170 / 204
第6章 魔獄
魔神(1)
しおりを挟むポコポコと何も無い所から生まれ出るモンスター。
これを飛竜に乗り、上空から見下ろしながら進む。
コンスタンティンを救出してから、はや20日程はたった。コンスタンティンはクラウスの治療と、魔神改め、新妻ゾフィーの献身的な介護もあり、完全に復活したようだ。
しかし……
「同じような事、何回も聞くようだけど……ゾフィーはヘルドゥーソに召喚されてるんだよな?」
「ええ」
飛竜の上で嬉しそうにコンスタンティンにしがみつきながら返事をする。
「えっと、聞き方が難しいんだが……一体、お前はどこまで俺たちの力になれるんだ?」
マジマジと俺を見つめるゾフィー。
「そうね……基本的に、ヘルドゥーソに敵対することはできないわ。だからお前達の戦いに参加する事はない」
やはり、そうなのか。
魔神が味方してくれたら心強いんだがな……
そう思うのはきっとこの時点で、この後、すぐに訪れる絶望の予兆を感じ取っていたからかも知れない。
「だが安心しろ。この美貌の『新妻』が応援してやる。それに敵対する事は出来ないが、反抗する事は出来るわ。つまり奴の言う事など聞くもんか!って事ね」
応援されてもな……
だが、少なくとも相手しないといけない奴が減っただけでもヨシとしようか。
そんな事を言いながらも、この20日間は、ほぼ飛竜で移動したため、もうかなり進んでいるはずだ。
時々、恐ろしい鳴き声が聞こえる。
恐らくは、ヘネの書にあった虹竜という奴か。
魂に直接響いてくるような唸り声だが、『世界の眼』の終わりが近い、『魔力の暴風域』がもうすぐそこ、という事でもある。
更に一段と広い、もはや地上かと言わんばかりの広場にでる。
そして……遠くに巨大な鎧武者の姿が見える。
ゾクゾクゾクゾクッッッ!!
あ……あいつだ……
やはり……召喚されていたか……
フゥ……ハァ……ハァハァ……
鼓動が高鳴る。
『世界の眼』の入口にいた魔神テンペラ、そしてゾフィーに会い、覚悟はしていた。
していたが、実際に会うと……体中が震えだす。
「おい、何かいるぜ」
オレストの言葉も遠くに聞こえる。
「マッツ、顔……真っ青よ? 大丈夫?」
リディアが心配そうにしてくれるが、俺と目が合い、何かを悟ったかのように、前方の鎧づくめの巨人を見、そしてヒィッと小さく叫び、震えだす。
「おいおい、どうしたんだ? 大丈夫か、お前ら……」
……大丈夫じゃない!
ハァハァ……あいつだ。
「殴る、蹴る、全ての動作に、超高威力の爆発を伴う。その巨躯は特殊な防御壁で覆われており、物理攻撃には極めて高い耐性を持つ。普通のモンスターは元より、竜を含めてですら、全ての生き物は等しく奴には敵わない、と言われている伝説級の怪物じゃ」
俺の代わりにリンリンが答えてくれる。
「そして奴の最も恐ろしい特性、戦うほどに強くなる、という部分。きっとマッツとリディアはまだ未熟だった頃に、あいつと戦った事があるんじゃろう。だから怯えているのじゃ。可哀想に……」
「フン! なんだ、意外に可愛いとこあるじゃないか、マッツ、リディア」
オレストが鼻で笑うが、馬鹿にしている訳では無い。こんな言い方をする奴なんだ。
「安心しろ、2人とも。今回はこれだけ大勢の仲間がいる。それに奴の攻撃は基本的に物理。物理無効のマメには一切効かん」
フゥ……フゥ……
リンリンが俺の肩に優しく手を置いて励ましてくれる。
申し訳ない……
そうだ。仲間がいる。
マメは物理無効だ。
大丈夫だ。
だが……怖い!
それに途轍も無く嫌な予感がする。
単に俺がビビってるだけならいいんだが……
ギギギギ……
俺達を視認したのか、おもむろに立ち上がる鎧の巨人。
7、いや8メートルほどはあろうかという巨体!
「マッテイタゾ? ミチガエタナ、マッツ・オーウェン。スバラシク、ウデヲ……アゲタヨウダ」
魔神アスラ!!
俺が最も再会したくなかった相手だ。
……だが、敵として会ってしまった以上、逃げるわけにはいかない。
オレストやリンリンの言う通りだ。
ビビってどうする!?
今は頼もしい仲間がいる。
いける!
「降りるぞ!」
飛竜から降りて、アスラを遠巻きに迎え撃つ。
「マッツよう……ビビってんのは凄くわかるんだが、いくらなんでも遠すぎやしないかね。……剣だぞ? 俺達。届かねぇよ」
「……え?」
肩に剣を担ぎ、呆れ顔のオレスト。
百メートル位手前だが……あれ? 遠すぎたか?
ダメだ。
正常な思考が……
吐き気を催し、体を折り曲げてしまう。
「よし、わかった。お前はここでガタガタ震えとけ。俺がやってきてやる」
「オレスト! そんな言い方はないでしょう!」
リタが庇ってくれるが、いや、これだけ言われてもオレストに、じゃあ頼む、と言ってしまいそうで怖い。
旅の間もアスラの無敵感が俺の中で膨らんできたからな。
勝てる所が想像つかない。
「リタ……こんな脂汗タラタラの奴が役に立つと思うか? 立つ訳ねえ……むしろ足手纏いだ。俺が突っ込んでやる。皆、援護しろ」
「……わかったわ。リディアもここにいなさい?」
オレストもリタも、言い方は違えど、俺とリディアを庇ってくれているのがわかる。
クソッ!
なんて情けない隊長だ!!
皆、俺とリディアに一声かけて、アスラに向かって駆け出して行く。
そして目を疑う。
中程まで走った彼らを呆然と見送った俺の目に映ったのは……
大半の仲間が一瞬にして消え去ってしまった光景だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる