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業者
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朝からうるさい喧騒が聞こえてきた。
ベッドの上で目を覚ますとシノがいない。
僕に挨拶もなく帰るなんて。そんな小さな事に傷つく。
顔を洗っていつものジーンズに着替えてから共有スペースに行くと、シノが佐々木さんや見知らぬ男性陣がそろって何か話をしていた。
「おはよう、ユウト。きのうはサンキューな」
シノがまだいた事は嬉しかったが、そのサンキューは泊めてあげた事なのか久しぶりのセックスに対する感謝なのか謎が深まる。
自分でコーヒーを淹れている時、背中から佐藤さんのはずんだ声がする。
「きのうのうちに篠宮君が業者を手配してくれていたんだ。役所で確認して持ち主からOKいただいたから」
「ちょ、ちょっと待って。なんの話ですか?」
「まず誰も住んでいない半壊しかけてる家を更地にしてそこに移住希望者さんの住むアパートを建てる計画。花井さんに言ってなかったっけ」
知らん。
なるほどシノが手配したのは解体屋と不動産関係者か。窓の外に重機が見える。
シノの隣に知らない女性がファイル片手に立っていた。
「じゃあ佐伯は例の件急いで」
眉毛上で揃えられた前髪、短い後ろ髪を無理やり結んだ黒いスーツ姿の地味な女性は軽く一例して部屋を後にした。
僕だけ置いてけぼりで、何やら心がむずむずする。
コーヒーカップ片手に説明を聞いていると、シノがそっと僕の薬指と小指を軽く握ってきた。
そんなわずかなスキンシップで心が静まる。
「時間あるなら一緒に見に行こう」
佐々木さんの視線に気がついて、僕は慌ててシノから離れた。
解体するというより荒々しくぶっ壊していく。
「こうしないと余計なものが見つかったりするから全部産廃業者に回すんだ」
すでに業者が到着していて、トラックに木造家屋であったであろうものをどんどん積み込んでいく。
「何が出てくるの?」
「謎の御札が100枚とか、土壁を剥がしたら人間の一部と思われるようなもの。袋に入っている謎の物体。古い倉なんかさ…」
「…了解。だいたい想像ついた」
リアルに想像してしまって気分が悪くなってしまった僕は、それを口実にシノの腕を組んだ。シノは僕のひたいに手を当てて熱を確認してから、頭を軽く撫でてくる。
その様子も佐々木がじっと見ていた。
更地にした所を、まずは建設作業員用のアパートから着工した。
並行して移住者募集もかけ始めた。まだイメージイラストしかないが町の役場にはぽつぽつ問い合わせがきている。
「最近ガラの悪いのがいっぱいだねえ。これからもよその人間が住むんやろ?大丈夫やろか」
地元の人間が不信感を抱くのも無理はない。全員がそうではないが、肉体労働者の扱いはどこでも悪い。
「この農水省の農村開発計画に協力したらね、お礼金がみなさんに配られるよ。呼べば呼ぶほどチャリンチャリンさ。悪くない話だろう?」
金にはがめつい連中の心理をついて、シノの口がなめらか未来図を話す。
「ま、仕方ないね」
権威と金に弱い連中がしぶしぶ頷く。
工事中は現地の食堂で食事したり、数少ない飲み屋で酒を飲み、借り上げた古いアパートが寮になっていて、家賃収入が増える。思わぬ収入増に、内心笑っているだろう。
「花井君」
シェアハウスでひとりになった時、佐々木が話しかけてきた。
「僕はいいんだけど、LGBTQに理解がない連中もいるから」
こいつ僕とシノの関係に気づいた。
おそらく理解がないのは花井本人だ。
その日の夜、僕はシノを帰さず自分から誘った。
ベッドの上で目を覚ますとシノがいない。
僕に挨拶もなく帰るなんて。そんな小さな事に傷つく。
顔を洗っていつものジーンズに着替えてから共有スペースに行くと、シノが佐々木さんや見知らぬ男性陣がそろって何か話をしていた。
「おはよう、ユウト。きのうはサンキューな」
シノがまだいた事は嬉しかったが、そのサンキューは泊めてあげた事なのか久しぶりのセックスに対する感謝なのか謎が深まる。
自分でコーヒーを淹れている時、背中から佐藤さんのはずんだ声がする。
「きのうのうちに篠宮君が業者を手配してくれていたんだ。役所で確認して持ち主からOKいただいたから」
「ちょ、ちょっと待って。なんの話ですか?」
「まず誰も住んでいない半壊しかけてる家を更地にしてそこに移住希望者さんの住むアパートを建てる計画。花井さんに言ってなかったっけ」
知らん。
なるほどシノが手配したのは解体屋と不動産関係者か。窓の外に重機が見える。
シノの隣に知らない女性がファイル片手に立っていた。
「じゃあ佐伯は例の件急いで」
眉毛上で揃えられた前髪、短い後ろ髪を無理やり結んだ黒いスーツ姿の地味な女性は軽く一例して部屋を後にした。
僕だけ置いてけぼりで、何やら心がむずむずする。
コーヒーカップ片手に説明を聞いていると、シノがそっと僕の薬指と小指を軽く握ってきた。
そんなわずかなスキンシップで心が静まる。
「時間あるなら一緒に見に行こう」
佐々木さんの視線に気がついて、僕は慌ててシノから離れた。
解体するというより荒々しくぶっ壊していく。
「こうしないと余計なものが見つかったりするから全部産廃業者に回すんだ」
すでに業者が到着していて、トラックに木造家屋であったであろうものをどんどん積み込んでいく。
「何が出てくるの?」
「謎の御札が100枚とか、土壁を剥がしたら人間の一部と思われるようなもの。袋に入っている謎の物体。古い倉なんかさ…」
「…了解。だいたい想像ついた」
リアルに想像してしまって気分が悪くなってしまった僕は、それを口実にシノの腕を組んだ。シノは僕のひたいに手を当てて熱を確認してから、頭を軽く撫でてくる。
その様子も佐々木がじっと見ていた。
更地にした所を、まずは建設作業員用のアパートから着工した。
並行して移住者募集もかけ始めた。まだイメージイラストしかないが町の役場にはぽつぽつ問い合わせがきている。
「最近ガラの悪いのがいっぱいだねえ。これからもよその人間が住むんやろ?大丈夫やろか」
地元の人間が不信感を抱くのも無理はない。全員がそうではないが、肉体労働者の扱いはどこでも悪い。
「この農水省の農村開発計画に協力したらね、お礼金がみなさんに配られるよ。呼べば呼ぶほどチャリンチャリンさ。悪くない話だろう?」
金にはがめつい連中の心理をついて、シノの口がなめらか未来図を話す。
「ま、仕方ないね」
権威と金に弱い連中がしぶしぶ頷く。
工事中は現地の食堂で食事したり、数少ない飲み屋で酒を飲み、借り上げた古いアパートが寮になっていて、家賃収入が増える。思わぬ収入増に、内心笑っているだろう。
「花井君」
シェアハウスでひとりになった時、佐々木が話しかけてきた。
「僕はいいんだけど、LGBTQに理解がない連中もいるから」
こいつ僕とシノの関係に気づいた。
おそらく理解がないのは花井本人だ。
その日の夜、僕はシノを帰さず自分から誘った。
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