夏の魔物

たんぽぽ。

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夏休み

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 でも今は二日酔いでダルいし、とりあえず青き清浄の地計画は置いておいて、吉岡君の指導をする事にした。布団の中では男性に主導権を握って欲しいのだ。都合良く日曜なので大学はないし、バイトは午後からだ。

 吉岡君がシャワーを浴びた後、早速開始した。
「まずは服を脱がせる! パパッと手際良く! そんなノタノタやってたらムードもへったくれも無いでしょ! もういい、自分でやる! 後でボタンを外す練習しといて。3分間を10セットね。今度テストするからね。将来、絶対役にたつから。無駄にならない努力なんか無いのよ。あ、逆か。ホック外すのも特訓しといてよね! なんならブラジャー貸してあげようか? ほら、出血大サービスであんたの服、脱がせてやるから!

 さぁどうするどうする? 次はどうする⁈ あいたたたた‼︎ 何すんのよ! え? 前にネット見たら書いてあったって? 違うだろ! ちーがーうーだーろーー‼︎ このハゲーーッ‼︎ 力任せじゃ駄目じゃない。でもその探究心は褒めてつかわす‼︎ 分かる? こう、触れるか触れないかのトコで……そう……やれば出来るじゃない……」

 こんな調子で飴5パーセント鞭95パーセントのスパルタ指導を行っていたら、吉岡君は「お……鬼軍曹……」と呻いて果てた。



 午後、吉岡君と時間をずらして出勤した。バッグヤードのパソコンに向かっていたツーブロック佐々木に挨拶すると、またセクハラを言われた。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした」
「お! 昨日と同じ服! さてはワンナイトラブだなぁ~~?」

 あんまりムカついたので「はい! お陰様でとても濃厚で有意義な時間を過ごさせて頂きました!」と言ったら変な顔をして黙った。ザマァ見ろ。どうせあと少しでいなくなるしどうでもいい。

 休憩中に除菌スプレーと台所用洗剤とスポンジとシャンプーリンスとカビキラーとプラスチックゴミ専用ゴミ袋と念の為にゴキジェットを購入して、一旦は実家に帰らなけらばいけないのでロッカーに入れておいた。



 それからは吉岡君の家に入り浸った。

 私は三姉妹の真ん中だ。「放って置かれがち」という中間子の特権をフルに活用して、実家へはたまに荷物を取りに行く以外帰らなくなった。親には「バイトで仲良くなった子の所に世話になっている」と説明しておいた。嘘ではないし罪悪感はない。

 親とのやり取りは「迷惑じゃないの?」「食事は私が作ってるし大丈夫」という一往復で済んだ。妹だけは「男だな」とニヤついていたけれど無視した。

 手取り足取りナニ取り指導している内に吉岡君は布団の中において着実な進化を遂げ、初日から1週間経った頃には吐息で指示が通るくらいまでになった。

 食事作りに部屋の掃除、大学の講義や試験、バイトと私はなかなか忙しい。そしてその合間に吉岡君と抱き合った。足りない、まだ足りないとひたすら抱き合った。

 私の身体の火照ほてりはなかなか解消されなかったけれど、吉岡君と一緒にいる内にどうでも良くなっていた。

 吉岡君の部屋の荒廃っぷりは日々改善し、遂に青き清浄の地計画が達成された時、吉岡君は合鍵をくれた。

 別荘が出来た! わーい! 感激して彼の首に噛み付いたら、「頼むから首へのチュパカブラ攻撃はやめて下さい」と懇願された。
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