし……

「お前、そんな顔だったんだな……フルフェイスの兜で隠すのは勿体無いぜ」

 そう、ヴォルドヴァルドは体躯こそ並外れてデカイが、バランス的には均整の取れた体型をしており、何より非常に男前だった。
 イシャンのように童顔イケメンな感じではなく、芸術的な彫刻のように雄々しく、鼻筋の通った短髪の美形だった。人間の見た目で言えば30ちょい位だろうか。もちろん、何百年と生きているのだろうが。

「なに……? おお、しまった。これは恥ずかしい。鎧を剥がされたまま、気を失ってしまったか」

 いそいそと、鎧を身につけ出すヴォルドヴァルド。
 斑点が何かはわからないが、弱ってはいるようだ。だが、様子を見る限り、どうやら大丈夫は大丈夫らしい。

 何が恥ずかしいのか俺達にはさっぱりわからない。別に全裸という訳ではない。多少は薄着だが、ちゃんと上下とも服を着ている。
 この寒い季節に上が半袖というのもどうなんだと思うが。

「マッツ、この紫の斑点は東の方に存在するいくつかの植物、昆虫を掛け合わせた混合毒のようです! とりあえず、毒を治します!」

 クラウスが解毒しようとする。……が、それにヒムニヤが口を挟む。

「待て、クラウス。おい、久しいな、ヴォルドヴァルド」

 え? 治療の前に挨拶?

 物凄い違和感を覚えるのだが、

「む?」

 ヒムニヤが声を掛けると、ヴォルドヴァルドの鎧を付けようとする動きがピタリと止まる。

 そして、ゆっくりとヒムニヤの方を見て、明らかに目が泳ぎだす。

「おお……おお! ヒッ……ヒムニヤ!! お、おお? 何故、ここに……いや、俺は、何も、悪い事は、してないぞ??」
「フフ……嘘をつけ。まあ、それは後だ。ヘルドゥーソが来たろう? やられたのか?」

 しどろもどろのヴォルドヴァルドに手厳しく、しかし言外に労わる優しさを込めてヒムニヤが問いかける。

「いや、やっつけたぞ。そこに転がっている2人とまとめてな」
「何だと?」

 怪訝な表情を浮かべ、何か考えるヒムニヤ。だが、ふと笑顔になる。

「そうか、ともかく無事でよかった」

 そう言われて、喜ぶよりもホッと安心した顔をするヴォルドヴァルド。
 この2人の事情は知らない俺達だが、明らかな上下関係が目に見えるようだ。

「それで、お前達は何しに来たのだ?」

 前のようなトボけた感じではなく、素直に聞いてくるヴォルドヴァルド。
 本当に人が変わったみたいだ。

「いや、こっちに闇の波動を感じ、お前がやられてんじゃないかと思って急いで来たんだよ」
「ほう? まさかとは思うが……俺を助けに来たとでも?」
「まあ、早い話がそういう事だ」

 そう言うと、紫色の斑点が痛々しい腕を顔の前で振り、片目を瞑って笑うヴォルドヴァルド。

「冗談だろ、人間め。誰が誰の心配だって?」

 言いながら、鎧を装着し、兜を被ろうとする。

「おい、やめろ! かぶるな、面倒くさい」

 ヒムニヤに叱責され、ビクッとなるヴォルドヴァルド。

「いや、俺は……無敵のヴォルドヴァルドだ。その為にはこの鎧が必要なのだ!」
「何が無敵のヴォルドヴァルドだ。おい! それをつけたら……どうなるか、わかっているだろうな……」
「!!」

 最後のくだりは暗殺者アサシンの如き、冷たく睨みを効かして言い放つヒムニヤ。

 タラ~~~っと額から汗が流れ落ちる巨人。

 ……が、意を決したのか、ズボッと兜を被り、おもむろに立ち上がる巨人。

「ウゥゥゥム……俺はヘルうどんにやられたのか……?」

 急に首を振り、よくわからない事を言い出す。

 ヘルうどんって何だ??

「……誰だお前達。俺はお前らにやられたのか?」

 チッ。

 後ろで舌打ちが聞こえる。見ると、ヒムニヤだ。苦々しい顔をして、しきりに舌打ちをしている。そして何故か、ヴォルドヴァルドに見え見えの嘘をつく。

「ああ、そうだ。お前は私達に負けたんだ。おとなしく神の種レイズアレイクをマッツに渡してやれ」
「ダメだッッ!! やられた記憶がない。もう一度、戦え!!」

 チッ!!

 さっきよりも大きな舌打ち!
 恐る恐るもう一度振り返ると、くっっっきりとヒムニヤの額に癇筋が浮き出ている。

 怒ってる……怒ってるぞ……。

「クックック。いいじゃないか。前回、戦えなかったんだ。やろう、マッツ」

 悪そうな顔で槍をしごきながらヘンリックが出てくる。
 おそらくこいつは闇の波動をまとった奴らとの戦いに参加できず、ストレスが溜まっているんだ……。

 どうしたものか。

 こういう時はヒムニヤ様に……。
 あ、今、メチャメチャ機嫌悪いんだったか……。

「おい、ヴォルドヴァルド。お前が負けたら神の種レイズアレイクを渡す、と約束しろ。今から戦ってやる」

 ひぃ。宣戦布告!!
 俺、さっきまで死にかけていたというのに……。

「よし、交渉成立だッッ!! 受けて立とう!!」
「何が交渉成立だ、馬鹿者め……」
「むっ、デジャヴ。最近、そのセリフ聞いた覚えが……」

 ヴォルドヴァルドーヒムニヤ間で話がまとまってしまった。
 ヒムニヤは、腕を組み、不機嫌さを隠そうともせず、俺の方を向く。

「マッツ、聞いての通りだ。ぶちのめしてやれ」
「いや、ぶちのめすと言っても……」
「簡単に説明するぞ。おおよそ今のやり取りでわかったと思う。奴の本体は素直で悪い奴ではないのだが……鎧をつけると別の人格、ハッキリ言うと只の戦闘バカになってしまう。記憶も曖昧だ。だから何度も同じ話をしてしまう」

 な……なるほど。

 全て、合点が行きました……。

「前にも言ったが奴の本体は魔法無効。そしてあの黒い鎧は『魔人の鎧』といって、呪いがかかっている。常人が身に付ける事はまず不可能。ヴォルドヴァルドは意識混濁と記憶齟齬を起こす代わりに、強力な魔力の上昇と物理無効を得ている。あいつを倒すには鎧を剥がして、本体に物理の攻撃をあてる必要がある。もしくは奴に参った、と言わせるか、だ。物は試しだ。一度、総攻撃をかけてみるといい」
「わ、わかった」

 これはもう、やるしか……ないか。

 ヴォルドヴァルドを助けには来たが、どっちにしろ、やるつもりだったんだ。


「行くぞぉぉああ!! ヴォルドヴァルドッッ!!!」

 ヘンリックが飛び掛かる!!

 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!

 槍の乱れ突き!!

 ああ、なし崩しにやりやがった!!

 カンカンカンカンカンカンカンカンカン!!

 しかし、さすがに何とか言う槍術の始祖なだけあり、全ての攻撃を見事に捌くヴォルドヴァルド。

 そして合間に繰り出す槍の凄まじさ!!

 ガガガガガガガガガガガガッッッ!!

 だが、ヘンリックも槍一筋の男、こちらも見事に捌く!


青竜剣技ブリュドラフシェアーツ!」

 ヘンリックに当たらぬよう調整し、ヴォルドヴァルドを中心とした扇状にシュタークスのコピーを発現させる!

クライシス!!!」

 ズドドドドドドドドドッッッ!!

 一気にヴォルドヴァルドに向けて放たれる!!


「セェヤッッ!!」

 リタとアデリナの弓矢の連射、連射!!!

 ビュンビュンビュンビュンビュンビュンッッッ!


「みなさん、一旦、退いて下さい!!」

 エルナが叫ぶ!
 横にいるリディアの全身を、何色とも表現できないオーラが包み込む。


「『爆発アネヴォムライト』!!!」

 古竜の大森林でリザードマンを相手に見せた超、超強力な破壊魔法。

 半透明のドームがヴォルドヴァルドを包む!!

 ドドドドドドドドドドドド!!!

 ドォォォォォーーーーーン!!!!

 ドンドンドンッッドンドンッッ!


 凄まじい爆発音が鳴り響き、何度も爆発を繰り返す。これはさすがにヴォルドヴァルドでも……。

 だが、数秒後、爆発が終わり、煙の中から姿を現したのは……


「攻撃は以上か? なら、行くぞ?」


 あれだけの攻撃を受けてかすり傷すら付いていない黒い鎧。


 バケモノめ……

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