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夏の夜道
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2人で歩き出す。22時近くなので当然暗い。店の前の川沿いの歩道は細くて、自然と身体が近くなる。チャンス。
「手、繋いでいい?」
「え! 何でですか?」
吉岡君は立ち止まった。
「占いで、今日はバイト先の2つ年下の経済学部生と手を繋げばいい事があるって言ってたから」
「すごくピンポイントなアドバイスですね……。でも誰かに見られたら面倒ですよ」
「暗いから大丈夫でしょ」
問答無用で吉岡君の手を取り歩き出す。
「今日の事、気にしなくていいからね」
「今日、何かありましたっけ?」
何を寝ぼけているのだろう。
「副店長にいろいろ言われてたでしょ」
「あぁ、それですか。クレジットカードを切り間違えたんです」
なるほど。クレジットの操作ミスの修正は面倒で時間がかかるらしい。今日は遅番の社員が1人だったから副店長は更にテンパっていたのだろう。私も一度やった事があるけれど、店長に「次からは気をつけてね」と言われただけだった。やっぱり吉岡君は運が悪かったのだ。
「副店長はソフトバンクホークスの負けた翌日は超機嫌悪いから、要注意ね。そのうちぱっと見で機嫌がわかるようになるけど、初めは勝敗をマメにチェックした方が良いかもね」
「白石さんは逆に機嫌いいんですか?」
「どういう意味⁈」
「今日は優しいです」
「吉岡君以外には常に優しいよ!」
吉岡君は笑った。
彼の手のガサガサと乾いた感触を堪能しながら歩いて、やがてバス停に着いた。吉岡君の目指す電停はここから更に橋を渡らなければならない。
「じゃあまたね」
繋いでいた手を離す。彼の手が名残惜しい。
「バスが来るまでここにいましょうか」
「いいの⁈」
「はい。女性一人では危ないですから」
吉岡君のクセに意外と紳士だ。ベンチも何もないバス停だから2人で並んで立つ。
「ありがとう。じゃあまた手を貸して」
吉岡君は黙って右手を差し出した。調子に乗って頬に手を擦り付けているとバスが来たので、「お疲れ様」と言って別れた。
やっぱり吉岡君の手は私の頬にフィットして、心が落ち着くのだった。彼はされるがままだったので、嫌ではなかったと思う。
大収穫の日だった。
「手、繋いでいい?」
「え! 何でですか?」
吉岡君は立ち止まった。
「占いで、今日はバイト先の2つ年下の経済学部生と手を繋げばいい事があるって言ってたから」
「すごくピンポイントなアドバイスですね……。でも誰かに見られたら面倒ですよ」
「暗いから大丈夫でしょ」
問答無用で吉岡君の手を取り歩き出す。
「今日の事、気にしなくていいからね」
「今日、何かありましたっけ?」
何を寝ぼけているのだろう。
「副店長にいろいろ言われてたでしょ」
「あぁ、それですか。クレジットカードを切り間違えたんです」
なるほど。クレジットの操作ミスの修正は面倒で時間がかかるらしい。今日は遅番の社員が1人だったから副店長は更にテンパっていたのだろう。私も一度やった事があるけれど、店長に「次からは気をつけてね」と言われただけだった。やっぱり吉岡君は運が悪かったのだ。
「副店長はソフトバンクホークスの負けた翌日は超機嫌悪いから、要注意ね。そのうちぱっと見で機嫌がわかるようになるけど、初めは勝敗をマメにチェックした方が良いかもね」
「白石さんは逆に機嫌いいんですか?」
「どういう意味⁈」
「今日は優しいです」
「吉岡君以外には常に優しいよ!」
吉岡君は笑った。
彼の手のガサガサと乾いた感触を堪能しながら歩いて、やがてバス停に着いた。吉岡君の目指す電停はここから更に橋を渡らなければならない。
「じゃあまたね」
繋いでいた手を離す。彼の手が名残惜しい。
「バスが来るまでここにいましょうか」
「いいの⁈」
「はい。女性一人では危ないですから」
吉岡君のクセに意外と紳士だ。ベンチも何もないバス停だから2人で並んで立つ。
「ありがとう。じゃあまた手を貸して」
吉岡君は黙って右手を差し出した。調子に乗って頬に手を擦り付けているとバスが来たので、「お疲れ様」と言って別れた。
やっぱり吉岡君の手は私の頬にフィットして、心が落ち着くのだった。彼はされるがままだったので、嫌ではなかったと思う。
大収穫の日だった。
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