追放、転生、完璧王子は反逆者!!!

ぱふもふ

文字の大きさ
56 / 57
第三章反逆王子

獣王国対ネリーキア王国4

しおりを挟む
エルキュール門の陥落とネリーキア軍の敗走は近くの城で休息を取っていたラントのもとにも届けられた。ブチギレたのは言うまでもないだろう。

「はぁぁ?!何をやっておるのだ?!」

バン!

ドゴン!

ドンガラガッシャーン!

台パンは当然のこと、怒りに任せて机をひっくり返して椅子を投げ飛ばした。

「役立たずドモめ!我が国きっての騎士団、宿将、大軍を擁しながら敵の夜襲に怖気づいて敗走など言語道断!末代まで語られる恥だ!」

報告に来ていた取り巻きの貴族の子弟は構わず続けて話す。ラントがこんな事をすることに慣れているからである。そしてとにかく時間がない。

「殿下!お怒りはごもっともですが、お急ぎください!この城はノース辺境伯の屋敷とエルキュール門を繋ぐ中継に過ぎません。壁も低く、大軍の収容に向きませぬ。こうなれば屋敷がある都市まで引くしかないでしょう。」

っとそこで少しラントが正気に戻った。やっと移動か…と誰もが思ったが、ラントは斜め上をゆく。

「お…伯父上は無事なのか?」

彼の口からは現宰相ネルキンの息子にして現ザラーフ侯爵家当主、その上ラントから見れば伯父にあたるライアンを心配する声が出た。

「伯父上が危機に瀕しているのに甥たる者が真っ先に逃げるなど騎士の道に於いてできぬ!」

覚悟の籠もった目でラントはそう告げる。

良き甥と言うべきか、危機感がないと言うべきか…。

取り巻きたちは言葉を失った。

彼らは忘れていた……ラントは策士ぶってはいるものの、それと同時に英雄のような王になりたいと思っている、軸ブレブレのただのワガママ小僧ということを。

「大丈夫です!侯爵様は後方にいらした上、そもそも我らに使者を作ってくださったのは侯爵様御自身です。よもや討たれることはありますまい。」

「臣下は主君を守る者です!ラント様が退かぬのに侯爵様が退く事ができましょうか?!」

(((はよ!しろや!)))

心のなかで毒づきながら取り巻きたちはラントを必死で説得する。

「わ、わかった…伯父上のためにも今は撤退だな…。おのれ…エラクレスめ…所詮、ケダモノ頼みとは情けない奴だ…エルキュール門は俺が居なかったために落とされたが、次はないぞ!バラバラにしてやるぅぅぅあああ!!!」

呪詛を残してラントはようやく撤退した。

<エルキュール関>

陥落した翌朝のエルキュール関では早速エラクレスが関所に入って皆に労いの言葉をかけていた。

「狼王エカチェリーナ、並びにその旗下で勇敢に戦った戦士たちよ。この度エルキュール関の攻略、見事である。」

「ありがたき御言葉!獣王国の繁栄のために!」

優雅に御輿に座るエラクレスの言葉に最前列で跪くエカが応える。彼女の後ろにはグスタフやパウルなどの重臣たちも控えており、彼らも頭を深々と下げている。

グスタフの作戦はこういうものであった。

まず、全力で攻め立てて敵を疲れさせるのと同時に正確な関所の高さを確認し、登るための足場を。足場とは様々な攻城兵器の残骸のことだ。ひと通りの戦いが終わった後、ネリーキア軍はそれらを片付けようとしたが、時間が足りず、暗くなったため全てを片付けることはできなかった。

それで十分だった。

最初に白狼族が関所に近づいた。彼らなら光を向けられても雪に紛れる事ができるからだ。

そこで彼らは残骸を積み重ねたり、使えそうな梯子を掛けたりして一定の高さまで積上げた。その高さとは狼人がジャンプと道具を使えば届く高さである。ここで昼間の激戦の最中に正確な壁の高さを確かめたことが活きる。

次に時を見計らって黒狼族が闇に紛れて壁を這い上がる。優れた身体能力からなる跳躍と昼間の激戦で傷ついた箇所に道具を引っ掛けて登る。

それでようやく奇襲。

(正直結構粗がある作戦だと思ったけど、歴戦のグスタフが言うならこれが正しいと思ったから許可を出した。そしたら大成功。やっぱ、年の功ってスゲェ。)

改めて感心していると少し後方に控えているパウルに目が止まる。

「パウル・ヴァーサよ。狼王の側で勇壮に戦ったようだな。獣人の武名が大いに轟いた。褒めて遣わす。」

「もったいなき御言葉…。」

少々緊張しているのか声が上擦っていた。

その後も大きな武功を挙げた者たちに声を掛けて賛辞を贈る。

「それでは皆に次の進軍先を示そう。」

エラクレスが言うのに合わせてジークリンデとルイナが地図を広げる。

それに合わせて跪いていた者たちを立ち上がり地図を囲むように立った。

「この度の大勝利でいくさの流れは完全に我らが得た。」

諸将は地図の上を浮遊するエラクレスの説明をウンウンと頷きながら聞く。

「よって、勢いそのままに敵が逃げ込んでいるノース館を攻略する!」

「「「オオッ!!!」」」

諸将も当然同じ事を考えていたから特に驚くことなく気合いの声を上げる。

「先鋒は獅子王女メリア率いる獅子王国軍とする!見事ノース館までの道を開いてみせよ!」

「はい!獣神に誓って使命を全うします!」

「我らはこの関に配備されていた兵糧を全て奪取しており、敵が籠城するとは考え難い。撤退か決戦か慎重かつ素早く見極める必要がある、用心せよ。」

メリアは何度も戦陣を立った経験があるらしいが、大将を務めたことは無いそうなので念を押しとく。

「この関には負傷兵を置くこととする!後続の兵に道でも教えてやれ!」

「「「ハハッ!!!」」」

この決定には最初に先鋒を務めた狼人から不満が出ていたが、そんな奴らにエラクレスは…

力を使い果たすな。』

…と言って黙らせた。

ネリーキア王国の全土を平らげようとしている彼からすると北の辺境での戦いにそんなにムキになるなよ、と言ったところである。既に狼人は連戦に次ぐ連戦に加えて、怒涛の追撃をブチかましたせいで、士気は旺盛に見えも所詮空元気に過ぎないのはよく知っている。

メリアは敵に体勢を整える隙を与えまいと兵士に昼食を取らせてすぐに出陣した。

<???>

(今だわ…)

時は少し遡り、夜襲によりエルキュール関が陥落した夜、少女は屋敷から未だ雪の積もる北の地に踏み出した。否、窓から出たので這い出たが正しいか?

(う、奪われてなるもんですか!我ら先祖代々の土地を…あのお方に捧げる地を!)

「おい!お嬢様がいないぞ!?」

「ちょ…今はもう女伯様だろ。」

「そんなのはあとだ!あとあと!…もっとしっかり探せ!」

屋敷の中が騒がしくなり、優しい少女は一瞬ビクッとして、自分が居なくなったことで騒ぎを起こしてしまったことを申し訳なく思うが、すぐに立ち直る。

(先祖代々我が家から受けた恩を忘れ私欲を貪るあなたたちはかんしんよ!かんしん!ムシムシ!)

そう頬を膨らませた彼女はエルキュール関へと続く道へ進む。

(一人で外を歩くなんて…これまで一度もなかったから、夜の闇が怖い…だけど、あの御方から頂いたこのを触ると勇気が出るわ。)

少女の運命や…いかに

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

いつも読んでくださりありがとうございます。更新が途絶えている間にお気に入り数とハートの数がめっちゃ増えてて驚きました。今後ともよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~

ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。 彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...