108 / 204
第3章 英雄
次の『神の種』(2)
しおりを挟むヴィハーンの近侍に案内してもらった応接間に順番に座る。
ヴォルドヴァルドはデカすぎるので、地べたに胡座をかいて座っていた。超人にしては扱いが雑な気もするが。
ドフッッ!
おお~~~フカフカのソファ!
「あ~~~疲れたぁぁぁ~~~!!」
アデリナの声。
「全くだ……」
今はもう、夜。
ここ数日の密度が濃すぎる。
……疲れた。
このまま目を瞑ったら寝てしまいそうだ。
「さて、マッツ。今後の事だが……どうするつもりだ?」
俺の向かい側に座ったヒムニヤが、神妙な面持ちのまま、言葉をかけてきた。
「まあ、ちょっとここで休ませてもらったら、次の神の種を探しに行かなきゃいかんだろうな。それがディミトリアス王からの命令だから」
「それなんだが……」
そこで、この城のメイドが全員に紅茶とお菓子を運んできてくれる。
紅茶はヒムニヤの好物だ。
パァーッと笑顔になり一口すする彼女は、先程まで鬼の形相でヴォルドヴァルドを叱っていた人物と同じには見えない。
「おっと。話を続けよう。マッツ、次の神の種だが、実はまだこの世に発現していない」
「え??」
同時に存在するものかと思っていたのだが……。発現時期に『ズレ』みたいなものがあるという事か。
「そもそも、神の種って、あと何個あるんだ?」
「神の種は全部で4つ。ミラー大陸の方に1つ、これがまだ発現していないと言った奴だ。あと半年から1年程は現れないはずだ。そして『世界の眼』と言われる場所に1つ。こちらはもう発現している」
ありゃ?
じゃあ、そっち、先に行けばいいだけか?
ふと左肩に心地良い重みを感じる。
見るとアデリナの頭だ。
どうやら寝てしまったらしい。
フフ……起こさないようにしないとな。
「『世界の眼』と言えば、海にポッカリ穴が開いている、とかいう嘘臭い場所だな?」
「ああ。少なくとも今のお前達では神の種まで辿り着けんだろう。順番的には最後になるはず……もしくは諦めるか、だな」
「ふーん。どうして行けないんだ?」
そこで、俺の目を見据え、ティーカップを上品に受け皿に置くヒムニヤ。
「理由はいくつかあるが……まず単純に、今のお前達ではそこにいるモンスター共に力負けする、からだ」
……
「そんなに?」
「ああ」
…………
「マッツでも?」
リディアも懐疑的なようで、ヒムニヤにそんな事を聞いている。ボスならまだしも、一般モンスター、いわゆる雑魚モンスターにこのパーティで負けるなんて事があるのだろうか。
「うーん。マッツでギリギリだろうな。しばらくは戦えるかもしれない。だが1日もつかどうかだと思う。いや、1日は無理か」
思案しながら恐ろしい事を言い出す。
そんな強いのがいるの?
諦めたくなってきたぞ。
「しかもあそこは、ヘルドゥーソが居る所に非常に近い所なのだ。私も詳しくは知らないのだが、『世界の眼』にある神の種は、何らかの事情があって奴自身には手が出せないらしい。お前達が取りに行けば、またあいつが横取りしに現れるかも知れんな」
うーむ。
出来る事なら、もうあの野郎とは関わりたくないんだけどな。
「しかしそれでは、俺達も動けないな。どうしたものか」
「そこで提案なのだが」
おお!
さすがヒムニヤだ!
何か考えてくれていた。
「お前達、半年程、ここで過ごす気はないか?」
ガバッ!!
ドテッ!!!
「あぅ! いったぁ~……あれ? 私、寝てた?」
「あ、ごめんよアデリナ」
あまりの事に身を乗り出してしまった。
アデリナの頭を撫でて肩を抱き寄せてやると、半目になってゴロゴロと猫のように懐いてくる。
そして考える。
半年間、待機か……。
時間はもったいないが、確かに、発現前の何も無い所に行って通り過ぎてしまったら、後から見つけ出すのは至難の技だろう。
そうするしかないか。
しかし、そこでふとヒムニヤの事が気になった。
「ヒムニヤは……どうするんだ?」
「私はお前達がここにいる間は、一緒にここにいようと思う。短い旅だったが本当に楽しかった。もう少し一緒に居たい。そしてもし、お前達が望むならだが、その間、ヴォルドヴァルドと共にお前達を鍛えてやっても良いと思っている……が、どうだ?」
「是非! 頼むッッ!!」
「私もです!」
即答でヘンリックとクラウスが答える。
「ヘンリック達の言う通り、それは俺達にとって願っても無い話だ。腰を落ち着けて、直接、超人に修行してもらえるなんてな。しかし、そこまで甘えていいのかな」
「いいさ。お前達はそれだけの事をした。竜の住処を取り戻してくれ、私を闇の世界から救ってくれた。本当に感謝しているんだよ、マッツ」
そうか。
負担にならないなら、頼むか。
ヴォルドヴァルドの意見が入っていないようだが、きっとヒムニヤがやれと言えば断れない感じなんだろうな。
「わかった。是非、頼むよ」
その後、皆で紅茶とお菓子をいただく。
しばらくして訪れたメイドさんにそれぞれの部屋へ案内され、俺達は泥のように眠ったのだった。
―――
それから3週間後、12月後半に入り、新年も近くなってくる。
慌ただしさを見せる中、ドラフジャクドの国全体に新たな祝日が制定された。
11月30日は『竜の日』 ―――
皇帝は『剣聖の日』を推していたのだが、剣聖はこれからも次の代へ次の代へと移り行くものであり、いずれの人間もマッツ殿の様な素晴らしい方とは限らない、という理由で却下された、との事だった。
また、ラーヒズヤとイシャンは『救国の日』を推していたらしい。
が、遥か昔、聖女リンに救われたのはどうするんだ、という話になり、最終的に無難なこの名前に落ち着いた、とヴィハーンから教えてもらった。
いや、そんなに持ち上げられても困るんだがな……。
まあ、悪い気はしない。
そして、その夜、国をあげての酒宴が主城にて開かれた ―――
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる