神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第6章 魔獄

救出(6)

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 オレストに頼み、コンスタンティンを十字架から降ろしてもらう。一旦、十字架が立っている台座の近くに寝かせたが……

「……」

 コンスタンティンに、例の嫌な波動を感じる。

「クラウス……ひょっとして……」

 後ろからクラウスが近付く。
 そしてすぐに頷いた。

「闇の波動、ですね」
「やっぱりか」

 ゾフィーがいつの間にか背後におり、心配そうにコンスタンティンを見つめている。

「あれ? お前、『遠視』対策で芝居してたんじゃないの?」
「そうだったんだけど……もういいわ! 彼、大丈夫かしら?」
「……ハハ……大丈夫だ、俺達に任せとけ」

 こいつはきっとヘルドゥーソに召喚されたんだろうが、こんなあからさまに反旗を翻すなんて有り得るのだろうか。なかなか面白い奴だ。

 心配そうに小さく頷くゾフィー。
 きっとヘルドゥーソの強さを知っているからだな。

「よし、クラウス、リンリン! 行くぞ、連れてってくれ。他の皆はここを守っていてくれ」

 皆、力強く頷いてくれる。

「アデリナ、マメを頼む。お主にも懐いておるしな。じゃあ行こうか!」
「頑張って、リンちゃん! マメは任されたよ!」

 リンリンがコンスタンティンの頭に手を置く。
 俺とクラウスがリンリンの肩を掴む。
 前にサイエンに教えてもらったように、空いている右手でシュタークスを鞘から抜き放っておく。


 不意に……

 ギュルルルルルルルル……

 世界が捻れる。

 空間が回る。

 クリントートでも感じた、あの気持ち悪い感覚……



 ―――

 来た。もう何度目だ?
 奴の真っ暗な世界。

 折角、ルート『暗闇』を抜けたってのに、また暗闇か。

 ここでは相対的にしか物を識別出来ない。
 取り敢えず、リンリンは俺の左後ろにいる。
 俺の服の裾を後ろから掴んでいる。

 クラウスは更にその後ろから、リンリンの肩を掴んでいる。俺が両手を使えるよう、2人がそうしてくれている。

 そして感じるぞ。コンスタンティンの気配。

「一気に7層まで降りた。どうだ、わかるか? マッツ」
「ああ……わかる。アイツは、こっちだ」

 右手で斜め前を指す。
 リンリンが頷き、俺たち全体が向きを変えることなく、ツ――ッとその方向へ移動している事が感覚でわかる。



 そして、どれ程進んだか……
 時間の概念が曖昧だ。

 見つけた。

 コンスタンティンだ。

 暗闇に浮かぶように横たわる、青。
 薄っすらと光っている感じを受ける。


「来たぞ? 注意せよ」

 後ろからリンリンの声がする。

 もちろん、わかっている。
 みるみる敵意が膨れ上がる。

 ヘルドゥーソ!


(全く……役に立たん魔神も、いたものだ)


 そう言いながらも顔は笑っている。
 全ては予定の範疇か?

「あのさぁ……前から思ってたんだけど、お前、そのヒゲ、全然似合ってないぞ?」

 敢えて、違う角度から攻めてみる。
 こいつの白い馬蹄髭が似合っていないのは本当だしな。


(なに? 髭だと……)


 何やらハッとした顔をするヘルドゥーソ。
 だがすぐにニヤリとする。


(全く……お前は本当にわからんな、マッツ・オーウェン)


(……不思議な奴だ。超人級の力を持ちながら、しかし資質に目覚めているようでもない)


(女の事ばかり考えているかと思えば、いやに鋭い)


「俺を褒め称えるのはそれ位にして、もう引っ込んでろ? 俺達はコンスタンティンを救出に来た。お前のこのくだらん世界からな」


(クク……嫌だと言ったら?)


 瞼がないくせに、笑う時は上下の筋肉の動きで、少し目が細まる。全く腹の立つ顔だ。

「懲りない奴だ。『魔力の暴風域』で縮こまって待ってりゃいいものを……思念体で俺達に勝てるとでも思ってるのか?」


(せえやあ!)


 ジュババババババババッッッ!!


「グァッ!!」

 全員、吹っ飛ぶ。
 リンリンが必死に俺とクラウスを抑えてくれる。

「なんだお前……思念体でここまでの力を……?」

 何が起こったかわからないが、恐らく無詠唱の魔法だ。魔力ダメージを食らった。そしてなんとも言えないで吹き飛ばされる。


(ここは、私の住処に近いのでな)


(地上の数十倍は強くパワーが出せる)


 ほう?

「ここは精神的な別次元の世界だと思っていたが……物理的な距離が関係するんだな」


(フフフ……この世界を構築しているのはミラー系統の応用魔法。擬似的に別空間を作り上げているだけだ。物理、魔力の世界は必ず影響する)


「フン。難しい事はわからんが……とにかくお前が今までの数十倍強いってんなら……こっちもパワーあげていこうか! いくぜ!」


(クックク……軽く前哨戦と行こう。マッツ・オーウェン)


「『氷槍エイスピィア』ァァ!!」

 クラウスのツィ系攻撃魔法だ。
 俺に対して撃った時は地面から氷の槍が生えてきたが、この空間では四方八方からヘルドゥーソに向かう!

地竜剣技エアドラフシェアーツ!!」

 シュタークスを五月雨に降り、魔力の塊、『隕石』を具現化する!

「『魔星塵アーク・メテオ』ォォッッ!!」

 ヒューヒューヒュー……
 ヒューヒューヒューヒューヒューヒュー……

「行けぇぇぇい!!」

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッッッ!!

 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!


(滅せよ我が敵……ホルタル・メリハルタル・リ・トラ)


(『呪霊波動フルゥガイスト・ウェイヴ』)


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 この真っ暗な世界が震える。

 体の芯から恐怖を覚えるような悍ましい震動を感じる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 クラウスの氷の槍、俺の隕石、全てが動きを止め、そしてその場で粉々に砕け散る!

「なにッ!!」
「『精霊王の盾ガイストコニグ・シールズ』!!」

 リンリンがそう詠唱すると、不意に暖かいオーラに包まれる。
 リンリンの魔法は初めて見たが……
 やはり、ヒムニヤクラスか!

 周囲の気味の悪い震動が搔き消える。


(なんだ、リンリン。お前は私の為にひと肌脱ぎに来たのかと思っていたが……?)


 怪訝な表情を浮かべるリンリン。

「は? 何を言っとるのじゃ。リンはマッツが敵対してる時点で、お主は敵だ、と言った筈じゃ!」


(フフフ……そうだったか……? フフ……まあ良い)


(ひとつ……パワー比べといこうか)


(魔界の7つ。来たれ、全てを消し去る大蛇)


(『虹色の魔蛇リーゲン・シュラング』)


 ヘルドゥーソの顔が映る裏側から、7色の巨大な蛇が鎌首をもたげる! だがそれを見たリンリン、少しも慌ててはいない。

「座して最強……盲目の八英。ここに降臨し、全ての邪を打ち払え! 『八葉の賢者アフトブレタ・ワイザーマンズ』!!」

 リンリンがそう叫ぶと、俺達の上下左右に8人の白装束が現れる。
 体中を装束で覆い、露出しているのは手のひらのみ。男か女か、子供か老人かもわからない。

 彼らが掌を大蛇に向けると、蛇達の動きがピタリと止まる。蛇の動きを抑えた彼らが何やらブツブツと唱え始めると、更に蛇は苦しみ出し、そして、何の攻撃も食らっていないにも関わらず、爆発し、消し飛んだ!!

 7匹の蛇を屠って尚且つ、ヘルドゥーソに一撃を加えた賢者。思念体の顔の一部が消し飛ぶ!


(おお! さすがだ、リンリン。私が現世超人の中で唯一、認めているだけの事はある!)


 ダメージを意に介さないヘルドゥーソ。
 吹き飛んだ頭部のあたりが見る間に修復される。


(では、これならどうだ?)


(王の中の王、魔の中の魔、風を纏いて全てを滅ぼせ……来たれ『風の魔王パズズ』!)


 暗闇がまた震える。
 だが、先程のような細かい震動ではない。
 遠くから地震が近づいてくるような、迫り来る恐怖の震動。

 不意に姿を見せる、羽の生えた悪魔のような姿を持つ巨大な怪物! 体は筋骨隆々、黄金の髪を靡かせ、目は白眼がなく真っ黒で気味が悪い。何より纏っているオーラが半端なものではない。

「お主、こんなものまで……」

 ギリッとひとつ歯噛みするリンリンだが、しかし、臆さない。
『大召喚士』と呼ばれるだけあり、召喚合戦では遅れを取らない、とばかりに、赤と白の二色のオーラをその小さな体に纏い出す!

「神の子、二体の竜よ。最強の牙と最強の光を持ち、我が敵を打ち倒し、我らを守れ。『紅の竜・白の竜ロートァドラフ・ウェイバードラフ』!!」

 闇の中に赤と白の光が煌き出した。
 真紅のドラゴン、白光のドラゴンが辺りに炎と光を撒き散らしながら現れる!!

 そして、パズズにブレス、ビーム、とあらゆる攻撃をそれぞれ繰り出し始める。

 だが、魔王と呼ばれるだけあり、パズズもそれらを耐え凌ぎ、闇の魔力を俺達でさえ強烈に感じる風のブレスを吐き、光線を放ち、応戦する。


 こんな大怪獣が戦っているところで、俺達はどうすりゃいいんだ?

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