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第5話 NTR
NTR
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異業種懇談会なんて大層な名前つけてるけど、ただ飲みたいだけだろう。男も女も着飾ってコンパの延長にしか思えない。
誰が始めたのかなんて知らないけど、酒飲んだって人は心を隠せるよ。
全員仕事帰りなので男はスーツが多い。女はどこかで着替えたな。そんな露出して仕事に来ないだろう。
それより僕が驚いたのは。
彼がかわいい青年を連れてこの場にいることだった。
始まりはとてもロマンチックに、でも終わりは空気が抜けた風船のようにしぼむのが恋愛。
既読がつかなくなって、電話も出なくなり、自然消滅を狙う一番根性悪いやり方。なまじモテるから相手には困らないんだろう。
立食式だったので僕はグラスにビールを注いで近づいた。
「やあ、おひさ。元気してた?」
彼の目から視線を離さず僕はビールを一口飲んだ。
「はじめまして」
連れている青年に僕は自分の名刺を渡す。おどおどしながら若い青年も名刺を取り出して交換した。
近くのテーブルに伏せてあるグラスをひとつ取ってビールを注ぐ。
「飲める?よかったら乾杯」
「あ…いただきます…」
僕と青年だけで乾杯する。
「おい、こいつ飲めないからすすめんな」
まるで喧嘩の仲裁に入るみたいに、彼は僕を思い切り押してきた。
後ろのテーブルに倒れそうになって、僕は片手で勢いを止めた。その時ビール瓶に肘が当たってスーツにこぼれる。
「大丈夫ですか!?」
青年はぐるりと見回してボーイに手をあげて合図している。その間も彼はぼうっと突っ立ったまま動かなかった。
「いいやもう。トイレ行って適当に洗う」
誰に言うわけでもなく呟いて、僕は濡れたスーツのままトイレに向かった。
今までもそうだった。面倒なことには関わらない。気が回らない。
まわりがちやほやするから、他人に気を使えない。大きな坊やの完成だ。
まあ、僕が嫌われているだけかもしれないけど。つい最近まで僕を抱いてたくせに。
「すみません」
僕が濡れた部分を適当に水で洗っていると、さっきの青年がタオルを持って走ってきた。
「とりあえずこれ使ってください」
「初対面なのに親切だね。あいつとは大違いだ」
「先輩のことですか?」
「そう。興味なくした人間のことはモノにしか見えてないんだろうな」
「ああ、先輩そんな所ありますね」
「でも好きなんだろ?」
僕の核心をついた言葉に、青年は顔を真っ赤にした。
「あの…その…」
「誰にも言わないよ。僕も数週間前まで彼と寝てたんだから」
「…え?」
驚きと戸惑いの表情で僕を見てくる。
「君もあいつと別れたら悪口しか出てこないぜ。僕が今そういうメンタル」
「先輩は自分が絶対なんです。プライド高いし、そりゃ仕事は出来るしモテるし人生勝ち組かもしれないけど、世の中はそれだけじゃない」
「おお、言うねえ」
僕たちは会場に戻って二人でべろべろになるまで飲んで、彼が他の人間と話している隙を狙って外に出た。
「じゃあ気をつけてな。おやすみ」
僕がタクシーを拾おうと車道にぐっと上半身を突き出すと、青年が抱きついてきた。
「危ないですよお。酔ってバランス崩したら車にひかれちゃいますよぉ。あははは」
そのまま強引に腕を引かれてホテルまで連行された。
僕は何も言わずに、部屋を選ぶパネルを眺めている青年にまかせていた。
誰が始めたのかなんて知らないけど、酒飲んだって人は心を隠せるよ。
全員仕事帰りなので男はスーツが多い。女はどこかで着替えたな。そんな露出して仕事に来ないだろう。
それより僕が驚いたのは。
彼がかわいい青年を連れてこの場にいることだった。
始まりはとてもロマンチックに、でも終わりは空気が抜けた風船のようにしぼむのが恋愛。
既読がつかなくなって、電話も出なくなり、自然消滅を狙う一番根性悪いやり方。なまじモテるから相手には困らないんだろう。
立食式だったので僕はグラスにビールを注いで近づいた。
「やあ、おひさ。元気してた?」
彼の目から視線を離さず僕はビールを一口飲んだ。
「はじめまして」
連れている青年に僕は自分の名刺を渡す。おどおどしながら若い青年も名刺を取り出して交換した。
近くのテーブルに伏せてあるグラスをひとつ取ってビールを注ぐ。
「飲める?よかったら乾杯」
「あ…いただきます…」
僕と青年だけで乾杯する。
「おい、こいつ飲めないからすすめんな」
まるで喧嘩の仲裁に入るみたいに、彼は僕を思い切り押してきた。
後ろのテーブルに倒れそうになって、僕は片手で勢いを止めた。その時ビール瓶に肘が当たってスーツにこぼれる。
「大丈夫ですか!?」
青年はぐるりと見回してボーイに手をあげて合図している。その間も彼はぼうっと突っ立ったまま動かなかった。
「いいやもう。トイレ行って適当に洗う」
誰に言うわけでもなく呟いて、僕は濡れたスーツのままトイレに向かった。
今までもそうだった。面倒なことには関わらない。気が回らない。
まわりがちやほやするから、他人に気を使えない。大きな坊やの完成だ。
まあ、僕が嫌われているだけかもしれないけど。つい最近まで僕を抱いてたくせに。
「すみません」
僕が濡れた部分を適当に水で洗っていると、さっきの青年がタオルを持って走ってきた。
「とりあえずこれ使ってください」
「初対面なのに親切だね。あいつとは大違いだ」
「先輩のことですか?」
「そう。興味なくした人間のことはモノにしか見えてないんだろうな」
「ああ、先輩そんな所ありますね」
「でも好きなんだろ?」
僕の核心をついた言葉に、青年は顔を真っ赤にした。
「あの…その…」
「誰にも言わないよ。僕も数週間前まで彼と寝てたんだから」
「…え?」
驚きと戸惑いの表情で僕を見てくる。
「君もあいつと別れたら悪口しか出てこないぜ。僕が今そういうメンタル」
「先輩は自分が絶対なんです。プライド高いし、そりゃ仕事は出来るしモテるし人生勝ち組かもしれないけど、世の中はそれだけじゃない」
「おお、言うねえ」
僕たちは会場に戻って二人でべろべろになるまで飲んで、彼が他の人間と話している隙を狙って外に出た。
「じゃあ気をつけてな。おやすみ」
僕がタクシーを拾おうと車道にぐっと上半身を突き出すと、青年が抱きついてきた。
「危ないですよお。酔ってバランス崩したら車にひかれちゃいますよぉ。あははは」
そのまま強引に腕を引かれてホテルまで連行された。
僕は何も言わずに、部屋を選ぶパネルを眺めている青年にまかせていた。
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