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第3章 英雄
マッツ 対 《戦闘狂》超人ヴォルドヴァルド(2)
しおりを挟む「攻撃は以上か? なら、行くぞ?」
あれだけの攻撃を受けてかすり傷すら付かないなんて……
必殺の『爆発』を仕掛けたリディアが愕然としている。だが、そのリディアの肩を抱き、エルナが冷静さを保っているのが救いか。
「魔法無効、物理無効とはこういう事だ。しかし奴の場合、攻撃も用心せよ」
後ろからヒムニヤが静かに口を開く。
そして、ヴォルドヴァルドがあのデカイ槍を鉛筆を回すが如く、軽々と振り回す。
「水芒……」
!!
急に修羅剣技のようにスペリングし出すヴォルドヴァルド!
奴の槍に水が飛沫を上げてまとわりつく。
さながら、高速回転する水車のようだ。
「地竜剣技!!」
このタイミング、俺しか防げない!
「『豪砲』ッッ!!」
リッチやヘルドゥーソが唱えていた『水神の極撃』のような、凄まじい水圧の大砲が放たれる!
だが、奴ら程の威力はないと見た。
「『岩砕』ァァ!!」
巨大な岩盤を魔力で構築!
全ての水砲を吸収し、弾け飛ぶ!!
「やるではないかッ!」
笑っている……かどうかはフルフェイスなのでわからないが、楽しんではいるようだ。
つまり、本当に戦闘狂であり、尚且つ、まだまだ余裕がある、という事だ。こちらの攻撃が何もヒットしていないのだから当たり前と言えば当たり前だ。
「『絶対魔法防御』!!!」
俺達の前に虹色のバリアが張られる。
ヒムニヤだ。
全ての魔法を完全に遮断するバリア!
「ヴォルドヴァルドッ! お前の魔力もこれで無効だ。お前の六芒槍術は魔力だけではあるまい。槍術だけでこいつらに勝てるか!?」
分かり易く挑発するヒムニヤ。
一瞬、動きを止めるヴォルドヴァルド。
だが……
左手をかかげたかと思うと、真っ赤な槍がどこから出てきたのか、奴の手に収まる。
「あれは……レベッカ!!」
ヒムニヤが驚きの表情を浮かべる。
「グワハハハッッッ! ヒムニヤッッ! 俺がこのドラフジャクドで見つけたこの槍を知るまい。これこそは魔力無効を無効化し、更に魔力を吸収する魔槍『レベッカ』!!」
「いや、今、ヒムニヤ、知ってたぞ」
一応、突っ込んでみる。
「何だとッッッ!!」
その一瞬の隙間をヘンリックが突く!
キィィィィィィィィン!!
かち上げられ、宙に舞うレベッカ!!
そして……
何とレベッカはヘンリックの手の中に……!!
「これで……どうだ?」
笑いもせずにレベッカを携え、構えの姿勢を取るヘンリック!
「返せッ!」
「ダメだッッ!!」
前に言われたのをそのまま返してやった。
ぐぬぬ、と言いながらも、どうやらまだ余裕がある様子のヴォルドヴァルド。
「……フフ……知っているか? 魔槍は、主人の所に戻るのだ」
「何だとッッ!!」
もう一度、ヴォルドヴァルドの真似をしてみる。
……本人は真似されている事に気付いていないようだが。
「主の元へ……帰ってこい、レベッカッッ!!」
再び、手を掲げ、ヴォルドヴァルドが魔槍を手の中へ発現させようとする!!
……
「どうした? レベッカとやら……俺の手から離れないが」
ヘンリックが手元の赤い槍を見ながら、ポツリと言う。
「何だとッッッ!」
本家の『何だと』が出た。
「帰って来い! 帰って来い、レベッカ!!」
必死になるヴォルドヴァルド。
シーン ……
手をかざしたまま固まるヴォルドヴァルド。だが、状況が変わらないと見るや、騒ぎ出す。
「ヒムニヤァァッッ! お前の申し出、受けて立とう! 槍術のみで相手してやるッッ! 来いッッ!!」
勝手な奴だ。
だが、単純な腕力勝負なら願っても無い。
この状況を作り出したヒムニヤはさすがだ。
「よし、行くぞ! ヘンリック! リタ!」
「おうよ!」
「私は後ろから行くわ!」
この3人で力押しする!
そこにヒムニヤの助言が重なる。
「ヴォルドヴァルドは毒で弱っている。逆にお前達は私とクラウスが常にヒールしてやる。皆、鎧の継ぎ目を狙うが良い」
お、おお……。
なんとこの状況まで想定して、クラウスが治療するのを止めたってのか。凄すぎるだろ。
シュタークスで斬りつけ、レベッカで突きまくり、双剣で鎧の継ぎ目を斬り、突く。
ガガガガガガガガガガガガッッッ!!
カンカンカンカンカンカンッッッ!!
キンキンキンキンキンキンキンキンッッッ!!
だが、なるほど。
言うだけの事はある。
この3人で間断なく攻めたてて、なかなか攻勢が取れない。
無論、一撃も当たらない、という事はないのだが、物理無効の鎧の壁に阻まれ、有効打を加える事が出来ない。
武術も超一流か。厄介だ。
そして ―――
どれほどやり合っただろうか……
数時間はたった気がする。
俺達は一切、体力が減っていない。クラウスとヒムニヤ、エルナ、リディアのおかげだ。
逆にヴォルドヴァルドは、疲労と毒により、体力劣化が著しい。また、時々、目の当たりに飛んでくるアデリナの矢にかなりストレスをためているらしく、癇癪を起こしている。
そして、ついにこの戦いは終わりの時を迎えた。
千日手に焦ったのか、ヴォルドヴァルドが中途半端な攻撃、ニュッとヘンリックへの突きを出す!
それを見逃さず、ヘンリックが槍をからめ、宙に飛ばす!!
魔槍バンデッドがついにヴォルドヴァルドの手から離れ、遥か後方に飛んで行った!!!
「フンッッッ!!!」
好機と見たヘンリックが、ヴォルドヴァルドの喉元へ一撃!
だが、ヘンリックは絶好のチャンスに焦ったか、いや、むしろ、あえてそれを狙い、ヴォルドヴァルドが隙を作ったのか。
肩口への突きを躱し様、魔力を最大限に込めた右手の一撃をヘンリックの心臓目掛けて打つ!!!
!!!
ヤバい! ダメだ、それは!!
それを食らうとヘンリックが死ぬ!!!
その右手を掴みに行くが、間に合わないッッ!
心臓に到達するかに見えた拳は、しかし、直前で何かに弾かれる!
だが、ヘンリックも後方に吹っ飛んでいく!
ド――――――ンッ!!
一瞬遅れたが、ヴォルドヴァルドの右手首を固め、肘を内に折り、その勢いで俺の肘を兜と鎧の継ぎ目へエルボーの要領で打ち込む!!
そのまま体重を預け、俺の右足をヴォルドヴァルドの右足に外側から引っ掛けて押し倒す!!
兜を肘でねじり上げ、隙間を作ると、阿吽の呼吸でリタが剣を捻じ込み、本体に刺さる寸前で止める。
「ウゥム……あっぱれ。参った!!」
そこでようやく、本当にやっと、ヴォルドヴァルドが参ったし、長い長い戦闘が終わった……。
後から聞いたのだが、ヴォルドヴァルドのヘンリックへの致死の一撃を防いだのはヒムニヤだった。
だが、魔力が込められている事に気付き、中途半端なバリアしか間に合わなかったらしい。ガード出来なかった残りの打撃を食らってヘンリックは吹っ飛んでしまったとの事だった。もちろん、即座にクラウスのヒーリングがかかっていたのだが。
「ヴォルドヴァルドッッ! 約束だ! 神の種をマッツに渡せ!!」
ヒムニヤの怒号が飛ぶ。
「わかっているッッ!」
鎧ヴォルドヴァルドは、ヒムニヤを怖がらないんだな……。
と思っている間に。
ヴォルドヴァルドの右手に顕現する極彩色の水筒。
「水筒? バケツも、どうかと思ったが、次は水筒か……」
言いながら、神の種に近寄り、水筒を手に入れようとした瞬間。ヒムニヤの眉がピクリと上がったかと思うと、
「いかん! それを引っ込めろ、ヴォルドヴァルドッッ!!」
ヒムニヤの叫び!
そして……突然の闇の気配!!!
ドッシュゥゥゥゥ!!!!
目の前を黒いモノが通り過ぎた、と思った次の瞬間、まさに今、手に取る寸前だった神の種が無くなっている事に俺とヴォルドヴァルドが同時に気付く!
(クックク。御苦労、御苦労)
(これは私がいただくよ?)
(不満なら……取り返しに来い、マッツ・オーウェン!!)
……
「「「ヘルドゥーソ!!!」」」
「ヘルうどん!!」
バッシュゥゥッッッ!!
一瞬で現れた奴の顔が、すぐに消えて無くなる。そして、あの嫌な気配も。
こうして2つ目の神の種も、俺達の手には……入らなかった。
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