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第3話 ジル・ドレ
狂気
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朝になると何事もなかったかのように城の1日が始まる。
「城を移動しませんか。もうすぐ死体を埋める場所がなくなります」
「そうか」
アメリーの進言にうなずいて領主さまは廊下から庭を見ていた。
僕は適当な木の枝を小刀で削って、杖を作っていた。
「エリック」
後ろをふりかえると、アメリーを引き連れた領主さまが立っていた。立ち上がろうろする僕を手で止める。
「何をしている」
「早く移動するとき転ぶことが多くなったので杖をつくってます」
「水くさい。言えば買ってやるのに」
「ありがとうございます」
「エリック、今から城を移動します。あなたは馬車で行くといいわ。荷物がまとまったら私に声をかけて」
「はい」
荷物といっても作りかけの杖に少ない服、聖書が一冊程度なので、かばんに入れて再び庭に出た。
夜中のうちに準備したのか多くの馬車にたくさんの荷物が詰め込まれている。
「エリック、早すぎるわ」
書類片手に最終確認をしていたアメリーが苦笑いしている。
「俺と相乗りすればいい。話し相手になってくれ」
先頭の馬車の扉が開いて領主さまが顔を出した。
山の悪路を馬車がガタガタ揺れながら進む。
領主さまは一族で多くの屋敷を所有している。それのどこかに引っ越すんだろう。
「いつも悪いな」
「え?」
「夜うるさいだろう?」
「……」
なんと答えていいかわからず、しばらく沈黙が続く。
「戦場にいないと…。血や汗の匂いがないと落ち着かない。もう病気だな」
「では私も殺しますか?」
「何言ってるんだ」
そんなことしないよ、そう言って領主さまが笑った。
一族の仲が悪い領主さまは人がいるのが煩わしいようで、使用人は最小限しかいない。
窓の外を見ながら馬車の揺れに耐えていると、ふ、と頬に指が添えられて、振り向くと領主さまと目が合った。
「いくつになった?」
「ずっと戦争にいっていたのでもう正確な年は忘れました」
「だが少年のようなかわいい顔をしている」
そう呟くと、領主さまの唇が僕の唇に重なった。
僕は領主さまの背中に手をまわして抱きしめた。
「抱いてくださいませんか」
「エリック…」
「移動の暇つぶしに。こんな事しかあなたに尽くすことができない」
朴訥な僕の誘いに、領主さまの目に光がやどる。
領主さまは僕の体を軽々と持ち上げて、自分の膝に乗せた。
こんな間近で顔を合わすことはなかったので、恥ずかしくて下をむいてしまう。
「顔が赤いな。さそったのはお前のほうなのに」
シャツの上から指で胸の突起をつままれると、ふう、と吐息が漏れた。
指はゆっくり下にすべり、僕の股間をまさぐる。
「ん…」
その動きに呼応するように自然と声が出てしまう。膨らんで欲望を主張しているそこを強く握られると、あまりの気持ちよさに気を失いそうになった。
「ああ…領主…さ…ま……」
武人のたくましい肩に腕を回して、僕は下から突き上げられるのを受け止めていた。
背中に領主さまの腕の熱を感じる。
この後あの少年たちのように殺されるのだろうか。
「あ…ん、…いい…ぁ、…ああ……」
悪路の振動が不規則に僕を貫く。領主さまの律動がそれを加速させた。
「壊れる…、領主…さ…ま……」
新しい城に到着するまで行為は続いた。
「城を移動しませんか。もうすぐ死体を埋める場所がなくなります」
「そうか」
アメリーの進言にうなずいて領主さまは廊下から庭を見ていた。
僕は適当な木の枝を小刀で削って、杖を作っていた。
「エリック」
後ろをふりかえると、アメリーを引き連れた領主さまが立っていた。立ち上がろうろする僕を手で止める。
「何をしている」
「早く移動するとき転ぶことが多くなったので杖をつくってます」
「水くさい。言えば買ってやるのに」
「ありがとうございます」
「エリック、今から城を移動します。あなたは馬車で行くといいわ。荷物がまとまったら私に声をかけて」
「はい」
荷物といっても作りかけの杖に少ない服、聖書が一冊程度なので、かばんに入れて再び庭に出た。
夜中のうちに準備したのか多くの馬車にたくさんの荷物が詰め込まれている。
「エリック、早すぎるわ」
書類片手に最終確認をしていたアメリーが苦笑いしている。
「俺と相乗りすればいい。話し相手になってくれ」
先頭の馬車の扉が開いて領主さまが顔を出した。
山の悪路を馬車がガタガタ揺れながら進む。
領主さまは一族で多くの屋敷を所有している。それのどこかに引っ越すんだろう。
「いつも悪いな」
「え?」
「夜うるさいだろう?」
「……」
なんと答えていいかわからず、しばらく沈黙が続く。
「戦場にいないと…。血や汗の匂いがないと落ち着かない。もう病気だな」
「では私も殺しますか?」
「何言ってるんだ」
そんなことしないよ、そう言って領主さまが笑った。
一族の仲が悪い領主さまは人がいるのが煩わしいようで、使用人は最小限しかいない。
窓の外を見ながら馬車の揺れに耐えていると、ふ、と頬に指が添えられて、振り向くと領主さまと目が合った。
「いくつになった?」
「ずっと戦争にいっていたのでもう正確な年は忘れました」
「だが少年のようなかわいい顔をしている」
そう呟くと、領主さまの唇が僕の唇に重なった。
僕は領主さまの背中に手をまわして抱きしめた。
「抱いてくださいませんか」
「エリック…」
「移動の暇つぶしに。こんな事しかあなたに尽くすことができない」
朴訥な僕の誘いに、領主さまの目に光がやどる。
領主さまは僕の体を軽々と持ち上げて、自分の膝に乗せた。
こんな間近で顔を合わすことはなかったので、恥ずかしくて下をむいてしまう。
「顔が赤いな。さそったのはお前のほうなのに」
シャツの上から指で胸の突起をつままれると、ふう、と吐息が漏れた。
指はゆっくり下にすべり、僕の股間をまさぐる。
「ん…」
その動きに呼応するように自然と声が出てしまう。膨らんで欲望を主張しているそこを強く握られると、あまりの気持ちよさに気を失いそうになった。
「ああ…領主…さ…ま……」
武人のたくましい肩に腕を回して、僕は下から突き上げられるのを受け止めていた。
背中に領主さまの腕の熱を感じる。
この後あの少年たちのように殺されるのだろうか。
「あ…ん、…いい…ぁ、…ああ……」
悪路の振動が不規則に僕を貫く。領主さまの律動がそれを加速させた。
「壊れる…、領主…さ…ま……」
新しい城に到着するまで行為は続いた。
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