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最終章 剣聖と5人の超人
剣聖と5人の超人(1)
しおりを挟む虹竜がいた広場から巨大な扉をくぐると、マッツ達が『世界の眼』突入時に降りてきた大きな縦穴と似たようなものがここにも広がっていた。
上を見ると、確かに小さく明るくなっている点が見える。きっとあれがこの縦穴の最上部、そして外の光なのだろう。
「ここは既に『魔力の暴風域』に入っている。皆、心するように」
ヒムニヤが皆に説明する。
魔力無効領域にて参加したヒムニヤとヴォルドヴァルドを合わせ、パーティは総勢15人(+1人)に膨らんだ。
―――
剣聖マッツ・オーウェン。
剣士であり地上最強剣法、修羅剣技の頂点に立つ。
ヘンリック・シュタール 。
槍の戦士であり、六芒槍術の使い手。
リタ・ケルル。
双剣士であり、聖剣ベテルギウスとリゲルの現在の主。
リディア・ベルネット。
テン系魔術師、オリジナルの強力なバフを持つ。
クラウス・シャハト。
ツィ系魔術師。ヒムニヤのオリジナルスペルをいくつか伝授される。
アデリナ・ズーハー。
弓士であり、魔弓ペルセウスとヴォルドヴァルド作の破魔矢を持つ。
《大召喚士》リンリン。
超人。召喚士であるが魔法も強力無比。魔法無効の体を持つ。
竜人マメ。
神の末裔であり、素手で戦う超戦士。物理無効の巨体を持つ。
《聖騎士》オレスト・ディーン。
双剣士であり、2本の聖剣の本来の主人。次世代の超人と言われる。
ラディカ・クラナ。
ディヴィヤ・クラナ。
ナディヤ・クラナ。
元アスガルド最高の暗殺者ケルベロスであり、戦士。
《放浪者》コンスタンティン・グローマン。
全系統を扱う魔術師。超人を除くと世界最高峰の力を持ち、次世代超人候補の筆頭と言われる。
《奔放魔神》ゾフィー。
魔界7魔神の1人。その体は魔法無効であり、コンスタンティンを応援するが戦いに手は出せない。
《神妖精》ヒムニヤ。
超人。ツィ系統を極め、魔力は現世最強と言われる。魔法無効、物理無効。
《戦闘狂》ヴォルドヴァルド。
超人。槍の戦士であり、六芒槍術の始祖。魔法無効の体躯の上に物理無効の鎧を装着、そして物理無効を無効にする魔槍バンデッドの所有者。
―――
「じゃあ、リンリン。頼む」
上を見上げていたマッツが意を決して、リンリンに向き直る。
「うむ。では皆、地上に上がるぞ!」
リンリンの可愛くも勇ましい掛け声が縦穴に響く。
プシュ―――――――――ッッ!
地上に上がるまでの僅かな時間にリタがオレストに話しかける。
「オレスト」
「ん? なんだ」
「これ、ありがとうね」
そう言って両腰に下げた双剣、聖剣ベテルギウスとリゲルを指す。
「あ? ああ」
「この戦いが終わったら返そうと思っていたけれど……」
「ハッハッハ! 何だ、惜しくなったのか?」
「フフ……まさか。むしろ逆だわ。もし戦いの中で私が危なくなったら……」
「わかっている。みなまで言うな。俺もそこまで甘くはねえ。この戦いは最後の戦い。勝たなきゃ意味がねえからな」
オレストがそう言うと、ニコリと微笑むリタ。
「安心したわ。頼りにしてるわね」
「任せとけ」
そんなやり取りを皆、聞くともなしに聞きながら、ほんの1分程で地上に上がる一行。
『世界の眼』同様の大きな穴。
巣から這い出る蟻のようにゾロゾロとそこから飛び出て地表に降り立つ戦士達。
「見渡す限り……荒地ですね」
キョロキョロと辺りを見回しながらクラウスがそう呟くのにマッツが頷く。
「海が見えるかと思ったが……結構、内陸に出たらしいな。空は暗いし、やな感じがビンビンするぜ」
「魔力が不規則に渦巻いているのがわかるわ。気持ち悪い」
「そうだな、俺も感じる……あっちに城が見える。黒いな。あの野郎、城に住んでるのか? 取り敢えず進むぞ」
両手で自分を抱くリディアを促し、先に進む。
道すがらヒムニヤが口を開く。
「《滅導師》ヘルドゥーソについて少し皆に伝えておこう」
マッツがヒムニヤに振り返る。
「奴の操る『闇の波動』を利用した魔法は、忌々しい事に魔法無効のこの体にも効いてしまう。リンリンもヴォルドヴァルドもその点、注意しろ」
真剣な表情でヒムニヤに頷き返すリンリン。
「あと1つ、皆、少しは知っているかもしれんが、ヘルドゥーソは魔力無効でも物理無効でもない。だが……」
そこで1つ呼吸を置く。
「奴の体力と魔力は、このエリア、『魔力の暴風域』にいる限り『無限』だ。何か理由があるそうだが、わかっているのは最初からそうではなかったという事位だ。とにかく無策で削り合いをして勝てる相手では無い」
(そういえば……どこかで聞いたな。言ってたのはどこの誰だっけか……)
口には出さずにボ――ッと考えていたマッツ。だが、不意に胸元にぶら下げた笛を思い出す。
「ダメ元だが……呼んでおくか。こいつが来たら決定打だろう」
そしてこの場に居ない筈の最後の超人、《中立者》サイエンを呼ぶため、その笛を取り出し、吹いた。
だが予想通りサイエンは現れず、そのまま、色々と話しながら数十分歩く。
「皆、気を付けろ、来たぞ」
まずはヒムニヤが気付く。
みるみる彼らの前方10メートル辺りに現れる《滅導師》ヘルドゥーソ!!
「実体でもそんな風に出てくるんだな」
マッツがボソリと呟いたが、どうやら聞こえてはいなかったらしい。
「クックック。ゾロゾロとまあ……大勢で」
「お前、意外と背が高かったんだな。いつも顔しか出ないからわかんなかったぜ」
身長は2メートルを超えている。
顔はいつも見ていたものと同じ、瞼がなく剥き出しの目に白い馬蹄髭、そして全身を黒のローブで包み込んで、いかにも闇の魔術師然とした格好で登場する。
「城で踏ん反り返って待っていると思っていたが?」
「フ……戦いで城が壊れると難儀するのでな。それに広い方が戦いやすかろう」
「ヘルドゥーソ、大人しく降参しろ」
マッツが高らかに声を上げる。
「クク。降参というのは弱い者が強い者にする事ではないのかね」
「この戦力相手に勝てると思ってるのか」
「ハッハッハ……」
首を振るヘルドゥーソ。
無論、マッツもヘルドゥーソが素直に降参するなどとは思ってもいない。ある意味、戦闘開始を示す合図のようなものか。
「ハッッッ!」
「エイッッッ!」
ヒムニヤとクラウスの無詠唱魔法が同時に炸裂!
弾け飛ぶヘルドゥーソ、だが、一瞬で元に戻る。
ギョッとする一行だが、怯みはしない。
速攻で勝負を決めようとしているのか、早くも詠唱を始めるマッツ。
「そぉぉぉれ!」
ヘルドゥーソが右腕を下から上に、軽く振り上げる。
すると胴回り数メートル程はあろうかという大蛇が、ヘルドゥーソの腕から放たれたかのように、マッツ達を目掛けて牙を向き、襲い掛かってくる!
「うぅりゃああああ!! 火芒!」
だが発現すると同時に飛び出すヘンリック!
「『炎の槍』!!」
ジャッッ!
ドォォォォン!!
凄まじい早さで突いたヘンリックの魔槍レベッカから、更に巨大な炎の槍が発現、大蛇を炎上させ、一撃で貫く。
だが気にせずに今度は左腕を振るうヘルドゥーソ。
すると『悪魔の眼』が飛び出す!
今度はオレストが走り込む! そのオレストに狙いを定める悪魔の眼の目!
「オレスト! そいつのビームは注意しろ! カウンターで倒せ!!」
古竜の大森林で手こずったモンスター、その倒し方はマッツが熟知している。
マッツが叫ぶ通りにビームが放たれるや否や瞬時の踏み込みと数十の斬撃を食らわせて瞬殺する!
今度は両手を前に突き出すヘルドゥーソ。
だがマッツも黙ってはいない。早くもケリをつけるほどの巨大な魔力の膨らみを持って、最大級の剣技を発動する!
「ラ・ラ・メイデンッッ! 魔竜剣技!」
マッツの魔剣、シュタークスの周囲に現れる8つの光弾!
しかしそれに負けじと光りだすヘルドゥーソの両手の周囲、次の瞬間、直径数メートルはある巨大なビーム砲を発射!!
ドゥシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
「『魔皇』!!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!!
ヘルドゥーソのビームを完全に撃ち返し、更にそれをまともに食らったヘルドゥーソの体が弾け飛ぶ!!
「フン……まあ、魔皇は闇属性だから効かんだろうが……」
そのマッツの予想通り、数秒をおいて元通りになるヘルドゥーソ。
ドッガァァァァァァァンッッ!!
だが、元通りになった瞬間、マメによる脳天からの超強力な一撃!!
「グオッ!」
真っ二つに裂けて消えゆくヘルドゥーソ。
次の瞬間、マメの背後で体が復元される!
「『天罰』!!」
上に伸ばした手から放たれる稲妻!
「グッッ!」
電撃にやられ、一旦、前転でその場を回避する。
ドウッドウッドウッドウッ!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!
攻撃音を操れるペルセウスで、敢えて轟音を出して攻撃するアデリナ。
見事に全て当たるが、その傍から復元していくヘルドゥーソの体。
だが、本命はそれに紛れたリタの双剣攻撃!
バシュバシュバシュッッ!!
「ウグゥァァァァ!!」
同じように体は復活するものの、肩で息をするヘルドゥーソ。
「リタの攻撃は痛いみたいだな」
マッツとオレストが頷き合う。
「えぇい、忌々しい聖剣めッッ!」
少しイラつきながら左腕を横に払うと、宙に現れる無数の剣! 一斉にリタに襲いかかる!!
ガンガンガンガンガンガンッッ!!
ナディヤとラディカが全ての剣をはたき落とす!
同時にヘルドゥーソの背後に回ったディヴィヤが首を切り落とすッッ!!
バッシュゥゥゥ!!
「小賢しいのう」
切り落とされた《滅導師》の頭部から聞こえる声。
そして本体側、切り口の首の付け根部分から飛び出す3つ首のキメラ!!
グァォォォォォォォォォッッ!
今しがた首を刎ね、まだそこにいるディヴィヤに襲いかかる!!
ギリギリで突撃を躱すディヴィヤ、そして、
ドンッッ!!
マメがはたき落とし、一発で粉微塵に粉砕する!!
「『闇導流』」
その攻防の隙をついてあっという間に復元したヘルドゥーソの口からスペルが聞こえると、不意に辺りを闇が包む。
その場にいる全員が闇の流れを感じる。
そしてその流れは激しい濁流となり!
全員の体が闇に侵食される!
「「「「ぐぅあああああッッッ!!」」」」
体が痺れ、凄まじいダメージを食らい、暗闇の中で地面に突っ伏す一行。
「なんだ、どうした? まだこんなのは序の口だぞ?」
両手を広げ、ニヤリと口元を上げるヘルドゥーソ。
「クッソ……調子に乗るんじゃあ、ねぇぜ」
マッツの見上げる顔を楽し気に見下ろすヘルドゥーソ。
「そうそう。その意気だ。まだ戦いは始まったばかり。楽しんでいこうじゃ、ないか!」
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