神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第5章 陽の当たる場所に

3つ目の神の種(1)

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 オレストは頭を抱えていた ―――


 マッツ達が王都を出発してから、連日、神の種レイズアレイクの情報が、それこそ止めどなく上がってきていたのだ。

 何せ『魔法の粉』という単語だけの情報だ。どんなものかわからないモノを探す兵士達は、万が一素通りしてしまっては、と、とにかく粉っぽいものを全て報告してくる。

 今日で丸6日、報告のあった場所へ3人と1匹で飛び、リディアが違う、といっては引き返し……を30回以上、繰り返していた。

「こりゃあ、エルトルドー征伐に行った方が楽だったかな……」

 オレストが紅茶を啜りながら、気弱な発言をし出す。

「何を言っとるのだ。お主も次世代の超人候補の1人じゃろ。何事にも前向きなマッツを見習え」

 この数日、密に過ごしてきた為、リンリンが『超人』だという事をオレストは既に知っている。

 とは言え、彼にとってはそれすらも大して興味が惹かれるものではなかった。

「ハッ! 超人なんてゴメンだね! 俺は自由に生きて自由に死ぬのさ!」
「別に超人になったからと言って不自由になる訳ではない。自由になる訳でもないがな」

 ソファの肘当てに肘を置き、頬杖をつきながら口を尖らせ、ジトっとリンリンを睨むオレスト。

「リンリンちゃんはいいなぁ。気ままな旅暮らしでさぁ……」
「騎士を辞めたいの?」

 面白い騎士もいたものね、と思いながらリディアが言葉をかける。

「う~ん。アスガルドも王様も好きなんだがね。騎士ってすごい不自由なんだよねぇ。オリオンを見習って世界を回ってみようかねぇ。リディアちゃんも一緒にどう?」
「お断りします」

 リディアの返事はにべもない。

「お前、リディアに手を出したらマッツに殺されるぞ?」
「わかってるよ! あいつは会って間もない俺を信用してくれている。俺もあいつの期待は裏切らないとも」

 面倒くさそうに手を振りながら言い放つオレスト。


 バンッ!

「オレスト将軍! 魔法の粉の目撃情報が入りました!」

 扉を蹴破らん勢いで、突然、兵士が息急き切って入ってくる。

「ノックをしろ、ノックを」

 頬杖をつきながら片目を開けて兵士の方を見はするものの、一切、動こうとしないオレスト。

「ハッ! 失礼致しました!!」

 コンコンッ

「遅えよ」
「ハッ……失礼致しました」

 いつもならこのやり取りで喜ぶのに……と少し残念そうな兵士。

「こちらの森に小さな名もない池があるのですが、この真ん中で幽霊らしきモノが、粉を辺りに撒きまくっている、と報告がありました」

 地図を出してオレストに見せながら説明する兵士。それを興味無さげに半眼で聞くオレスト。

「ふ~~~ん。幽霊ねぇ……」

 リンリンがマメを抱いて立ち上がる。

「行くぞ、オレスト」
「ハァ~~~はいはいっと」

 リンリンに促され、立ち上がるオレスト。

「次はリンリンちゃんの番でいい?」
「全くお前という奴は……まあ、いいとも」

 どっちが飛ぶか? の話だ。
 これまで殆どオレストが飛んでいたのだが、とにかくガセネタばかりで完全にヤル気が削がれている。

「次は本物だったらいいね」

 リディアが2人に声をかける。
 それを聞いたリンリンがオレストに向かって、

「聞いたかオレスト。リディアの前向きな発言を。お前も見習え。さあ行くぞ」

 両手を広げ、おどけて返すオレストだった。


 ―

 王城から北東へ、歩けば10日ほどの地点。
 3人は4時間程をかけて飛行、言われた場所に辿り着く。

「ふむ……いるな、何か」

 地上に降り立ち、オレストが開口一番、そんな事を言い出した。

 ここは森のど真ん中、確かに小さな池がある。

 木々は濃いが、それほど背が高い訳でもなく、辺りは明るい。

「うむ。ようやく、かもしれんな」

 リンリンも小さい声で囁く。
 ギュッとロッドを握りしめて、リディアは前に進む。

 草を踏み分け、池に近づく。

 すると、池の真ん中で楽しそうに踊っている子供位の背の高さの何かが見える。

 なるほど、確かに人間では無いらしい。
 あのような皮膚の色をした人間はいない。

 全身、綺麗な青色だ。

 それ以外は黄色の長袖シャツにオーバーオール、と可愛らしい格好をしている。

 そしてもう一つ、人間なら池の上を歩けない。


 木の陰に隠れて、オレスト、リンリンの順番で顔を出す。

「なんだか、楽しそうじゃの」

 リンリンの呟きに、その横の草陰からひょこっと顔を出すリディア。

「……」
「何なんだありゃあ。人間じゃなさそうだが、さりとて幽霊じゃなかろう」

 するとリンリンが自分の頭の上のオレストに向かい、

「あれは、精霊じゃ。どうやらこの池についてる精霊らしいが。詳しくはリンも知らん」

 しばらく見ていると、その精霊はセンターのポケットの中から嬉しそうに小さな袋を取り出す!

「……!」

 そして、そのまま中から出てくる粉を池の水一面にかける。

 特に何かが起きる、という訳でもないが、遠目から見ていてもキラキラして綺麗な粉だ。

「どうだ? リディア」

 リンリンがリディアに視線を移す。

「……多分……あれだわ。『タカ』の時と同じを感じるもの」
「そうかい、じゃ、俺が取ってきてやろうか」

 出て行こうとするオレストを、慌ててリンリンが止める。

「待て待て、マッツが言った事を忘れたのか。リン達は確認だけで良い。ここにあるとわかった以上、これで引き返すぞ」
「ああ、そういえば言ってたな。じゃ、引き返すか。ようやくこれで種探しも終わりか~。助かったぁ~~」

 背伸びをして喜ぶオレスト。
 それを見て大きなため息をつくリンリン。

「やれやれ。じゃ、リディア、引き返すぞ」

 コクリと頷いて、そこからゆっくり離れる3人だった。


 ―

 2時間後、彼らは飛行での帰路に着いていた。

「リンリンちゃんの『飛行』は早いなあ。俺とは比べ物にならん。こりゃ楽チンだ」

 オレストが頭の後ろで腕を組みながらそんな事を言う。

 そう。飛行の能力にも個人差があり、特にサイエン、リンリン、ヒムニヤの3人は、ずば抜けて高速の移動が出来る。

「しっかりテン系統の真髄を理解せんと、スピードは出んぞ。……ん?」

 不意にスピードを緩めるリンリン。

「どうした? テン系統がわかんなくなったのか?」

 オレストの軽口に無視を決め込み、口をつぐむリンリン。

 数秒後……

「2人とも気を付けろ。来たぞ、奴じゃ。ヘルドゥーソだ」
「何!?」

 オレストが構える。
 リディアもキッと眉を寄せ、ロッドを握りしめる。

 そしてリンリンが完全に飛行を停止させた。


(フフフ……それほど身構えんでも良い)


 ここは空中。

 目の前の空間に浮き出る、瞼が無く、馬蹄髭のいつもの顔。


(特にリンリン。お前を相手にするつもりは無い)


 フンッと一つ鼻を鳴らすリンリン。

「マッツと敵対している時点で、お主はリンの敵じゃ」


(ほっほっほ。奴はモテるのう……いずれにしても)


(今、この場で戦っても、お互い何の得もなかろう)


「じゃあ、何の為に出て来たんだ?」

 腕を組んでオレストが居丈高に聞き返す。


(ふむ。オリオンの子孫か。お前まで奴の仲間になったか)


(クク。これは益々……我らの決戦の時は近いの)


(ひとつ、マッツに伝言を頼みたい)


「伝言じゃと?」

 怪訝な顔をするリンリン。
 有無を言わさず、攻撃してくるもの、と身構えていたからだ。


(今から『世界の眼』の中、ある場所を見せてやる)


(見たままを奴に伝えてくれれば、それで良い)


 そう言うとヘルドゥーソの目玉の無い左目から、光が放射される。

 そしてリンリン達の目の前にスクリーンが発生、洞窟と思しき場所が映る。ヘルドゥーソの言っている『世界の眼』の中だろうか。


(よぉく…………見ろぉぉ?)


 一際低く、不気味な声を出すヘルドゥーソ。

 スクリーンの映像が何かに引きつけられるように移動、ズームしていく。

「十字架……? いや、誰か磔になっている……?」

 リンリンも目を凝らす。

「アァ―――ッッ!!」

 リディアが両手を口に当て、息を飲み、そして叫ぶ。

「な……何だと、何しやがった、貴様……」

 オレストもワナワナと震え出す。

「あれは……?」

 リンリンには心当たりが無いが、どうやら、この2人は知っている人物らしい。

 今やスクリーン一杯に映し出される、磔になった少年の映像!

 青いローブにとんがり帽子。
 可愛らしい童顔の少年の容姿を持つ老人。


「「コンスタンティンッッ!!!」」


 それは、十字架に腕、胴体、足を括り付けられ、目を閉じて生死もわからぬ《放浪者》コンスタンティンの姿だった ―――

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