神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第4章 聖武具

闇の断崖(6)

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「ハァ~~~終わったぞ~~~」

 疲れた……

 ようやく全員を起こし終える。
 五百人ほどいただろうか。

 1人1分程としても、ざっと8時間以上はかかった。
 参った。

 だが、背中のリンリンは元気いっぱいだ。

「お疲れさま!! マッツにクラウス!! お主達、本当に凄いぞ!」
「ありがとうございます。でも貴女の応援のお陰ですよ」

 クラウスの言う通りだ。
 彼女の応援のおかげで俺もクラウスも頑張れたと思う。

「全くだ。ありがとう、リンリン。お前がいなかったら、もっと大変だったよ」

 顔を背中に向けてそう言うと、

「ええぇぇ!?」

 何故か驚くリンリン。

「え?」

 何だ。
 俺がお礼を言うのがそんなに不思議か?

 顔を真っ赤にするリンリン。

「面と向かってそんな事を言われると……照れちゃうの……うふ」

 ふふ。
 年相応の笑顔、可愛いもんだ。

「さぁて……皆さん、絶対に手を離さないでくれよ?」

 救助した全員に向かって改めて念押ししておく。

 そう。この世界ではクラウスから離れたらおしまいだ。全員で最も大きな船に乗り、数珠つなぎで手を繋いでいる。

「どうするのでしょうか?」

 俺に近い水夫が恐る恐る尋ねてくる。

「これが正解かどうかわからないが……俺の剣技でここをブチ破る。少なくとも前回、それで脱出した」
「ええ!? 大丈夫ですか? それに万が一、ここを脱出したとして……我々、海の真ん中に放り出されたりしませんかね……?」
「わからん!! ……でも、大丈夫だと思うよ。あんた達は。脱出できたら、きっとあんた方は船の中だ」

 そう。ヒムニヤの時もそうだった。
 現実世界では、棺の中のままだった。

 ただ、あの時と違うのは、ヒムニヤは意識だけがこの世界に取り込まれた、という点だが……ま、憂いていても仕方ない。念のため、船に乗っている事だしな。

「……むしろ、やばいのは俺達だ」

 そう。

 この世界に入ってきた時、俺達は壁に向かって飛び込んだ。
 現実世界では元通り、というなら、俺達は何もない海の上に投げ出される事になる。

「ヒィィ……そりゃゾッとしないですね……」

 闇の世界にも動じない程の成長を遂げたクラウスがビビっている。

「ひょっとして泳げないのか? クラウス」

 もしそうだとすると、結構シャレにならんかもしれん。周りに船が大挙して発生する筈だから、救助されるまで波の荒い海の上で頑張らねばならないが。

「う――あまり、得意ではありませんね」
「リンに任せるが良い!」

 不意に威勢良く、片手を上げるリンリン。
 この子の事だ。
 何か考えてくれたのに違いない。

「わかった。任せるぞ」
「えッッ? 何か聞かないのか、マッツ」
「信用してるよ、リンリン」

 もう一度、肩越しにそう言うと、またまた真っ赤になる。腕まで真っ赤だ。大丈夫か?

「よし、皆、手を離すなよ! リンリンも俺を離すな!」

 そう叫んで、シュタークスを振り上げる。

「リンクス・ナラ・ファミュラ・レイネア……」

 シュウゥゥゥゥゥゥ―――

「ラクティア・ラ・ラ・メイデン! 魔竜剣技ダヴィドラフシェアーツ!!!」

 キ―――――――――ン!!

「行ったれ―――! マッツ!」

 リンリンが片腕を上げ、ゴー!の指令を出す。
 言われるまでもない!

 闇の世界など、俺には通じない!

「『天魔滅殺ヴァルティマ・レイ』!!!!」



 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンンン!!



 闇の断崖が裂け、光が辺りを包む!

 以前も経験した、目も開けていられない程の明るさに照らされる。


 そして ―――


 ザッバァァァァァァ―――ン!!!


 波が荒ぶる海の真ん中、『闇の断崖』に入る時に船からジャンプした高さ辺りの場所へ、予想通りに俺達は放り出された。

 興奮しているためか、全てがスローモーションに見聞きでき、自分が落下している事も認識できる。

 海面へ向かいながら周りを見ると、どうやら今は夜、そして、ちらほら船が見える。

 あの空間で救い出した船が一斉に戻ってきたのだ。
 船員や客達は皆、それぞれ元々乗っていたであろう船にいるようだ。無事、帰ってきた事への歓声があがっているのも聞こえる。


 そんな中、俺達はそのまま海へと……

 落ちない。
 海面に近いが、海ではない。

「うわわわッッ!!」

 クラウスの悲鳴があがる。
 何かの背中にストン、と落ちた。

 飛竜ワイバーン? いや、手触りの良い毛並みがある。鳥か?

「グリフォンじゃ!! 『闇の断崖ドンクル・クリプト』の中から召喚し、待機させておいたぞ! 場所もピッタリッッ!!」

 ウォォォォォン!!

 一声、吠えて羽ばたき出すグリフォン!

 胴体がライオンっぽい四足動物の形をしている上、かなり姿勢良く飛んでくれるため、ドラゴンと違って非常に乗り易い。

「どうじゃマッツ! お主の信頼に応えられたかのう?」

 背中から俺の顔を覗き込みながら、得意げな表情を見せる。

「ああ! やっぱり凄いな、リンリン! 完璧じゃないか!」

 そう言って頭を撫でてやる。

「ひゃ~~~……このような温もりは久々じゃ!」

 頰っぺたを擦り付けてくる。


 この歳で親がいないんだ。人恋しいだろう。
 特に何も言わずに、そのままにしておく。


 どうやら優しめの香水をつけているようだ。それに子供特有の、幼くて乳臭い匂いがわずかに混ざり、鼻腔をくすぐる。

 リンリンが俺にピッタリとくっついているため、居辛いのか、いつの間にやらマメは俺の前に鎮座していた。

「クラウス! 生きてるか!」
「……はい! 何とか!!」

 リンリンで見えないが、何とか後ろに乗っているようだ。

 その時、彼方此方から悲鳴があがる。
 海上の船からだ。

 今しがた『闇の断崖』から戻ってきたばかりの船乗りや客達が悲鳴を上げている。

「どうした?」
「隊長!! 沖から!!!」
「すまん、見えん! 何があった?」
「つ……津波です! 高さ30メートル位のッッ!!」

 咄嗟にリンリンが俺から顔を離してくれたおかげで状況を確認できた。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!

 昼間に見た『闇の断崖』とほぼ同じ高さ!
 広大な海の上では、その距離、もう目と鼻の先と言っていい。

 ここに至るまで30秒とかからない。

「ヘルドゥーソのくそったれめッッ……二段構えかッッ! あの壁は壊すとこうなるのかよ!!」
「だから、今回は何もしてこなかったんですね」
「そうだな。道理で嫌な笑いの気配がすると思ったぜ」


 ダメだ。俺達はともかく、船は全滅する!

 よしんば何らかの奇跡で切り抜けたとしても、あの津波がファンジアを襲ったら……


 だが、落ち着いた声が背中から聞こえる。

「リンにお任せあれ」
「え? あれをどうにか出来るのか?」

 正直、魔竜剣技では自信がない。
 横幅が広すぎて、一点に穴を開けたところで何も変わるまい。

「出来るともッッ!!」

 俺に捕まっていた手を離し、両手を天にかかげ、口の中でゴニョゴニョと短く何かを呟いたかと思うと、声高に叫ぶ!

「我に従い、『闇の断崖ドンクル・クリプト』を殲滅せよ!」

 リンリンの体に水色に輝く美しいオーラが宿る。飛竜ワイバーンやグリフォンを召喚する時にはなかった現象だ。


「来たれッッ!!『海竜王リヴァイアサン』!!!」


 言い終わるや否や、船から少し離れた場所の海中から、何かが浮かび上がってくる。

 それは ―――


 見た事もない、巨大なドラゴン

 体の造りは俺が知っている奴ら、アルトゥールやヴァネッサとは根本的に違う。

 首と胴が長く、手足は有るのか無いのかわからない程だ。尾が長く、翼は非常に小さい。

 そして何よりアルトゥール達の5、6倍はデカい!!

 こんな桁外れな生物がこの世にいるなんて……
 いや、そもそもこれは生き物の感じがしない。これは……ひょっとすると『幻獣』ってやつか。

 遠い昔、学校で習った程度の知識だが。

 気配が生き物のそれとは違いすぎる。


 ギリャァァァァァァァァァッッ!!


 ひと吠えし、長い首を海面から大きく突き出し、頭を振り回す。

 これまた長い尾を海中から凄い勢いで出したと思った次の瞬間、そのまま眼前に迫る津波に向かって薙ぎ払う!!!

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 凄まじい勢い、想像だに出来ない破壊力を持つであろう波の攻撃!!!!

 何だ、この圧倒的なスケール感……

 百竜の滝を初めて見たときに似た、非現実的な感覚。


 ドドドドドドドド……

 ドォォォォォォォォォォォォォォンッッ!!!!


『闇の断崖』が作り出した津波にぶち当たり!

 見渡す限り続いていた巨大な津波をものの見事に消滅させる!!!

 信じ難い映像が次々と目に入ってきて処理が追いつかない。

「やったッッ!!」

 クラウスが歓喜の声を上げる。

 リヴァイアサンと呼ばれた竜は、自分の仕事を終えた事がわかったのか、また海中へとゆっくり消えていった。


 しかし、まだ、予断を許さない。

 津波対リヴァイアサンの激突で生じた衝撃で、の波が発生、船は上に下に、凄い揺れとなっている。

 まさに余波、という言葉がしっくりくる、

「うわぁぁぁぁ~~~!!」
「何かに掴まれ~~~!!」
「絶対に離すな! 落ちたら死ぬぞぉぉ!!」

 そうして5分程、波と戦っていた船達だが……


 ようやく、安定を取り戻す。

「あれなら……もう、大丈夫そうだな」
「そうですね。後は自力で帰れるでしょう」

 念のため、低空飛行で落ちた奴がいないか、しばらく海面を確認し、ファンジアに帰る事にする。
 皆、心配している事だろう。

「よし、リンリン。一旦、ファンジアに戻るぞ!」
「おお―――!!」

 グ―――ッッ! と高度を上げて、ファンジアに向かう。
 しかし、ファンジアまで結構ある。この距離、グリフォンにはキツくないだろうか。

 ちゃんとした鳥の方が良かった気がするが……


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