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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

37、狡猾な王子と無骨な騎士1

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 大変なことが起きた自覚はあった。
 なぜ、自分は飲み物を取りに行ってしまったのか。
 相手が誰とも確認せず会話してしまったのか。
 オリビアが後悔した時にはもう遅かった。

 爽やかかつ輝く笑顔を自分に向ける王子様を前に、オリビアは中途半端に取り繕った笑顔を貼りつけて小さな抵抗をしてみせる。

「え! ええと、田舎出身でダンスの心得もありませんので、ご迷惑をお掛けしてしまいますから……」

「僕がリードするから大丈夫。それとも僕とは踊りたくないってことかな?」

「いいえ! そのようなことは……」

「じゃあ決まりだね」

 オリビアは観念し、自分の片手を差し出されたレオンの手に重ねる。
 彼に連れられ、磨き上げられた乳白色の床の上を進んで広間の中央で立ち止まる。
 会場中の視線が追いかけてくる。彼らがダンスの始まる瞬間を息を呑んで待っているのは痛いほどに感じていた。

「あれ、オリビア嬢。ダンス上手だね」

「あ、ありがとうございます。殿下のリードがお上手だからですわ」

「レオンね」

「失礼いたしました、レオン殿下」

 煌びやかな照明の下、二人のダンスは王族だからということだけではなく、両者のその美しさにも注目が集まっていた。

 オリビアは自分のへの視線はレオンのオマケだと思っていた。お互いに金髪と銀髪を輝かせ軽やかにステップを踏む。
 羨望せんぼうの眼差しを向ける者も少なくなかった。だがオリビアはやっぱり王族は一味違う、とどこか他人事のようだった。

 オリビアの動きに合わせて、リアムに贈られた髪飾りが揺れる。家名に合わせクリスタルでできている髪飾りは場内の照明を反射した。それはレオンの胸元に輝くダイヤモンドの飾りに負けじとも劣らない輝きを放っている。

 ダンスが終わると、大きな拍手が会場中に響き渡った。

「付き合ってくれてありがとう。オリビア嬢」

「いえ、こちらこそ、お誘いいただきありがとうございます」

「社交辞令感丸出しだね。でも本当に助かったよ。こういう席で誰とも踊らないわけにはいかないんだ。けれど僕はまだ婚約もしていないし、立場的に誰とでも踊れるわけじゃないから」

 レオンが苦笑いをして首を傾げる。オリビアは彼に丁寧に礼をした。

「そうでしたか……。お役に立てて良かったです」

 王族で婚約者のいない状況であれば、いろいろ面倒事も多いのだろう。田舎育ちのオリビアにも容易に推測できた。

「踊ってくれたついでにもう少し頼まれてくれないかな? 少し休むふりで一緒に二階席で会場を眺めるだけなんだけど。君もここに踊りにきたわけじゃないだろう?」

「……はい。喜んでお付き合いいたします」

>>続く
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