神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第6章 魔獄

魔神(8)

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(参ったぜ、この野郎……あんな飛び道具を隠していたとはな……)

 ドシッドシッドシッ

(チッ。無警戒に近付いて来やがって。警戒するまでも無いってことか)

 ドシッドシッドシッドシッ

(傷はクラウスが治してくれた……絶対に食らわせてやる。短足野郎め!)

 オレストの近くまで来たテンペラは、何やら楽しそうにオレストの顔を覗き込み、お―――い、と呑気に声を掛ける。

「なんだあ? あんな程度でくたばっちまったのか? 弱いのう」

 刹那! オレストが半身を起こし、テンペラの額の目に剣を突き立てた!!

 ドスッッ!!

「ぐ……」

 必殺のその剣は、しかし無念にもテンペラの太い指に刺さる。

 オレストの策を読んでいたテンペラが、油断しているように装い、攻撃が第三の眼に来るように仕向けていたのだ。

「おおぉ。いってぇな、お前。指がチクっとしたじゃねえか!」

 そう言いながらもニヤッと笑うテンペラ。

「こんの……クッソ野郎が……」

 そう吐き捨てると、すぐに後転、立ち上がりバックステップし、距離を置く。

「フハハハハ。身軽やのう。だが、そんな事では一生、俺には勝てんぞ!! 向こうもえらい事になっとるみたいだし、もうお前達、ここで終わりだわ」
「なに!?」

 テンペラを警戒しつつ振り向き、リンリン達を確認するオレスト。
 その彼の目に映ったのは、アーク・ギガンテス、デヴィルロード、ネイロ・ヒドラに蹂躙される後衛達の絶望的な姿だった……

「う、うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 その場で立ち尽くし、吠えるしか出来ないオレスト。
 それを見て、更に嬉しそうにニヤつくテンペラ。

 そして再び、巨大なモンスター達がオレストを囲み始めた。


 そのオレストの魂の叫びに、遠く離れていたヘンリックが一瞬、気を取られる。

「隙」

 ザクッ!!

「グッッッ」

 ついに左の肩口に槍を受けてしまう!!

「ふむ。お前は手強い。人間の身でよくぞそこまで鍛錬したものだ。だがこれで勝負ありだ。利き腕で無くてもその傷は私との闘いでは致命的だ」

 エリゴールが槍を立てて、ヘンリックに言葉を掛ける。

「フン。何が……致命的だって?」

 ヘンリック・シュタール。彼が戦いを途中で投げ出した事など、今までに一度もない。

「片手だと戦えないとでも?」

 右脇に魔槍レベッカをピタリと構え、眼光鋭くエリゴールを睨む。

「いや、お前なら戦えるだろう。だが、私相手には無理だ」
「やってみなくちゃ……わからんぜ!?」
「いや、わかる」

 突撃するヘンリック、それに真っ向から応じるエリゴール!

 だが、直前で左にステップしたヘンリック、その場にある足元の拳大の岩を蹴り上げる!

 ブォン!

 勿論、そんなものはエリゴールには効かない。
 穂先で軽く払いのける。

 ヘンリックには、その一瞬の無駄な動きがあれば十分だった。

「てぇぇぇい!!」

 片手で、エリゴールに唯一出来た、針の穴ほどの隙を狙い、一気に踏み込むヘンリック!

 ガキィィィィィンッッ!!

「むぅ……見事な踏み込み。だが、無駄」

 片腕の突撃はあっさりエリゴールに払われ、体勢を崩し、前のめりになってしまうヘンリック。

(ぐ! マズい!!)

 ドスッッッッ!!

「あぐッッ!! ……ぐ……」

 背中から腹にかけて伝わる鈍い痛み。
 エリゴールの槍が自分を貫き、地面にまで突き刺さった事を痛みと視覚で把握する。

 もはやヘンリックは動けない。
 地面に縫い付けられてしまった。

 顔を上げ、エリゴールを睨む。

「惜しいな、少年。生かしてもっと強くなったお前とやりたいが……私は貴様らの抹殺の為に召喚された。生かすわけにはいかん。遅かれ早かれ、お前達の仲間も皆死ぬ」
「何だと……」

 言われてリンリン達の方を見て、目を疑う。
 血を流しすぎて幻覚でも見ているのか……?

 つい先程、リンリンの凄まじい召喚術によって、彼ら周辺の敵はほぼ消滅した事を確認していたのに、いつの間にかまた沸き出しているではないか。

 しかも彼らの居た場所に4体。

 クラウスとナディヤらしき2人は倒れている。

 その後ろにいるあれは……ギガンテスか? その巨体に両足を掴まれたラディカが、力無くダランと空中に吊り上げられている。

 アデリナはデヴィルロード二体から必死に逃げ回っているが、弓を取り上げられているようだ。

 そして……そして……リンリンとリディアがいない。

 彼女達の代わりにそこにいるのは、巨大なヒドラだ。
 更にそのヒドラの3つの首のうち、1つの首が不自然に膨らんでいる!!!

 その膨らみは蛇が小動物を丸呑みした時のそれによく似ている。

 瞬時に悟る。

 2人はヒドラに飲まれた、と。

 そして、自分はそれを救いに行くどころか、全く身動きが取れないまま、意識が途絶えそうだと言う事を。

「何だと……リンリン……リディア……お前達を死なせる……訳には…………絶対に……くっ……マッツ……」

 そこまでいって首から力が抜け、頭が下がる。
 胸から溢れ出る血がヘンリックの視界を覆ってきた。



「ヤバいヤバい! こっちだけじゃない、ヘンリックもオレストもヤバい!」

 そう言いながらもアデリナはデヴィルロードの殴る蹴るの攻撃を器用に避けていた。

 アデリナにとっては、ここが魔力無効でむしろ良かった、というところか。
 本来、デヴィルロードの攻撃は魔法が主体であるため、肉弾のみなら特に武器を持たない彼らから逃げるのは、すばしこいアデリナにとって、さほど難しい事ではない。

 逃げながらも戦局を見て、悲観する。
 いや、絶望といっても良い。

 自分以外、まともに立っている人間はいない。

 リディアとリンリンはヒドラに飲まれたようだ、というのも理解した。

 魔弓ペルセウスはデヴィルロードがしっかりと握っており、返ってきそうにはない。いつもは自分の呼び掛けに応え、何も無い空間から現れるペルセウスの弓がここでは全く自分の手に戻らない。アデリナは魔力無効の地域では聖具を呼び出せない事を悟る。

 そして、仮に魔弓ペルセウスが返ってきたとして、この状況をひっくり返す事など出来ようもない。

(マッツ……どうしよう! 皆、死んじゃうよ!!)

 ガッッ!

 逃げ回っていたアデリナが、何かに躓く。
 ギリギリコケるのを前転で回避、何に躓いたのかを確認しようとして、更に絶望する。

 ゾッ ――――――

 また……沸いた。

 上半身がビキニの美しい女性、しかし下半身は巨大な蛇……ナーガだ!!

「も、もう……無理!」

 さすがの楽天家のアデリナも、そんな言葉を口に出して立ち尽くしてしまう。

 そのアデリナの両横に、更に沸くモンスター、アーク・ギガンテス2体。

「リディア……リンちゃん……私も……マッツ!!」

 そう言って膝から崩れ落ちるアデリナの小さな体を、遂にギガンテスの大きな手が……掴んだ。

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