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第一章 クリスタル領で再会

27、心、開いて、通わせて1

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「ここからは、別行動にしないか?」

 リアムは食事を済ませ『バルク』を出たところでオリビアとその従者たちに提案した。
 
 デートの誘いである。

 数日中に王都へも戻る前に、もっとオリビアと距離を縮めたいと思っての発言だ。特に、この護衛とは引き離したいという思いも強かった。

「別行動……ですか?」

「ああ。これでも騎士団に所属しているし、魔力も戻っているから護衛の心配はいらない。オリビア嬢、もう少しこの街を案内してくれないか? ふたりきりで」

「ふ、ふたりきり? 私とリアム様で?」

 突然の申し出に、オリビアがリタとジョージに視線を送っていた。が、ジョージはそっぽを向きリタは微笑んで頷き、リアムの申し出に賛成しているようだった。

「それでは、私は『ラ・パセス』に行きますので、後ほど。アレキサンドライト公、オリビア様をよろしくお願いいたします」

 リタが深々と頭を下げた後、執事カフェ『ラ・パセス』へと向かい歩いていった。

「じゃあ、俺も適当に時間潰しておきます。はーい! 今、暇な子いるかなー? デートしよ!」

 ジョージが手を上げ、広場に向かって声をかけると、道ゆく女性たちが一気に彼を囲んだ。これにはリアムも一瞬自分の過去が蘇り圧倒された。

「ジョージ様! 私と遊びましょう」

「ジョージ! うちの店でイイ事しましょ」

「ジョージ! 私の部屋に来ない?」

「「ジョージ!」」

 あっという間に、ジョージの姿は見えなくなった。

 オリビアいわく、辺境の地にあるクリスタル領では、例えば伯爵家嫡男のエリオットのような明らかに住む世界の違う身分の高い人間より、没落貴族の三男で親しみのあるジョージのような男が人気とのことだった。

 見た目もよく、女性たちにマメなのも人気の秘訣だ。「領内のフリーの子はみんな俺の恋人」と豪語しているらしい。

「さあ、私たちも行こうか」

「は、はい……」

 リアムはオリビアと並んで、リタやジョージが消えていった方角とは反対の方向に歩き始めた。
 ふたりきりになったことを改めて意識し緊張であまり言葉が出てこないが、なんとか彼女と打ち解けなければと街並みに視線を送る。
 そうして雑貨屋を二軒ほど見て回ったところで、リアムはある屋台を見つけ足を止めた。

「オリビア嬢、あれは飲みもの……なのか? 何かが沈んでいるようだが……」

>>続く
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