【R18】婚約破棄されたおかげで、幸せな結婚ができました

ほづみ

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08.本当にいいの?

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 ジョエルと結ばれた翌日、サラは王妃に招かれて久しぶりに二人でお茶を飲んだ。
 ちょっと気まずくはあったが、断るわけにもいかないので招きに応じた。
 サラの左手の指輪に目を止め、王妃は「あら」と驚いてみせた。

「本当にいいの? あの子は重いわよ?」

 それは知っている。
 何しろ昨夜、のしかかられた。

「はい」

 笑って頷くサラに、「あなたは変わったわね」と王妃は微笑んだ。

「昔は頼りない感じだったけれど、強くなったわ。いい顔をしている」

 お茶の席で聞いたのは、この五年のジョエルの様子だった。

 ジョエルはサラとの婚約破棄後、持ち込まれる見合い話をすべて断っていた。それどころか、日に日に憔悴して女性を避ける様子を見せ始めた。
 それまで人当たりがよく穏やかな性格だったのに、婚約破棄後は人が変わったように物事に関心を抱かなくなり、ただひたすら公務をこなすだけの人形のようになってしまった。
 原因は婚約破棄にあるのは間違いないが、いずれ時が解決すると思っていた。だが解決するどころか、ジョエルの状態は悪化の一途をたどっていった。

「親として力になりたいけれど、あの子自身が助けを拒絶するから何もできなかったの。誰よりも大切に思っているのに、私では助けてあげられない。こんなに自分の無力さを呪ったことはないわ」

 同じことをジョエルも言っていた。
 話を聞きながら、王妃様も長い夜の中にいたのかもしれない、とふと思った。

「修復を担当するのがあなただとわかった時の、ジョエルの驚きようといったら」

 王妃がその時のことを思い出したのか、ふふ、と笑う。

「あの子をよろしく頼むわね、サラ」
「はい」

 もう一度、力強く頷く。

 そしてふと思う。
 ここしばらく自分の絵を描いていない。
 今ならどんな絵が描けるだろう?
 どんな絵を描きたい?

 ――美しい夜明けの空を描きたい。

 それともうひとつ。
 家族の肖像画だ。
 ジョエルと自分と子どもたちの絵を描いてみたい。
 その時は……

 ――自分の絵を盛ろう。

 サラの地味な見た目自体は変わっていない。
 だから、ジョエルの隣にいてもくすまないように。まつ毛とか胸元とか。

 ――自分で描く絵の中でくらい、それくらいはやってもいいと思うのよね。
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みんなの感想(1件)

HIRO
2024.07.23 HIRO

07 呼吸が洗い→呼吸が荒いでは?(承認不要です)

解除

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